日本にも間接的に影響がおよぶ可能性
音楽業界が生成AI自体を否定しているわけではありません。RIAAのCEO兼会長であるミッチ・グレイジャー(Mitch Glazier)氏は声明で「音楽コミュニティはAIを受け入れている」としたうえで、「SunoやUdioのような、アーティストのライフワークをコピーし、同意も報酬も得ずに自分たちの利益のために利用することが “フェア”だと主張する無許諾サービスは、私たち全員にとって真に革新的なAIの約束を後退させるものです」と述べています。AIを展開するにしても、自社のライセンス内で管理下に置いたうえで展開したいということでしょう(RIAAの声明)。
裁判がどのような結果になるのかは、現時点では全く予想がつきません。連邦最高裁で判決が出るには、4~5年はかかると見られています。裁判費用は大きなものになるはずで、スタートアップのSunoやUdioにとっては大きな負担になるとも思えます。一方、仮にSunoやUdioに勝ち目が見えてくれば、気がついたらGAFAMに買収されるといった結果も十分にありえることでしょう。もしくは同様のサービスに大手IT企業が参入してくることもあるでしょう。もちろん、レコード会社自体がAIサービスの展開を仕掛けてくることも十分にあり得ることで、状況は混沌としています。
「生成AIが著作権侵害に当たるかどうか」という裁判は、画像分野でアーティストがStability AIやMidjouneryを訴えた事例や、New York TimesがOpenAIを記事の学習について訴えたものなどがすでに進められています。いずれもAI企業は「フェアユース」を理由に学習の正当化を主張しています。どの裁判も、まだ進行中で結果は出ていません。
日本とアメリカで著作権法のルールは大きく異なるため、裁判結果が日本に直接法的な影響をもたらすことはないと考えられます。しかしAI業界は米企業が牽引し、全世界に展開することが前提とされている以上、世界全体のルール形成に影響を与えることは間違いなく、裁判の展開には否応なく注目が集まるでしょう。

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