最新ユーザー事例探求 第57回
データ分析ツール「Domo」採用、現場のデータを可視化し業務効率化の「気付き」につなげる
“物流の2024年問題”を転換点ととらえ社内データ活用を進める大和物流
2024年05月22日 08時00分更新
業務のデータ化、デジタル化を進めるうえでの「非常に重要な一歩」
岡氏は率直に、大和物流におけるデジタル化の取り組みは始まったばかりであり、まだ胸を張って「DX」と呼べる段階には到達していないと語る。それでも、これまで“アナログ”な世界だった物流現場を効率化していくうえで、データ化、デジタル化に着手できたことは「非常に重要な一歩」だと評価している。
「まずは物流業務をデータ化して、それをナレッジにしていく。データ化されたものは共有できますから、そこから業務を標準化し、あとはPDCAサイクルを高速で回していく。具体的なアクションにつなげるために、データ化すること、数字で表すことは非常に重要な一歩かなと考えています」
各現場の業務効率化や課題解決にデータを活用できる人材の育成も、これから重要な取り組みだという。
「現在は、社内の各部門でダッシュボードを作れる人を育成しようとしています。ゆくゆくはデータアナリスト、データサイエンティストといった人材育成にもつなげたいですが、まずはデータを可視化できる、データを使える人材の育成が課題です」
取り組みの一環として、社内のDomoユーザーどうしで活用事例を発表し合う「事例発表会」を、半年に1回のペースで開催している。各部門から登壇して、Domoの画面を見せながら作成した背景や問題認識、作成後に得られた成果などを報告し、意見交換をする会だ。全国の事業所からもオンラインで参加することができ、毎回70~80名が参加する盛り上がりを見せているという。
Domoの導入支援を行うパートナー、アタラによる社内トレーニングも、導入時だけでなく継続的に実施しているという。最近では中級編のトレーニングも用意して、より高度な使いこなしができる人材の育成にも取り組んでいる。
社内への定着も徐々に進んでいる。Domoのアカウントが付与されている546名中、取材日を起点として5日以内にDomoを利用した社員は230名だった。岡氏は「何か興味のあるデータが一つでもあれば開いてもらえる」と考えて、さらなる活用の定着を進めたいと話した。
「最終的には、データ活用という取り組みを、日々の業務に落とし込めるかどうかだと思います。それができれば『こういうデータがあるなら分析してみようかな』とか、『ほかの事業所とデータで比較してみようかな』といった気付きにつながります」
冒頭で触れた“2024年問題”によって「今まで以上に生産性の向上が求められることは間違いない」と岡氏は語る。そこではITシステムや物流ロボットなどの活用も視野に入るが、「やはり中心となるのは“人”です」と岡氏は強調した。
「いかに人を生かして現場の生産性を高められるか。そのためには運用の整理からスタートして、ツールとしてのデジタル化やシステム化を図り、そこから集まってくるデータを活用しながら、ふたたび運用の改善や変革につなげていく。こうすることで、やっとDXの道筋が見えてくるのだと思います。やはり中心は人であって、人が持つ能力を最大限に引き出すためのデータ活用である、ということを常に念頭に置いています」

この連載の記事
-
第66回
ビジネス・開発
懐かしのあの曲が「リバイバルヒット」する時代 エイベックスはAI・データで“バズりの兆し”を先読み -
第65回
ビジネス・開発
Microsoft 365 Copilotの“利用率98%” 全社展開した参天製薬「生成AI活用の現在地」 -
第64回
ビジネス・開発
1000人アンケートはわずか45分間 日本ハム、AI生成の“仮想顧客”分析で商品開発を加速 -
第63回
ビジネス・開発
社員発の“カスタムGPT”は2000個以上 MIXIの「ChatGPT Enterprise」全社導入で起きた2つの変化 -
第62回
ビジネス・開発
監視リソースは2000以上 SBI証券がDatadogによる大規模監視で目指すこと -
第61回
Team Leaders
リード発掘の秘訣は「ベテラン営業の知見×法人DB」 USEN ICT Solutionsにおける営業DXの歩み -
第60回
Team Leaders
規模拡大するSansanが抱えた“成長痛”、Notion全社導入と定着化で克服 -
第59回
ITトピック
「フェリーの待ち時間に仕事がしたい」島しょの自治体・竹富町がM365で進めるDX -
第58回
ビジネス・開発
モノタロウのデータ活用促進、秘訣は“縦に伸ばして横に広げる” -
第57回
ITトピック
米の銘柄をAIで判定する「RiceTag」 検査員の精度を実現する試行錯誤とは? - この連載の一覧へ







