割安感が喪失したのは円安のせい?
以上で簡単ではあるがRyzen 7 8700FおよびRyzen 5 8400Fのレビューは終了だ。CPUパワーはRyzen 7000シリーズの同格モデルよりも若干低いが、特にゲームに関しては「設定次第で」Ryzen 7000シリーズとそう変わらないこともある。
だが困ったことに、Ryzen 7 8700FやRyzen 5 8400Fは既存のRyzen 7000シリーズに対する価格的アドバンテージがほとんどない。原稿執筆時点(5月29日の正午)における税込価格は以下の通りである。
- Ryzen 7 7700:実売4万7000円前後
- Ryzen 7 8700G:実売5万5000円前後
- Ryzen 7 8700F:実売4万9800円
- Ryzen 5 7600:実売3万1000円前後
- Ryzen 5 8500G:実売2万6000円前後
- Ryzen 5 8400F:実売3万2800円
以上のように今回の新モデルを買うくらいなら、既存のモデルを買った方が割安なのである。昨今の輸送コストの増大や円安傾向を考慮に入れれば仕方ないことではあるが、特にRyzen 5 8400Fに関しては内蔵GPUのあるRyzen 5 7600の方が安い(今回検証に使用したRyzen 5 7500Fより1割程度マルチスレッド性能も高い)。Ryzen 5 7600はやや非力ではあるが内蔵GPUもあるためビデオカードを必要としないというメリットもある一方でRyzen 5 8400Fはビデオカードが必須である。
Ryzen 5 8400FはSocket AM5の入門モデル的な位置付けになり得るモデルではあるが、この価格設定ではRyzen 5 7600の方がPCI Express Gen5対応やレーン数という意味でもお買い得だ。NPUが搭載されていればまた話も違ったが、Phoenix 2ベースのRyzen 5 8400FはNPUは非搭載なのだ……。
ではNPUがあるRyzen 7 8700Fは価格的メリットがあるかというとこちらも微妙だ。Ryzen 7 8700FはRyzen AIが利用できる最安のSocket AM5向けCPUではあるが、肝心のNPUを活かせるアプリがほぼない(筆者の観測範囲では)。
LM StudioやWindows Studio EffectでNPUが使われるという情報はあるが、今回の検証ではNPU利用が確認できていない。ゲーム目的でRyzen 7 8700Fを検討しているなら、予算をあと数千円上乗せすることで現状ゲーミング最強CPUであるRyzen 7 7800X3D(実売価格5万7000円前後)に手が届く。
AI処理性能ならビデオカード側に任せた方がさまざまな面で有利であるという現状を考えれば、Ryzen 7 8700Fを選ぶ意味も薄れてくる。価格的アドバンテージをもっと作らない限り、「現段階での」Ryzen 7 8700Fの立場はとても厳しいといえるだろう。

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