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PDFの日に合わせた「イチオー業務川柳」の結果も

“一応やってる”5つの仕事がデジタル化を阻む アドビがSTOPを提言

2024年06月17日 12時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 アドビは、2024年6月13日、6月15日の「PDFの日」のに先駆けて、「アクロバットとPDFの未来」と題したメディアイベントを開催。イベント内では、Adobe Acrobatの生成AI機能「Acrobat AI Assistant」の日本語版を開発していることを発表した。

 また、PDFの利用実態調査に基づく業務のデジタル化に向けた提言や、ソーシャルメディアキャンペーン「私のイチオー業務川柳」の結果も披露されている。

イベントで提言された「みんなでSTOP 一応やってる仕事 ~5つのSTOP宣言~」

業務のデジタル化を進めるためには、一応やってる仕事をSTOPすべし!

 まずは、PDFの利用実態調査が報告された。本調査は、電子帳簿保存法が改正され、2024年から電子取引における電子データ保存が義務化されたこと、さらに、2024年10月から郵便料金が値上げされることを踏まえ、業務のデジタル化を阻む要因を明らかにすることを目的に実施された。

 まずは、パスワード付ZIPファイルが添付されたメールを送受信する、いわゆる“PPAP”をしたことがあるかという質問だ。82%が、送受信したことがあると回答したという。

「実はこの方法、セキュリティ対策になってないという指摘があります。3つ論点があり、ひとつ目は、誤送信が発覚した時点で送信先にパスワードのメールも送付してしまっている可能性があること。2つ目は、ZIPの暗号化強度だと解読できてしまう可能性が高いこと。3つ目はモバイルデバイスでは、ZIPの閲覧ができずに使いづらいという点です」と、マーケティング本部デジタルメディア ビジネスマーケティング執行役員の竹嶋拓也氏。

アドビ マーケティング本部デジタルメディア ビジネスマーケティング執行役員 竹嶋拓也氏

PPAPのメールを送受信したことのある人は8割以上いた

 また、紙書類の業務として残っているのは見積書・請求書が、過半数と1位。そして、領収書が続く。電子決済や電子承認、電子契約が浸透し始めているものの、現場ではまだまだ紙が使われているという。しかも、せっかく見積書、請求書などをPDFで送信しているのに、その後郵送で紙を二重送付している人が、なんと69.5%もいた。

 一方で、デジタル化を進めたくないという理由は、1位が「手書き・紙の処理に慣れているから」、2位が「デジタル処理に不慣れだから」と「業務が増えてしまう」が同率だった。

「紙でもデジタルでも送ってるという方がすべて郵送をやめると、日本全体で生産性がアップするのではないでしょうか。10月から郵便料金が30年ぶりに大幅に値上げされますので、さらに、コスト増につながるのは想像に難くありません」(竹嶋氏)

慣れた作業を変えたくないという心理からデジタル化に反対する人が多い

 とは言え、20代の約6割はデジタル化の遅い社会では「働きたくない」とも回答している。ちなみに、30代以上は52%。昨今の人材確保が困難な中では、採用においてもデジタル化がポイントとなってきている。

 非効率だったり、無駄だと感じる日常業務についての質問では、1位は断トツで「書類への押印、捺印」。2位以降は「メール送信時の定型文」、「紙資料の印刷・配布」、「手描きでの起債が必要な書類の作成」、「PPAP」、「メールを送ったことを伝える電話」が続く。

 これらの非効率かつ無駄な業務のほとんどは、「Acrobatがあれば解決する」と竹嶋氏。そこで、「みんなでSTOP 一応やってる仕事 ~5つのSTOP宣言~」と5つの業務をデジタル化することを提言した。

Acrobatなら非効率な業務を効率化できる

一応でやっている仕事をSTOPしようと提言

●みんなでSTOP 一応やってる仕事 ~5つのSTOP宣言~
1:請求書や領収書の原本の二重郵送
2:会議資料のプリントアウト
3:印刷して捺印してまたスキャン
4:押印と電子署名の二重手続き
5:メール添付ファイルのパスワード後送

AcrobatでPDFの内容についてAIと会話できるように

 アドビは、2024年4月にAcrobatとAcrobat Readerに統合された生成AI機能「Acrobat AI Assistant」の一般提供を開始したが、英語版のみだった。しかし、待望の日本語版の開発も始まったという(関連記事:生成AI機能「Acrobat AI Assistant」の日本語版を開発中)。プレスイベントでは、世界で初めて日本語版を操作するデモも披露された。

 まずは、英語版の画面をチェック。会社の社内規定や人事の内容についての25ページからなるPDFを開いた状態でAcrobat AI Assistantを用いると、1クリックするだけでドキュメントのサマリーを表示してくれる。その上、サマリーの項目を開くと、PDFの該当箇所も表示され、要点を把握しながら読み進められる。

 また、整理されていないドキュメントもAIを使って要約できるという。

「例えば、ウェブ会議の文字起こしをPDFにして、Acrobatに読み込ませて要約すると、1時間の会議の内容を数分でキャッチアップできるようになります。議事録作成システムといった高価なものを使わなくても、Acrobatで簡単に実現できるのが『Acrobat AI Assistant』」とビジネスデベロップメントマネージャーの岩松健史氏。

アドビ ビジネスデベロップメントマネージャー 岩松健史氏

英語版の「Acrobat AI Assistant」

 開発中の日本語版のAcrobat AI Assistantではどうか。「Why PDF Position Paper」という、PDFの成り立ちから活用までが書かれた35ページのPDFファイルを開き、日本語で「PDFを利用するメリットは何か?」とプロンプトを入力した。

 PDFがクラウドで解析され、少しして日本語の出力が表示された。きちんと質問の答えになっており、簡潔な文章で箇条書きになっている。英語版のように、出力の内容ごとにPDFのどの部分に記載されているか、という機能はまだ実装されていなかったが、日本語をきちんと使いこなせていることはわかる。PDFの内容を分析し、想定し得る3つの質問も日本語で表示された。

日本語でPDFの内容に関して質問できる

レコメンドも日本語で表示された

 世界には約3兆のPDFがあると言われているが、AIにより新たな価値を引き出すことで、さらに生産性を向上できるという。

 なお、利用しているLLM(大規模言語モデル)は、Azureとなり(※編集部注 OpenAI)、現時点で取り扱えるのは120ページくらいまでのPDFになるという。複数ファイルを同時に扱う機能も開発中。また、Acrobat AI AssistantはPDFだけでなく、Wordなど他の文書形式でも利用可能になる予定だ。

 ただし、PDFをAIで活用するためには精度の高いPDFが必要になる。表や文字がイメージデータになっていたり、見た目は段組みになっているのに、列の設定が間違っていると、AIがテキストを読み込めず、処理できない。また、サードパーティのPDF作成ツールを使う場合は、必ずしもAcrobat AI Assistantで活用できるとは限らない。再利用性の高いPDFを作成するために「Acrobatを使おう」と岩松氏はアピールした。

再利用性の高いPDFを蓄積することが重要

 Acrobat AI Assistantは、ベータ期間中は追加コストなしで利用できるが、日本語版の提供時期は未定となっている。

「私のイチオー業務川柳」の最優秀作品は……納得のあるあるを表現

 最後に、6月15日の「PDFの日」にちなんで、“一応やっている業務”というお題で実施された「私のイチオー業務川柳」の結果も発表された。2週間と言う短い募集期間ながら1000件を超える応募があり、今回、披露されたのは最優秀作品と入選作品20件。ゲストにはお笑いコンビ「ミキ」の昴生さんと亜生さんが登場した。

 最優秀作品に選ばれたのは会社員「6月屋」さんの「電子書類 印刷手書き 再スキャン」という作品。あるあるすぎて膝を叩く人も多いのではないだろうか。

●入選20作品(順不同)
・決裁は 根回し済で 形骸化
・空気読み お辞儀ハンコで ヨイショする
・FAXを 送った後の 確認TEL
・使うかも 消せずに貯まる 過去データ
・紙の書類 スキャンしたのに 取っておく
・承認印 電子と紙の 二刀流
・役員の 会議資料は フルカラー
・「紙無くす」 通知するのに 紙使う
・領収書 捨て時わからず また保管
・デジタル化 上司の指示は 紙ってる
・ハンコ押す ただそれだけに 行く会社
・紙でくれ 言われてないが 紙で出す
・念のため イチオースクショが メガバイト(MB)
・紙無くせ 行動計画 紙出させ
・納品書 一応原本 送ります
・ペーパレス 推進せよと 書類(かみ)回る
・会議室 予約入力 張り紙も
・データ便 送りましたと メールする
・電話する 前にLINEで お伺い
・インボイス データで受け取り まず印刷

「私のイチオー業務川柳」の入賞作品が発表された

 ミキのお二人も吉本の芸人としてのイチオー川柳を作成。亜生さんは「出番前 西川きよしに 要注意」という作品を披露し、昴生さんに「字余りでもいいから師匠付けろや!」と突っ込まれていた。

ミキのお二人も川柳を発表した

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