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AI時代に加速する「サーバー排熱」問題、高効率な冷却方式を探る取り組み

液冷サーバーと液浸サーバー、デル・テクノロジーズが検証施設を初公開

2024年06月24日 16時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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空冷方式はGPUサーバーなどで限界、海外では液冷化が進む

 サーバーなどのデータセンター機器において、従来の空冷方式ではなく、液冷、液浸といった新しい冷却方式が必要とされている理由について、デル・テクノロジーズ DCWソリューション本部 シニア・ビジネス開発マネージャー AI Specialist / CTO Ambassadorの増月孝信氏は次のように説明する。

 「最新のGPUでは、1基で消費電力が1000Wを超えるようなものが出てきており、従来の空冷方式では限界が生まれている。海外では液冷化が進んでおり、それに合わせた(データセンターの)ファシリティ設計も進んでいる。今後は国内でも同様の動きになるだろう。ただし、AI用途のサーバーでは液冷が活用されるが、既存の用途では空冷も残り、使い分けが行われる」(増月氏)

 液冷サーバーとして実機展示された「PowerEdge C6620」は、2Uサイズの筐体に4ノードを内蔵する高密度マルチノードサーバーだ。第4世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー(Xeon-SP)を搭載しており、一般的な42Uラックに収容した場合の最大コア数は8960。HPCやWebファーム用途に最適なモデルと位置付けられている。

 標準仕様のC6620は空冷方式だが、オプションの液冷方式を選択することで、工場出荷時に液冷技術が組み込まれる。

 液冷方式の場合、CPU上にはヒートシンクの代わりに「コールドプレート」と呼ばれるジャケットが据え付けられ、サーバー外部の「CDU(Cooling Distribution Unit)」から供給される冷却液が、CPUに接する銅製プレートの熱を吸収する。熱くなった冷却液はCDUに戻り、再び冷却されてサーバーとの間を循環する仕組みだ。

(左)空冷方式のC6620と液冷方式のC6620。液冷方式では液体が流れるパイプが見える (右)2つのCPU上を覆うコールドプレート

 CDUからは毎分1リットルの冷却液が供給され、約20℃でコールドプレートに入ったものが約40℃まで熱せられてCDUに戻る。なおCDUには別途、屋外に設置されるチラーから冷却水が供給されており、サーバーの排熱を運んできた冷却液を非接触で冷やし、熱せられた水はチラーへと循環して、再び冷却される(つまり「サーバー~CDU」「CDU~チラー」という2系統のループがある)。

 サーバー内部を冷却する冷却液は、原則としてコールドプレート内を流れるだけであり、サーバーコンポーネントとは直接触れないため、サーバーの材質は従来のものがそのまま利用できる。また、万が一この冷却液が漏れたとしても、誘電性液体を使っているため電子回路がショートすることはないという。

 デル・テクノロジーズ データセンターソリューションズ事業統括システム周辺機器部シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏によると、コールドプレート上の水路は「細かくすればするほど、熱交換効率が高まる(熱を吸収する能力が高まる)」ため、髪の毛程度の細さの水路が無数に走っているという。「そこに、デルならではの技術が活用されている」(水口氏)。また、冷却液は自動車のラジエーター冷却水に似た成分であり、価格的にも入手しやすいと説明した。

 「液冷方式にすることで、より少ないエネルギーでより多くの熱交換(サーバー排熱の回収)ができる。高性能サーバーの場合は500W以上の放熱があり、これを冷やすには液冷を活用する必要がある」(水口氏)

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