ASCII.jp読者のみなさん、こんにちは! 全日本ラリー選手権「JN2クラス」に新設された「MORIZO Challenge Cup」でコ・ドライバーをしています、元SKE48の梅本まどかです。モータースポーツ界の老舗で名門チーム、CUSCO RACINGから参戦中です。
人生初のクラッシュでリタイヤになった第4戦
5月11~12日に京都府京丹後市を拠点に行なわれた全日本ラリー第4戦「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」ですが、結果から言うとリタイアにしてしまいました……。
クラッシュからのリタイアとなったのはLeg2のSS5(Oouchi)。レッキ日の金曜日、Leg1の土曜日とお天気がよかったのですが、Leg2(日曜日)は雨が少しだけ降るという少し難しいコンディションでした。
クラッシュの原因が雨というわけではないのですが、同じSS5でリタイアした車両は多かったです。今回の丹後ラリーは、SS1(Oouchi Reverse)から路面に対する難しさを感じ苦戦していました。Leg1を終えた時点での順位から、Leg2のスタート順が決まっていくのですが、Leg1で上手くいかずモリゾウチャレンジカップでは最下位。走行順も後ろになってしまいました。
中々苦戦している状況から抜け出せず、なんとかしたいとLeg2は意気込んでいたのですが、SS5を2km過ぎたあたりでクラッシュしてしまったのです。
クラッシュする前からアンダーで、左コーナーを曲がって少し直線があり、そのあとゆるい右コーナーからすぐ左コーナーという場所でした。右コーナーで曲がれず、そのまま真っ直ぐガードレールにぶつかってしまいました。クラッシュする前にぶつかるとわかっていたので身構えていたのですが、「やってしまった!」その時はそんな感情でした。
きっとこの感じではまた走り出せるようなクラッシュではないとわかっていたので、すぐに後続に伝える準備をしました。ホントは落ち込みたい気持ちではあるのですが、ラリーは1分後には後続車がきてしまうのでその対応をしないといけないのです。
1分後に来る後続車のために
クラッシュしたらすぐに三角停止板を置きに行く
ドライバーの星選手はすぐに私に「大丈夫ですか?」と確認してくれ「大丈夫」と答えながら「すぐ三角停止板とOKを持って外に出て」と話し、私は携帯のアプリ「TRACKING」でOKのボタンを押しました。このボタンで現在の状況をオフィシャルに伝えることができ、この後の流れをスムーズにできるのです。
マシンが横を向いてしまったので、先に車両から降りた星選手に「次の車両通れそう!?」と聞くと「んー、ギリギリです」とのこと。とりあえずコースは通れるというボタンも押し、星選手には車両の近くの安全な場所でOKを出してもらうよう頼み、私は50m離れた右側に余裕のあるところまでダッシュで三角停止板を置きに行きました。
クラッシュしてからの次の1台は、1分後と言っても思ったよりも早く来てしまいます。クラッシュ直後から動いても、お互いの安否確認、車から降りて処理したりとあれこれしていると1分はあっという間。とにかく走り、後続車に伝えなくてはいけません。まさに時間との勝負でした。
私たちよりあとに走る台数は30台。最初の方は何台通ったかを確認する余裕もなく、3台くらいまではとにかく必死に自分を落ち着かせながらも、この場所での合図でいいのか、しっかり合図が出せているかなど整理をしながら、音が聞こえたらとにかく腕を上下に振ってアピールしました。
無事に合図を出せたあとにスマホを車に置いてきたことに気づき「あー、忘れた!」。そんなことを思いながらも、後続車の音が聞こえると必死に手を上下に振り、スピードを抑えるよう合図を出します。
やはりスマホを持っていた方がチームとも連絡がとれるし、余裕があればオフィシャルにも連絡が入れられるかもと思い、車両が通り過ぎてからすぐにマシンに戻り、星選手に「三角停止板があるところまで行って合図を出しておいてほしい」と伝えて、私はスマホを取って車両から離れ、近くの合図ができる場所へ。
ここで指示を出す時、後続車がほぼ停止をするくらいスピードを落とし、ギリギリで通ってくるのを見ていると、ホントにヒヤヒヤしました。次の後続車の音が聞こえると「お願い、ぶつからないで」と祈りながらスピードを落としてもらうアピールをしました。
車が通過してから1分は次の車両は来ないため、その間にメカニックさんに状況を伝え、30台過ぎるのを待ちました。
チームはもちろん主催者にも迷惑をかけてしまった
リタイアも久しぶりで、道の半分以上を塞いでしまったこともなかったので、こんな気持ちはホントに初めてで、申し訳なさでいっぱいでした。
無事30台通過すると星選手のところへいき、三角停止板を回収。スイーパー(すべての車両がSSを走行したことを確認する主催者のクルマ)が来るのを待つのですが、ここでスイーパーより先にオフィシャルにお弁当を運ぶ車が来てしまいました。
コンパクトな車両なら通れるのですが、少し大きな車だったので、私たちの車両が道を塞いでしまっていたため、お弁当を運べず、一緒にスイーパーを待つことに。
スイーパーが到着し、マシンを見るなり「こりゃ大変だ」と驚いていました。横を向いてしまった車両を縦に置くことで道を通れるようにしようとなったのですが、マシンはもうエンジンもかからない状況です。引っ張るにも大変で、たくさんのオフィシャルやメディアの方にも手伝っていただいて、ようやく道の端っこに車両を移動できました。こんなにも多くの方々に迷惑をかけてしまったのです。
横を向いてしまったクルマはこうして動かすのかと勉強になることばかりで、オフィシャルの方の知識やテクニックのすごさを実感していました。
午後の走行は、三角停止板を出していたところから見学することになり、ようやくSSを走るマシンを見られて、最初のうちは勉強になると思っていたのですが、だんだん雨が降ってきて、やはり悔しさや、サービスに戻れなかった後悔の気持ちが押し寄せてきました……。
今現在も復旧作業中のメカさんに頭があがりません!
全車通り過ぎるとメカニックさんがマシンの回収にきてくれたのですが、積載車に壊れたマシンを乗せるのはものすごく大変な作業。雨に打たれながら一生懸命動かないマシンを頑張ってあの手この手で動かし、なんとか乗せてくださいました。メカニックさんにもマシンにも申し訳ない気持ちが込み上げてきて、もう絶対こんなクラッシュはしたくないと心の底から思いました。
実は今もメカニックさんは、次戦のモントレー(群馬)に向けてマシンを直してくださっています。 今までもホイールや足回りをぶつけてしまい、サービスの時間になんとか直してもらっていましたが、動けなくなるほど壊したことは初めてで、忘れられない1戦となりました。
6月8~9日に行なわれる全日本ラリー第5戦モントレーに間に合うよう作業してくださっているメカニックさんに感謝の気持ちと、もうあんな姿や顔をさせないようにあと2戦。マシンを壊さず楽しかったと終われるラリーができるように準備していきます☆+°
また、モントレーの開催地である群馬県はCUSCOのホームでもあるので、今回の反省点を活かし、しっかり結果を残せるよう頑張ります!
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