SACD 10
SACD 10は、コンパクトディスク再生機の集大成として開発したディスクプレーヤー&USB DAC。マランツはフィリップス傘下で、CDプレーヤー/SACDプレーヤーの両方のオリジネーターとして製品を開発した。その自負を込めて、オリジナルDACの搭載、自社開発のSACDドライブ、こだわりのアナログ回路などを搭載した最高クラスの製品を開発した。
デザインはModern Classical Designを採用。MODEL 10とも親和性が高い。アルミ製のトップカバーは厚さ12mmとのことだが、これはシャーシの底板よりも厚いというから驚異的だ。騒音や振動を対策するために採用した。内部は2層4ブロック構造で、下層に電源とドライブメカ、上層にデジタル回路やDACを収めている。新デザインとなるアルミ無垢のトレイトップも目を引く特徴だ。
メカ部はアルミ押し出しベースの上に堅固に取り付けてある。ドライブメカの下にはCDデコーダー基板がある。ここはブラックボックス化されており、普通はカスタマイズできないが、SACD 10では設計段階で使用部品などを再選定できたという。SACD 10はUSB DAC機能も持つが、ディスクを再生しない場合はCDメカに供給する電源をシャットダウン。低ノイズ化を図れるという。
DAC部も汎用チップを使わず独自開発している。
オリジナルディスクリートDAC:MMM(Marantz Musical Mastering)は、フィリップスのビットストリーム技術の系譜で、前段に置かれた「MMM-stream」がデジタル信号処理を担当するブロック。ここで入力したPCM信号はオーバーサンプリングなどを経て11.2MHzのDSD信号として出力される。後段に置かれている「MMM-conversion」は1bitの信号をアナログ信号として出力するためのフィルターとして機能するブロック。前段と後段はアイソレーターを挟んで繋がっている。アナログフィルターは8タップの作動出力になっており、4ch(L+、L-、R+、R-)の信号レベルを取り出すための操作を8回繰り返すものとなっている。従来は1パッケージの半導体ICを使っていたが、SACD 10ではバラバラに32個並べたものに変更。抵抗値が下がるので、出力電流が約3倍となり、性能と音質の改善に寄与した。
SA-10と比較した特性はSINAD(Signal-to-noise and distortion ratio)で4.5dB、S/N比で8.1dB改善したという。また、MMM基板とデジタル基板の両方をそれぞれ4層から8層に変えることで、低ノイズ/低インピーダンス化。アナログ回路もHDAM、HDAM-SA3の最新版を採用するなど、使用パーツの再選定で音質改善を図っているという。
ノイズ対策も徹底している。アナログフィルター部の基板の上下にシールドケースを設けて低ノイズ化。またL/Rの回路やアナログフィルターとユニティゲインバッファーの間を銅板でシールド。ここも電源やGNDを強化でき、低ノイズ/低インピーダンス化に寄与する8層基板にしている。
各ブロックのノイズが相互に混入することを防ぐため、デジタル回路用の電源とアナログ電源用の電源トランスと電源回路を左右に分けて配置。また、スタンバイ電源用の回路も別途用意している。トランスは銅製のアルミ棒で持ち上げて固定。非磁性体のものを浮き上がらせているという。
ヘッドホンアンプはMODEL 10と共通の電流帰還型だが、MODEL 10にはない3段階のゲイン切り替え機能を装備している。
本体サイズは幅440×奥行き442×高さ192mmで、重量は33kg。バランス、アンバランス、同軸デジタル、光デジタル、ヘッドホン(6.3mm)出力、同軸デジタル、光デジタル2系統、USB-A、USB-B入力を装備。
入力できるデジタル信号は、最大11.2MHzのDSDまたは最大384kHz/32bitのPCM(USBデジタル入力)、最大192kHz/24bit(光/同軸デジタル入力)。なお、USBメモリーからの再生時はDSD(dsf/diff)が最大5.6MHz、PCM系が最大192kHz/24bitとなる。データディスクの再生も可能だ。