iPad専用のデジタルイラスト・ペイントアプリケーション「Procreate」を提供するSavage Interactiveは8月19日(日本時間)、同社のツールに生成AIを導入することはないと宣言した。
CEOが強い言葉で生成AIを否定
We’re never going there. Creativity is made, not generated.
— Procreate (@Procreate) August 18, 2024
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8月19日早朝(日本時間)、同社CEOのJames Cuda氏はXに動画メッセージを投稿。
「I really ◯◯ hate generative AI(私は本当に生成AIが嫌いだ)」と、スラングを交えた強い言葉で主張し、「We're not gonna be introducing any generative AI(我々は決して生成AIを使うことはない)」と宣言した。
同日、同社のウェブサイトで公開された特設ページでも同様の趣旨を説明。「生成AIは人々の創作力を奪略しています。盗作を軸に学習する生成AIのテクノロジーは、私たちを不毛な未来へと導いています」との主張に基づき、生成AIを使用しないとの立場を明確にした。
Procreateとは
Procreateは2011年に提供が開始されたiPad専用イラスト制作アプリ。シンプルで使いやすい操作画面や、カスタマイズ可能なブラシツールが人気。Apple Pencilとの相性がよくスムーズな描画が可能なため、プロのイラストレーターからアマチュアまで幅広く利用されている。
また、アニメーションに特化した「Procreate Dreams」、iPhone用の「Procreate Pocket」と関連製品もラインアップされている。
二分化する生成AI技術への姿勢
Procreateに先駆けて生成AI技術の放棄を宣言したのが、「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」を提供するセルシスだ。11月に試験的に実装した「画像生成AIパレット」への批判を受け、2022年12月に「CLIP STUDIO PAINTへ画像生成AI機能を搭載しないことといたしました」とするリリースを出している。
一方、Procreateの直接的な競合となるアドビの「Adobe Fresco」には、同社の生成AI機能「Adobe Firefly」が統合されている。
また、8月にはドイツのスタートアップ「Black Forest Labs(BFL)」が新たな画像生成AI「FLUX.1」を発表し、「X」や「Perplexity」が相次いで採用するなど、シーンは活発に動いている。
このように、現在はデジタルアート・イラスト制作ツールの分野で、生成AI技術の採用をめぐって企業の姿勢が二分化している状況だ。
この問題は単にツールの機能面にとどまらず、アーティストコミュニティや著作権問題にも影響を及ぼしている。
生成AI技術を取り入れないことを選択した企業は、人間の創造性と技術を守り、既存のアーティストの権利を保護する姿勢を示している。一方、生成AI技術を取り入れる企業は、新たな表現方法の開拓や制作プロセスの効率化を目指している。
技術の進歩と伝統的な価値観のバランスをどう取るか、各企業やクリエイターの選択が、デジタルアートの未来を形作っていくのか注目される。