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“プッチンプリン問題”で注目集める基幹システム移行、年次イベントでは企業事例や新たな支援策を紹介

「S/4HANA」発表から9年、マイグレーションという難題に取り組み続けるSAP

2024年06月25日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 今年(2024年)4月、新しい基幹システムへの切り替えでトラブルが発生し、チルド商品(冷蔵品)が出荷停止になるという大きな影響が出た江崎グリコ。同社は6月11日に一部商品の出荷再開を発表したが、いまだ全面解決には至っていないようだ。看板商品のひとつである「プッチンプリン」も出荷停止となり、一般消費者にも基幹システムの移行を巡る問題が“プッチンプリン問題”として広く知られる事態となっている。

江崎グリコでは6月11日に一部商品の出荷再開を発表し、引き続きシステム改修作業を進めることを明らかにしている(出典:同社プレスリリース

 このトラブルは、2027年末にサポート終了を迎える旧版のSAP ERPを、最新版の「SAP S/4HANA」に移行するプロジェクトにおいて発生したとされ、移行プロジェクトの規模や担当したSAPパートナー企業の名前も報じられている。図らずも、基幹システムの重要性とスムーズなマイグレーションの難しさが広く注目される結果となった。

 もっとも、旧版SAP ERPからのマイグレーションが求められているのは、江崎グリコだけ、日本だけの話ではない。世界中の大手企業がSAP ERPを利用しており、マイグレーションはグローバルな課題なのだ。

 SAPが6月11日~13日にスペイン・バルセロナで開催した欧州版年次イベント「SAP Sapphire Barcelona 2024」では、2日目の基調講演、1時間15分のすべてをこのマイグレーションの話題に費やした。今回はこの基調講演を中心にレポートする。

SAP ERPの進化(過去、現在、そして2024年以降)

1時間15分の基調講演すべてを「マイグレーション」の話題に費やす

 ERPは、企業の経営資源(いわゆる“ヒト、モノ、カネ”と“情報”)を一元的に扱い、財務会計、サプライチェーン、人事など幅広い業務を支える、企業経営の基幹を担うシステムである。重要度は極めて高く、そのマイグレーションは大規模なプロジェクトになる。

 SAP ERPは、特に大手企業層においてはグローバルスタンダードの位置付けとなっている。たとえば、Sapphire基調講演でビデオ登壇したNVIDIA 創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏は、次のようにコメントした。顧客企業にとってのSAP ERPの重要性を端的に表した言葉と言える。

 「われわれは複雑なサプライチェーンを持つ。(最新GPUの)Blackwellは60万点もの部品で構成されており、およそ40社の部品メーカーとつながるサプライチェーンをSAPで管理している。世界のビジネスはSAPの双肩にかかっている」(NVIDIA フアン氏)

 SAPでは、旧版ERP(ECC 6.0)のサポート終了期限を(数度の延長を経て)2027年末と定め、2015年に発表したS/4HANAへの移行を促してきた。その最新の動きが2021年に発表した「RISE with SAP」であり、クラウドへのマイグレーションをサブスクリプション形式で支援するサービスとなる。

 現在、RISE with SAPの顧客はグローバルで6000社を上回っている。RISE with SAPの利用によって、アップグレードサイクルの時間とコストが平均30%削減され、85%のビジネスプロセスが標準化できているという。

RISE with SAP

 Sapphire 2日目の基調講演は、そのすべての時間を費やして、S/4HANAへのマイグレーションのメリットを説明したと言ってよいだろう。なかでも強調したのが、クラウド版であるS/4HANA Cloudにマイグレーションすることのメリットだ。

 登壇したSAP幹部のスコット・ラッセル氏は、「SAP顧客がクラウドに移行することで、合計で2.4兆ドルの節減、5.4兆ドルの売上増、2桁規模のサプライチェーン効率化、最大10%の従業員満足度向上が見込まれる」と説明した。「顧客がSAPを選ぶ理由は技術だけではない。SAPのシステムがもたらすビジネス価値に期待している」(ラッセル氏)。

SAP エグゼクティブボードメンバーで最高レベニュー責任者 兼 カスタマーサクセスのスコット・ラッセル(Scott Russel)氏

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