Lunar Lakeの解説そのものは前回までで終わったのだが、そのLunar Lakeの初回で、少しだけ新プロセスIntel 3の詳細について触れさせてもらった。この時は1.2V Cellの信頼性の話だけで終わったのだが、今回はIntel 3そのものについて解説しよう。
Sierra ForestとGranite Rapids以外で
Intel 3を使用する製品はあるのか?
今のところSierra ForestとGranite Rapidsが確実にIntel 3を使うとわかってる製品で、Arrow Lakeは以前の話ではPコア×2のU SKUがIntel 3ベースのコンピュート・タイルを利用(S/H SKUはTSMC N3B)であったが、この話が出てきたのは2024年初頭なので、現状も生きている話なのか自信がない。
というのは、このタイミングならこの後設計をTSMC N3Bに置き換えることは十分可能だからだ。一般論として論理設計が終わった後で物理設計(P&R:Place and Routing)を行なうのには1年ほどかかるとされるが、そもそもArrow LakeではTSMC N3B向けの物理設計がS/H SKU向けに行なわれているので、これに手を入れてコア数を減らすだけでU SKU向けが実現するからだ。
ただ、省電力向けにいろいろ最適化をやり直したりする可能性はあるので、無条件にS/H SKU向けを流用できるとは限らない。Arrow Lake-UのみIntel 3の可能性はあるが、メインはXeon向けであって、その意味ではコンシューマー向けにはあまり関係ないと言えなくもない。
余談ながらそのインテル、これまでFoundry Serviceを率いてきたStuart Pann氏が5月末に引退。これを受けてKevin O'Buckley氏が跡を継ぐことが5月13日に発表されていた。ただそのPann氏、翌6月1日にはGroqのCOOに就任してることを考えると、引退と言われても素直に受け止めるのはやや難しい気がする。
それはともかくその後を継いだBuckley氏へのインタビューが8月6日に突如掲載され、また同日Intel 18Aの量産準備が順調に進んでいる旨のプレスリリースが出されたというのは、やはり8月2日の第2四半期決算を受けて、先端プロセス向けに大量の投資を続けているインテルの現状に対する批判をかわす(投資に見合った製品が出てきて、これによって競争力を再び備えるようになる)目的だろうと考えられる。
Intel 18Aはまだサービス提供は先であり、まずはIntel 3からサービスが始まることになる。Intel 3の顧客が全然いない、という話も聞こえてくるし、連載761回で紹介した図を見る限り、Intel 3の本格的な量産が始まるのは2026年後半といったあたりで当面はXeon 6向けの生産が主になるのだろうが、それでも今後はIntel 3に顧客を集めたいというニーズがある以上、ここで手を抜くわけにはいかないだろう。
話をIntel 3に戻そう。Intel 3には派生型として3-T/3-E/3-PTがある、という話は連載760回で簡単に触れたが、今回もう少し詳細が明らかになった。具体的には下表のようになっている。
Intel 3の詳細 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
Intel 3 | 基本。High Performance Libraryのみ | |||||
Intel 3-T | Intel 3+シリコン貫通VIAのサポートが追加。240nmのHigh Performance Libraryに加え、210nmのHigh Density Libraryをサポート | |||||
Intel 3-E | Intel 3-Tに1.2VのネイティブサポートやDeep N-Well、アナログ回路向けのLong Channelのサポートを追加 | |||||
Intel 3-PT | Intel 3-Eの高性能版。また9μm PitchのTSV/Hybrid Bondingをサポート |
すでにSierra ForestとGranite Rapidsの量産に入っているとされている。もっともEコアの方のSierra Forest、すでにIntel Arkでは7製品がラインナップされているにも関わらず、Dell/HPE/Lenovoといったメーカーから出荷のアナウンスがないというのは、どの程度出荷が本当にスタートしているのか実はよくわからなかったりする。
ちなみにLenovoは製品アナウンスはあったものの、出荷時期は明言されていない。DellとHPEは製品アナウンスそのものが見つけられなかったのだが、実はどこかでされているのだろうか?
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