「質問の繰り返しでユーザーが理解を深めること」に力点、最高ビジネス責任者インタビュー
注目の生成AI検索 Perplexity、ビジネスモデルや企業向けサービスの実績を聞く
2024年07月04日 07時00分更新
「4つの収益源」でビジネスを構成、広告モデルも従来とは違う形で導入予定
――先ほど、従来の検索エンジンのビジネスモデルについて話がありました。Perplexityのビジネスモデルはどうなっているのでしょうか。
シェブレンコ氏:Perplexityでは無料版のサービスも提供しているが、収益源としては「4つ」を考えている。
まず1つめは、個人(パワーユーザー)向けの「Perplexity Pro」。これは従来から提供しているサブスクリプション型の有料サービスだ。
2つめは、今年4月に発表した企業向けの「Perplexity Enterprise Pro」だ。Enterprise Proでは、データプライバシーやセキュリティの強化、チーム型のユーザー管理、シングルサインオンといった、企業が導入して業務で利用する際に必要となる機能が追加されている。
3つめの収益源はAPIサービスだ。Perplexityの持つ能力をAPI経由で利用できる。
そして最後に、広告も収益源にしたいと考えている。広告については、今年度の末ごろからの展開を予定している。
―― ……? ちょっと待ってください。Perplexityではこれまで、過去の検索エンジンが広告モデルをとっていることを批判的に語ってきましたよね。「検索結果の最上位に広告リンクばかりが並び、ユーザーにとっては邪魔である」といった論調で。
シェブレンコ氏:われわれの考えている広告掲載の方法は、これまでの検索エンジンとは違うものだ。具体的に言えば、先ほど説明した「探索を続ける」の質問リストのひとつに、広告を掲載する形をとる。ユーザーの検索を邪魔するようなことはしない。
たとえばテレビメーカーがスポンサーになったとしよう。ユーザーが何かテレビについて質問をしたら、ふだんどおり回答しつつ、次の質問案のひとつとして、そのメーカーのテレビの機能についてより深く知ることができるような質問を表示させる。そういったイメージだ。
もちろん、回答の本文そのものに(広告スポンサーに誘導するような)手を加えることはない。また(広告として表示された)質問をクリックしてもPerplexityのサイト内にとどまり、ユーザーは探索を続けられる。
――なるほど。そのあたりも、従来の検索エンジンとはかなり違うものになりそうですね。
企業向け/ビジネスユースの成果、Databricksは「毎月5000時間の削減」
――企業向けのPerplexity Enterprise Proがリリースされましたが、Perplexityのビジネスユースについては高いニーズがあると見ていますか。
シェブレンコ氏:リリースしてからまだ2カ月だが、すでに1000社以上のお客さまにEnterprise Proを使っていただいている。たとえばIT関連業界だけでも、NVIDIA、Zoom、Snowflake、Databricks、HP、Stripeといったお客さまがいる。
Perplexityはあらゆるナレッジワーカーが利用できるサービスだが、特にニーズが高いのは金融、ハイテク、弁護士事務所、広告代理店、マーケティングリサーチといった業界の企業だ。たとえば、金融アナリストが市場レポートをまとめる際にPerplexityを使えば、とても効率的に作業が進む。彼らの時給は高いので、1週間に1時間でも時短ができれば大きな価値がある。
――すでに導入している企業ではどんな成果が出ているのでしょうか。具体的な数字はありますか。
シェブレンコ氏:たとえばDatabricksでは、(6000人を超える)全社員を対象にEnterprise Proプランを導入している。その結果、エンジニアリング、マーケティング、セールスの各チームがより迅速に業務を遂行できるようになり、研究開発を大幅に加速することができているとコメントしている。
具体的に言えば、何か1つ調べ物をするごとに(従来の検索エンジンと比べて)平均で5分ずつ時間短縮できており、会社全体を合計すると「毎月5000時間分」の業務効率化につながる見込みだという。
――それは大きいですね。Enterprise Proの機能について、現在はデータプライバシーやセキュリティの強化が中心ですが、今後はどのように進化させていくのでしょうか。
シェブレンコ氏:われわれは回答の精度を高め、検索作業の効率化を図ることを重視している。そこでこの先の機能強化では、Perplexityの応答でプライベートデータも活用できるようにしていく。オープンなWeb上のデータとプライベートデータを組み合わせたものを参照しながら、LLMが回答するかたちだ。
もちろんここで、企業内にある「すべてのデータ」を参照するのはナンセンスだ。参照すべきは品質の高いデータだけなので、そこを選別して参照する。Perplexityではすでに、参照するWebサイトの情報について、独自のページランク付けをして品質の高いものだけを選ぶようにしている。
――最後に、日本市場に対する期待を教えてください。
シェブレンコ氏:日本は高学力のナレッジワーカーが集中している国であり、今回、ソフトバンクという最高のパートナーとも提携することができた。日本がPerplexityにとって世界最大の市場になることを期待している。
