ビジュアル・コラボレーションツールの「Miro」が、UIを刷新し、AIエージェントの追加など50種類以上の新機能によって“Intelligent Canvas”に生まれ変わろうとしている。
グローバルで7000万人のユーザーを抱えるMiroは、“チーム+AI”の力で仕事のプロセスを変えていく大型アップデートを順次展開していく。同アップデートについて、ミロ・ジャパンの代表執行役社長である向山泰貴氏は、13年事業を続ける中で「第2の創業」ともいえる大きな変革と強調する。
2024年7月23日に開催された発表会では、大型アップデートのポイントと日本市場におけるビジネス戦略が説明された。
キャンバスの刷新:より直感的に、情報にたどり着きやすく
大型アップデートであるIntelligent Canvasでは、仕事の複雑なプロセスを“キャンバス”によって簡略化して、“生成AI”の力で加速させるというコンセプトでプラットフォーム全体で強化が図られる。そして、仕事で成果を得るには、部門や役割を超えた“横断的な協働”が欠かせないという考えが反映されているという。
アップデートは、「キャンバスの刷新」、「コンポーザブルワークフロー」、「AI」の3つの柱で構成される。
まず「キャンバスの刷新」では、ユーザーからのフィードバックを基に、UIをシンプル化している。より直感的に使えるよう画面構成を見直した。
さらに、作業内容にあわせて「モード」が切り替わり、UIが最適化される。例えば、ダイアグラミングモードでは、ダイアグラムの作成に必要な機能にすぐにアクセスできる構成やボタン配置に移行する。
また、レンダリングエンジンを刷新し、キャンバス用のアプリケーションを開発するためのSDKを追加、ユースケースに合わせたウィジェットが提供されていく。「ドット投票」や「ルーレット」、「ランキング」といった、利用頻度が高く、インタラクティブ性が求められるウィジェットから展開され、「タイムライン」や「文章作成」のウィジェットも予定されているという。
コンポーザブルワークフロー:キャンバス上にインタラクティブなワークフローを構築、コストを自動算出するAWS用テンプレートも
2つ目の柱である「コンポーザブルワークフロー」は、キャンバスだけでは実現しづらい、横断的な協働を支援するものだ。上述のウィジェットを組み合わせ、ウィジェット同士が情報をやり取りすることで、“ワークフローアプリケーション”を構築できる。
例えば、チームでブレーンストーミングをする中で出てくるアイディアをウィジェットがリアルタイムで集計する、作業計画を立てている中でウィジェットが工数算出するといったフローをつなげていくイメージだ。
このウィジェットを組み合わせたワークフローは、ユースケースに合わせてテンプレートとして提供される。ブレーンストーミングやステークホルダーレビュー、スプリング計画、ロードマップなど12種類のテンプレートが用意される予定だ。
また、AWSと協業することで、AWSに特化したワークフローも開発中である。ダイアグラム作成機能で、顧客とインフラストラクチャーを設計しながら、ウィジットがリアルタイムで予想コストを算出してくれる。
AI:チームの一員としてキャンバス上で働く、専門知識を持ったAIパートナーが登場
最後のAIでは、これまでMiroアシストとして提供してきた生成AI機能が強化される。MiroのAI機能では、キャンバス上の付箋が“プロンプト”となり、要約や画像、マインドマップ、ダイアグラムなどを生成してくれる。
注目すべき新機能は、専門知識を持ち、チームのメンバーとして共同作業をしてくれる「AIパートナー」だ。キャンバス上で動くAIエージェントであり、周辺のオブジェクトを分析して、一緒に付箋を貼ってくれたり、フィードバックを提案してくれる。
当初は、プロダクトリーダー、アジャイルコーチ、プロダクトマーケティングの役割を担うAIパートナーが提供される予定だ。
MiroのAI機能は、現在ベータ版として無償で提供されており、正式版の「Miro AI」では、ライセンスに応じて無償の利用枠が設定される。追加利用のライセンスも提供される予定だ。
これらのIntelligent Canvasにおけるアップデートは、今後数か月にわたって順次展開され、特設サイトで登録することで、いち早く体験できる。
オンラインホワイトボードからの脱却、DXのプラットフォームを目指す
発表会では、2024年に代表執行役社長に就任した向山泰貴氏から、ビジネス戦略についても語られた。
Miroは、グローバルで7000万を超えるユーザー、23万を超える企業・組織に活用されている。日本では、2021年に日本法人を設立、以降、業界を問わず導入が進んでいる。
一方で、マネーフォワードなど全社規模で活用する企業も出てきているものの、「まだまだ企業の一部で活用されていることが多い」と向山氏。今後、全社的な活用を推進していくために、3つのビジネス戦略を立てている。
ひとつ目は「インダストリー」で、業界に特化したユースケースを構築して、DXのプラットフォームとして訴求する。2つ目は「真の価値提供」、ビジネスに寄与するような活用方法を掘り起こす。3つ目は、「エコシステムの構築」。コミュニティの活性化に取り組み、コアファンの醸成と交流からのイノベーションの創出を狙う。
特に注力していくのは、2つ目の価値提供で、「これまではホリゾンタルな、アイディア出しやブレーンストーミング、ホワイトボードとしての活用が中心だったが、ユーザーの“真の課題”を理解していく。ホワイトボードのイメージから脱却して、イノベーションの中核となるツールにしていきたい」と語った。