最新ユーザー事例探求 第57回
データ分析ツール「Domo」採用、現場のデータを可視化し業務効率化の「気付き」につなげる
“物流の2024年問題”を転換点ととらえ社内データ活用を進める大和物流
2024年05月22日 08時00分更新
「何も問題がなければ、おそらく『新しい取り組み』というものは出てこなかったと思います。こういう機会だからこそチャレンジできる、さらに、うまくいけば問題解決だけでなく大きな効率性の追求もできる。そういう理想があります」
今年(2024年)、設立65周年を迎えた大和物流は、大和ハウスグループの総合物流会社だ。物流業界では“物流の2024年問題”への取り組みが大きな課題となっているが、同社ではこれを「大きな転換期」ととらえ、パートナー企業とも一体となって効率化への取り組みを進めている。その中で重視するのがデジタル化による業務効率化であり、その入り口として「データ活用」に取り組んでいる。そこで採用しているのが、クラウド型データ分析/BIツールの「Domo(ドーモ)」だ。
今回は大和物流で経営企画部長と情報システム部長を兼務する岡 貴弘氏に、「大きな転換期」を迎えた同社が考えるデジタル化の姿、データ活用の取り組みを進める背景やDomo採用の理由などを聞いた。
不確実性の時代、社員一人ひとりの自発的行動を促すための「データ共有」
大和物流は、大和ハウス工業の物流子会社として1959年に事業をスタートした。現在は、顧客のビジネスを物流面から支える「戦略的ロジスティクス・パートナー」として、全国に展開する物流拠点を軸とした3PL(サードパーティーロジスティクス)事業を中心に、顧客ニーズに合わせた物流施設の開発なども手がける。国内事業所は42拠点、自社で運営する物流施設は107カ所に及び、正社員数は1400名を超える(2024年3月末時点)。
物流会社として避けて通れないのが、現在、社会的な課題として取り上げられることも多い“物流の2024年問題”である。岡氏は「物流業界での労働力不足や働き方改革を背景として、2024年には14%、2030年には34%の『輸送力不足』が起きる可能性があると言われています」と説明する。
ただし大和物流では、この2024年問題を「大きな転換期」「物流のあり方を見直す機会」ととらえ、ここから新たなビジネス機会を生み出したいと考えている。そうした同社の姿勢を語ったのが、記事冒頭に挙げたコメントだ。
物流の現場はまだ“アナログな部分”が多いのが現状だが、それゆえにデジタルの力を取り込めば、業務の効率化だけにとどまらず競争力向上も期待できる。岡氏は「“2024年問題”は2024年以降も継続していく問題であって、持続可能な事業基盤を構築していくことが重要です」と強調する。
経営企画部長と情報システム部長を兼務し、大和物流におけるDX推進を主導する立場にある岡氏が、社内業務デジタル化の第一歩として選んだのが「経営指標データの全社的な共有」だった。社会もビジネスも大きく変化し続けるVUCAの時代(不確実性の時代)への対応策として、コロナ禍の前から検討していたという。
「VUCAの時代において、企業はさまざまな変化に迅速に対応していかなければなりません。そのためには、会社の方向性を理解しながら社員一人ひとりが本来持っている力を発揮し、自らの意思決定で自発的に行動できるように、会社としてエンパワーメント(権限委譲)する必要があります。その重要な第一歩が『情報共有』だと考えました」
社員個々人が会社の方向性を理解し、自らの判断でアクションを起こしていくためには、言うまでもなくデータの共有が重要だ。しかし、以前のデータ環境はサイロ化しており、「手の届くところにデータがない、見えない、まとまったものがない。オフィシャルな数字は、精緻化されていて(細かすぎて)見づらい。さらに、月次のデータが資料化されるまでに時間がかかる――。こうしたさまざまな課題がありました」(岡氏)。
大和物流では、2020年4月に「データ活用プロジェクト」を立ち上げ、データ分析ツール導入によるデータ環境整備の検討を始めた。その4カ月後の8月にはDomoを契約して、一部のモデル店で初期導入をスタート。必要なデータ項目など、モデル店からのフィードバックを受けながら改良を重ね、2021年4月には全社に対して経営指標データのダッシュボードを展開することができた。
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