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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第75回

商業漫画にAIが使われるようになってきた

2024年08月12日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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子育てに疲れた若い母親(筆者作成)

 ウェブ漫画サイト「まんが王国」で配信中の、画像生成AIを使った漫画『児童福祉司 一貫田逸子 リメイク版』がSNS(X)を中心に話題になりました。発行元はビーグリー。オリジナル版の作者らに許諾を得た上、生成AIを利用してフルカラーに作成しなおしたものと考えられます。月間女性ランキング2位に入るほど好評のようです。

絶版漫画をAIで「リメイク」

 ビーグリーは「まんが王国」を運営しつつ、配信する新作タイトルとして、「名作リメイクプロジェクト」として、旧作タイトルの画像生成AIを使ったリメイク展開を始めています。現在のところ4作品が展開されており、『児童福祉司』もそのプロジェクトの一貫で展開されています。


 男性向け漫画では松山えいじさんの恋愛コメディー漫画『エイケン』のAIリメイク版を手がけています。スマートフォンやウェブトゥーンの世界では、新しい読者へのアピール方法として、生成AIを使って過去作品をフルカラー化して作りなおすという流れが起きているのですね。

名作リメイクプロジェクトページ

 オリジナル版の『児童福祉司一貫田逸子』は、原作が穂実あゆこさん、作画はさかたのり子さんが担当した、児童虐待をテーマにした漫画。2006年にコミックスとして全2巻で発売されました。その後、すぐに出版社が倒産して絶版に。しかし、2014年に電子コミックとして『まんが王国』で復刊しました。そして、主婦層の読者の人気を得たことで、リリースから11ヵ月で15万冊相当のヒットに結びついたという、電子コミック化で成功した作品です。

 『児童福祉司 一貫田逸子 リメイク版』は1月頃から配信が始まり、分冊方式でリリースが続けられており、7月に原作1巻分のリリースまでの公開が完了したところです。

 SNSで突如話題になったのは、漫画原作者の石橋和章氏が話題にしたのがきっかけです。さらに、『はじめの一歩』で知られる森川ジョージ氏が、「違和感なく読めちゃった。ちゃんとしているなあと思った」と投稿したことで、さらに話題が大きくなりました。特に漫画業界の関係者には、生成AIを使った漫画作画が広がっており、またそれがヒットしていることが大きな衝撃として受け止められたようです。制作費が通常のカラー化に比べて圧縮できる可能性があることも、関心を集めたポイントでした。

 4月に配信が始まった『エイケン リメイク版』は、筆者の印象としては、AI画像特有の画面がごちゃごちゃする作画で読みにくいというものでした。しかし、『児童福祉司 一貫田逸子 リメイク版』はそれなりに“読める”内容になっていて感心しました。原作のネームが一定のクオリティーに達しているなら、ある程度の読者は普通に読めてしまうのだろうと。エイケンに比べて、1コマの情報量が少ない分、相性が良いのかもしれません。

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