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「Ivanti Neurons」提供拡大で国内データセンター開設、パートナー施策強化などの取り組み

日本市場での取り組み強めるIvanti、SaaSを軸とした戦略を幹部に聞く

2024年08月13日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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「Ivanti Neurons」のカスタマイズ可能な統合ダッシュボード。Neuronsでは「従業員のデジタル体験(DEX)」も重視している

 Ivanti Softwareが、「Ivanti Neurons Platform」を日本国内のデータセンターから提供開始したことを発表した。ITサービス管理、エンドポイント管理、セキュリティ、エクスペリエンス管理などを統合して提供するこのSaaSスイートの、グローバルなプレゼンス拡大に向けた取り組みの一環だという。

●IT運用管理SaaS「Ivanti Neurons」日本国内のデータセンターから提供開始(2024年8月1日)

 7月に来日した米Ivanti COO(最高執行責任者)のデニス・コザック氏、アジア太平洋地域日本担当 上級副社長のアレックス・レイ氏に、Ivanti Neuronsにおける最新の取り組みや国内戦略を聞いた。

Ivanti COO(最高執行責任者)のデニス・コザック(Dennis Kozak)氏(右)、アジア太平洋地域日本担当 上級副社長のアレックス・レイ(Alex Lei)氏(左)

「Neurons」SaaSビジネスに注力、主要ソリューションのパッケージ化も

 Ivantiは現在、世界149カ国におよそ4万社の顧客企業を抱え、売上規模はおよそ10億ドルのソフトウェア企業だ。導入企業はFortune 100企業の85%、Global 2000企業の45%とエンタープライズ層が多く、エンドユーザー数は1億2000万人に及ぶという。

 LANDesk、MobileIron、Pulse Secureといった製品ブランドを持つIvantiが、2020年に発表したのが「Ivanti Neurons」である。これは、企業のITサービス管理、エンドポイント管理、セキュリティ、エクスペリエンス管理といったソリューション群を、単一のプラットフォーム(Ivanti Neurons Platform)上で提供するSaaSスイートである。

 COOのコザック氏は、Neuronsの統合プラットフォームと幅広いソリューションラインアップが「Ivantiの差別化要因だ」と強調した。統合プラットフォームによって、一貫性のあるユーザー体験やナビゲーション、ダッシュボード、さらにはデータ連携、高度なハイパーオートメーションが実現する。また、幅広いソリューションの中でも特に検出と自己修復の機能については「他社が真似できないものだ」と胸を張る。

Ivanti Neuronsの全体像。「Ivanti Neurons for ○○○」という名称で多数のポイントソリューションをラインアップしている

 コザック氏は、IvantiではNeuronsのビジネスに注力しており、現在では既存のオンプレミス顧客に対してもNeurons SaaSへの移行を奨励していると説明する。その結果、SaaSのARR(年次経常収益)は継続的に成長しており、2024年の第1四半期は前年同期比で27%の増加となった。

 ただし、前出のNeurons全体像にあるとおり、Neuronsでは多数のポイントソリューションをラインアップしている。そのため、顧客企業がどれを導入すればよいのか、製品選択に迷いやすい面もあった。

 そこで、これらのソリューション群を主要な顧客ユースケースに沿って整理し、5つのソリューションパッケージとして提供する取り組みも進めている。すでに「エンタープライズサービス管理(ESM)」「統合エンドポイント管理(SUEM)」「ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)」の提供を開始しているほか、「サイバーアセットアタックサーフェス管理(CAASM)」と「脆弱性管理&レスポンス(VM&R)」も今年中に提供開始する計画だ。

新たにソリューションのパッケージ化も行っている

各パッケージがカバーする顧客ニーズの概要

複雑化するセキュリティ脅威に「CIOとCISOとのより緊密な協調が必要」

 コザック氏は、Neuronsが実現するIT/セキュリティの統合プラットフォームのもたらす価値のひとつとして、「CIOとCISOとのより緊密な協調が可能になること」を挙げた。

 Ivantiが企業のIT/セキュリティ専門家を対象に実施した調査によると、72%が「セキュリティデータとITデータが組織内でサイロ化(分断)されている」と回答したという。サイバー脅威の状況が複雑化する中で、データのサイロ化はCIOとCISOの“共闘”を妨げ、防御側にとって不利に働く。

 「Ivantiが目指しているのは、サプライチェーンにかかわるすべてのステークホルダー、すなわち社内のIT専門家、セキュリティ専門家、従業員、外部のベンダー、そういう人々が共通の理解に基づいて行動できるようにすることだ。Neurons Platformを通じて、これまでのデータのサイロ化を解消することができ、生産性やサービスレベル、そしてセキュリティの向上が実現できる。CIOとCISOの間の“摩擦”も解消できるだろう」(コザック氏)

日本国内のビジネス戦略、販売パートナー施策も刷新/強化

 なお、冒頭で触れたとおり、8月にはこのNeurons Platformを日本国内のデータセンターから提供開始した。これにより、日本国内でもさらに低レイテンシでのサービス利用が期待できるほか、データレジデンシー要件を持つ企業での採用も容易になるだろう。これをきっかけに、日本でどのようなビジネスを展開していくのか。

 APACJ担当 上級副社長のレイ氏は、日本における今後数年間の事業戦略として「4つの柱」を挙げた。「ダイレクトセールス強化」「パートナーとの販売促進」「Neurons Platformと各ソリューションの機能拡張」「日本市場への投資」の4つだ。

 セールス体制については、エンタープライズ顧客を中心としたダイレクト&ハイタッチセールスと、中堅・中小企業に対するパートナー経由でのセールスの組み合わせとなる。この両面での強化を図っている。

 たとえば、これまでの企業買収を通じて複雑化していたパートナープログラムは、統一を図りわかりやすいものにした。また、パートナー向けのポータルも統合および刷新を行い、現在では見積もり作成も迅速にできるようになったという。マネージドサービスプロバイダー(MSP)向けのプログラムも新たに用意した。

日本市場のGTM体制。エンタープライズへのダイレクトセールスと、中堅以下の規模へのパートナーセールスを組み合わせるため、両面での体制/施策強化を図っている

パートナー向けの施策を整理、刷新している

 日本のデータセンター開設については、Neuronsの各製品が収集する大量のデータが国内にとどまるようになることで、安心してデータを蓄積/活用できるようになり、将来的なAI/機械学習への適用にも有益だと説明した。コザック氏が指摘した「CIO(IT)とCISO(セキュリティ)の間でのデータ共有」についても、その実現にはクラウドでのデータ蓄積が必要になることから、やはり今回の国内データセンター開設がプラスになると述べた。

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