青い日記帳の推し丸アート 第33回

1966年開館の歴史あるあの美術館がまもなく休館! 楽しめるのは今年のクリスマスまで!

文●中村剛士

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出光美術館

 丸の内帝劇ビル9階にある出光美術館。出光興産の創業者、出光佐三(1885-1981)が蒐集(しゅうしゅう)した美術品を展示・公開するため、昭和41年(1966)に開館した60年近い歴史を有する美術館です。開館40周年(2006年)を機に大規模なリニューアルを実施し現在に至ります。

 出光佐三が 70 余年の歳月をかけて蒐集した美術品を主軸に、国宝 2 件・重要文化財 57 件を含む約 1 万件のコレクションを有する美術館であり、2020年にはアメリカのエツコ&ジョー・プライス氏(プライス財団)によるコレクションの一部、約190件を収蔵し大きな話題となりました。

伴大納言絵巻(上巻部分)

伴大納言絵巻(上巻部分) 日本 平安時代 国宝 出光美術館
出光美術館が所蔵する国宝の1つ、伴大納言絵巻の上巻が、9月7日から開催予定の「出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅣ 物、ものを呼ぶ—伴大納言絵巻から若冲へ」で展示される

古筆手鑑「見努世友」

古筆手鑑「見努世友」 日本 奈良時代~室町時代 国宝 出光美術館
もう1つの国宝古筆手鑑「見努世友」も、「出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅣ 物、ものを呼ぶ—伴大納言絵巻から若冲へ」で展示

 あまり知られていませんが、出光美術館の基本設計は建築家・谷口吉郎(1904-79)で、展示室の他に陶片室、茶室「朝夕菴」が設けられました。ソファーにゆったり腰を掛け皇居周辺の景観が一望できるロビーは、「都会のオアシス」として多くの美術ファンに親しまれています。

茶室「朝夕菴」

茶室「朝夕菴」

出光美術館ロビー

皇居周辺を眺めるロビー

 そんな出光美術館ですが、帝劇ビルの建替計画にともない、2024年12月をもって、しばらくの間、休館することが決まっています。今年が現展示空間では最後の展示となることから、「出光美術館の軌跡 ここから、さきへ」と題した展覧会が4期にわけ開催されています。

 帝劇ビルに入る日本を代表する演劇・ミュージカルの聖地として、長年の間、多くの観劇ファン・俳優から愛されてきた帝国劇場もまたビル建て替えの間、しばらく休館となります。出光美術館と帝国劇場という歴史と伝統のある場所がしばしの間地図上から無くなってしまうのは寂しいことですが、伝統を継承し再開することを期待して待ちましょう。

 さてさて、今回の帝劇ビルの建て替えは隣接する国際ビルと共同で行うことが発表となっています。どちらのビルも竣工から約 58年が経過し、防災対応機能の強化、テナントニーズの高度化や脱炭素社会の実現に向けた社会的要請への対応強化など、機能更新を主眼とした建て替えです。

 帝劇ビル・国際ビル共同建替計画では、これまで愛されてきた歴史と伝統を継承しながら、文化・芸術の拠点としてさらに発展させ、更なる魅力あるまちづくりに貢献すべく出光美術館、帝国劇場(東宝)そして三菱地所の三者がタッグを組んで進めていくプロジェクトです。

 どんな美術館に生まれ変わるのか想像を巡らせつつ、今年12月25日で最終日を迎える現行の出光美術館に長年のねぎらいの言葉・思いを携え、足を運びましょう。

【展覧会情報】
出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅣ
物、ものを呼ぶ—伴大納言絵巻から若冲へ

2024年9月7日(土)~10月20日(日)

鳥獣花木図屏風(右隻)

鳥獣花木図屏風(右隻) 伊藤若冲 日本 江戸時代 出光美術館

 出光佐三(1885 - 1981)がはじめて仙厓の作品を入手してからおよそ120年。美術館の設立を経て現在にいたるまで、所蔵作品の再評価や新たな作品蒐集が重ねられた結果、出光美術館の書跡と絵画のコレクションは、それぞれの歴史を通覧できるほどに充実したものになりました。本展では、同館の調査・研究活動と蒐集活動の歩みを振り返りながら、やまと絵、仏画、水墨画、文人画、風俗画、琳派、さらに書跡の分野から作品を厳選して展示します。

日本・トルコ外交関係樹立100周年記念
トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵 名宝の競演

2024年11月2日(土)~12月25日(水)

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