このページの本文へ

パラ競技ボッチャのテックスポーツ「ロボッチャ」とは?

2024年10月23日 11時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集● ASCII STARTUP

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「ロボッチャ」を知っているだろうか? 自らがプログラミングした投てき用ロボットを用いて、パラスポーツの「ボッチャ」を行なうテクノロジースポーツでスタートから2年を経ている。テクノロジーの面白さや興味を広げ、パラスポーツへの理解が深められる取り組みとして、注目を集めている。2024年3月17日に「ロボッチャ ジャパンカップ2023」が開催されている。今回は「ロボッチャ」の現在地や、テクノロジースポーツの可能性について取材した。

多くの学びが得られるテクノロジースポーツ

「ロボッチャ」のベースになっている「ボッチャ」は、ヨーロッパ生まれのパラスポーツだ。ジャックボールと呼ばれる目標球めがけて自ボールを投げ、いかに近づけるかを競うという競技で、パラリンピックの正式種目にもなっている。ロボッチャでは、10分の1サイズにしたコートやボールを使用。競技者が組み立て、プログラミングを行った投球用のオリジナルロボットを用いてプレーする。

 ロボットを組み立てる過程でエンジニアリングや理論、原理に触れ、プログラミングではデータサイエンスについても学ぶことが。また、チームとして活動する中ではソーシャビリティーを体験し、チームで動くことの大切さを確認できる。加えて、プログラミング未経験者でも10分講座を受けるだけでプレーできる「ハードルの低さ」もポイントだ。

 学習プログラムの開発と運営を手掛ける「エデュソル」の代表であり、一般社団法人ロボッチャ協会の代表も務める岡本弘毅氏は、ロボッチャの魅力について、「性別や年齢に関係なく誰でも取り組むことができ、テクノロジーを使って何かを解決する思考法を広げたり、テクノロジーが実社会でどのように役立っているのか学んだりできるのが大きな特徴。また、ロボッチャを通してボッチャを知り、様々な人と交流をすることによって、多様性を享受するマインドを育むことにもつながる」と話す。

 実際にロボッチャ ジャパンカップ2023は、年齢制限なしだったこともあり、小学2年生から社会人まで幅広い年齢が参加。同点でタイブレークにまでもつれ込んだ決勝戦は中学生の男子チームと女子チームとの対決になり、「性別、年齢関係なく誰でも楽しめる」というロボッチャの特徴を表す結果になった。

大人から子供まで参加できる 写真提供:一般社団法人ロボッチャ協会

 他にも、岡本氏が代表を務めるエデュソルでは、カンボジアの支援活動として、現地のNPOと提携し、ロボッチャの競技用具の製作を委託して雇用の拡大に取り組んでいる。実は国際支援にもつながっているスポーツだ。

指導者不足とコスト面の解決が課題

 2022年に発足したロボッチャ協会は、これまで2年間に渡りロボッチャの普及に取り組み、少しずつ活動規模を広げている。同協会が生み出した「テクノロジースポーツ」という呼称も少しずつ広がっているが、これから先に向けては「指導者の増員とプレーするためのコスト面の解決が課題」だと岡本氏は話す。

 ロボッチャはまだ誕生してから歴史が浅いため、まだまだ教えられる指導者に限りがあるのが現状。また、コストについては、キットや競技用具は数万円するため、まとまった数になると導入費がかかってしまい、導入に時間がかかってしまう。人材面では、ロボッチャ協会で研修を行うなど、指導者育成に取り組んでいるが、コスト面ではまだ課題が多く解決は簡単ではないという。

 今後の展望について岡本氏は、「甲子園大会のように各地域の代表を選出して、全国大会を行なうような規模にしていきたい。テレビ放送も行い、地元企業などにも参画してもらえるようになると、より注目も集まるのではないか。また、カンボジアの学校にキットをプレゼントして、海外代表として参加してもらうなど、大会規模の拡大を目指している」とのこと。

イベントの模様 写真提供:一般社団法人ロボッチャ協会

 先述の課題に加え、学校や自治体、民間企業にオリジナルのイベント実施にも取り組む予定だという。また、現在は10分の1サイズでのプレーだが、次は5分の1サイズで競技を行ない、将来的には1/1サイズで人と競えるようにするのも目標とのこと。

 他にも、ボッチャとロボッチャの大会を同じ会場で行い、ボッチャ⇒ロボッチャ、ロボッチャ⇒ボッチャという、双方向の興味を生み出すことも考えているという。

 岡本代表は「ロボッチャを普及させることで、テクノロジーを怖がらないようになったり、ハイレベルな理系人材の育成につなげたり、多くの人にボッチャを知ってもらって、ボッチャのファンも増やしていきたい」と今後の意気込みを語った。

----------------------

 ロボッチャは、工学的な知識と、柔軟な発想力や論理的な思考力、問題を解決する力、ダイバーシティについての理解と、さまざまな要素が詰まったテクノロジースポーツだ。2024年度中にはさらに規模の大きなジャパンカップ2024が開催される予定になっている。

カテゴリートップへ

「スポーツビジネス」の詳細情報はこちら
  • Sports Marketing

    スポーツを活用するマーケティング戦略を追う

  • Sports Technology

    スポーツの世界を変えるテクノロジーたち

ピックアップ