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Linux Foundation Japan 中村雄一氏が立ち上げ背景や活動を紹介、KubeDay Japan 2024レポート

クラウドネイティブの波に乗り遅れた日本、力を集結し状況打破目指すCNCJのこれから

2024年09月05日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 The Linux Foundation傘下のCNCF(Cloud Native Computing Foundation)が主催するクラウドエンジニア向けカンファレンス「KubeDay Japan 2024」が、2024年8月27日、東京・お台場で開催された。

 Linux Foundation Japanのエバンジェリストを務める中村雄一氏は、「日本のクラウドネイティブの夜明け(Rising Sun of Cloud Native in Japan)」と題したキーノートで、昨年12月にCNCFの日本支部である「Cloud Native Community Japan(CNCJ)」を立ち上げるに至った経緯を紹介し、来場したエンジニアにも積極的な参加を呼びかけた。

Linux Foundation Japan エバンジェリストの中村雄一氏(日立製作所 チーフOSSストラテジスト)

「Cloud Native Community Japan(CNCJ)」のWebサイト(https://community.cncf.io/cloud-native-community-japan/

クラウドネイティブの波に乗り遅れた日本、その状況を変えるCNCJ

 中村氏はまず、クラウドネイティブ技術を取り巻く「1年前の」日本の状況を振り返った。

 他国と比べて日本はクラウドネイティブの波に乗り遅れていた。CNCFコミュニティは存在せず、CNCFアンバサダーも1名のみ。KubernetesのCNCF認定エンジニア数も、日本の経済規模から考えると少なかった(インドの8分の1、中国の5分の1、韓国の2分の1)。CNCFのエコシステムを活用している日本企業は少数であり、日本企業からのコントリビューションも大きなものではなかった。

 「日本では、エンジニアが主導する(クラウドネイティブ関連の)ミートアップやイベントは多数開催されていたが、CNCFエコシステムとは関係しておらず、ばらばらの動きとなっていた。また、日本にはすばらしいコントリビューターもいるが、企業の支援を受けられている方ばかりではない」

1年前の日本はクラウドネイティブの波に乗り遅れていた

 こうした状況をどうすれば変えていけるのか――。中村氏は、Linux Foundationのエグゼクティブディレクターであるジム・ゼムリン(Jim Zemlin)氏と話し合った。その結果、出た答えは「(すでに日本で活動している)さまざまな人の力をCNCFに結集して、日本のクラウドネイティブ、そして日本のCNCFを盛り上げていこう!」というものだった。「ジム・ゼムリンの言葉には勇気づけられた」(中村氏)。

 中村氏はLinux Foundation Japanのコミッティメンバーにも呼びかけ、CNCFの日本支部としてCNCJが結成される。2023年12月にはキックオフミートアップが東京で開催された。キーノートにはCNCF CTOのクリス・アニスチェク(Chris Aniszczyk)氏を迎え、会場は満席となったという。

昨年12月にCloud Native Community Japan(CNCJ)が結成された

「日本企業のビジネス戦略にOSSを組み込む」取り組みも推進

 立ち上げからおよそ9カ月が経過し、CNCJのメンバー数は現在およそ500名となった。これは世界に157あるCNCFコミュニティの中で18番目の規模だという。そして12回のミートアップを開催。さらにCNCJの内部では、セキュリティなど特定のトピックについてのミートアップやイベントを開催するサブグループやSIG(Special Interest Group)も立ち上がった。

 「クラウドネイティブ用語集(Cloud Native Glossary)の日本語訳も完成した。これもまたすばらしい成果だと思う」

「クラウドネイティブ用語集(日本語版)」。クラウドネイティブ関連用語をわかりやすく説明している(https://glossary.cncf.io/ja/

 ちなみに、この日のKubeDay Japan 2024は2回目の開催だったが(初回は2022年)、スポンサー企業数も大幅に増えたという。中村氏はこれも“CNCJ効果”のひとつとして挙げた。

 今後の目標としては、まず、CNCJのメンバー数を1500名規模に拡大し“アジアNo.1”のクラウドネイティブコミュニティに育てることを挙げた。そのために、東京以外の地域でのミートアップの開催、非ITセクターのユーザー企業の参画、CNCF認定エンジニアの拡大などを促していくという。「CNCF認定について紹介するミートアップを計画中だ」(中村氏)。

 もうひとつの目標は、日本からのOSS(オープンソースソフトウェア)コントリビューションの活発化だという。中村氏は「そのためには、日本企業のビジネス戦略にOSSを組み込む必要がある」という見方を示す。CNCJでも「ビジネスSIG」を立ち上げ、OpenChain(OSSをビジネス活用するうえでの課題解決を図るコミュニティ)、TODO Groupとの連携活動を模索しているという。さらに、CNCFのTAG(Technical Advisory Group)への日本企業の参加も促していきたいとした。

 キーノートの締めくくりとして、中村氏はCNCJコミュニティへの積極的な参加を呼びかけた。公式サイトから参加ができるほか、10月には東京で「Cloud Native Sustainability Week 2024 Local Meetup」を開催予定だ。

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