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マイクロソフトのAIパソコン「Copilot+ PC」がすごいところ

2024年05月21日 13時00分更新

文● 田口和裕

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 マイクロソフトは5月20日(現地時間)、AIに最適化された新しいカテゴリーのWindows PC「Copilot+ PC」を発表した。Microsoft SurfaceおよびOEMパートナー各社(Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、Samsung)によって発売され、6月18日より購入可能となる。価格は999米ドル(およそ15万6300円)から。

NPUを搭載、クラウドとも連携

 Copilot+ PCは、CPUとGPUに加え、新たにAI向けに作られた、高性能のニューラルプロセッシングユニット(NPU)を搭載するのが特徴。Azureクラウドの大規模言語モデル(LLM)と小規模言語モデル(SLM)と連携することで、翻訳や検索、画像生成、最新のLLM「GPT-4o」など様々なAIアプリを実行できる。

 また、マルチスレッド性能においてApple MacBook Air 15インチを最大58%上回る一方で、バッテリー駆動時間も大幅に改善。1回の充電で最大22時間のローカルビデオ再生、または15時間のWebブラウジングが可能となっており、MacBook Air 15インチと比べてローカルビデオ再生で最大20%長く使用できる。

AIで進化する検索機能

 Copilot+ PCは、ユーザーがこれまでPCで見たWebサイトや作成した文書、受け取ったメールなどを、ユーザーの行動履歴に基づいて自動的に整理する。

 例えば、あるプロジェクトに関するWebサイトを閲覧し、同じプロジェクトの文書を作成していれば、それらの情報は関連付けられて整理される。こうした情報の整理方法のおかげで、ユーザーは過去の情報を思い出しやすくなっている。

 また、AIを活用し、ユーザーがこれまでPCで見たことのある情報を視覚的に簡単に見つけ出すことができる「Recall(リコール=思い出す)」という新しい検索機能も搭載されている。

 Outlookの特定のメールや、Teamsの特定のチャットといった、細かい場所に戻りたいときにも、Recallならワンタッチで可能。まさに、ユーザーの記憶をAIがサポートする、これまでにない検索体験と言えるだろう。

 なお、Recallで利用する画面の写真などは、削除したり保存期間を変更したりできるうえ、機能自体を使わないことも可能。ユーザーは常にRecallをコントロールでき、プライバシーもしっかり守られる。

AIと協働作業できる「Cocreator」

 Copilot+ PCは、ニューラルプロセッシングユニット(NPU)とローカル小規模言語モデル(SLM)を使用した画像作成・編集機能「Cocreator」が搭載されているほか、「Paint」や「Photos」などのアプリケーションにも新機能が導入されている。

 Cocreatorでは、手書きとテキストプロンプトを組み合わせることで、ほぼリアルタイムで新しい画像を生成できる。

 強力な拡散ベースのアルゴリズムにより、最小限の手順で最高品質の出力が最適化され、まるでAIと一緒に作成しているかのような感覚が得られるという。

 「Photos」アプリには、画像生成と写真編集を組み合わせることで、自分の写真をまったく新しいスタイルに変更できる「Restyle Image」機能が追加された。

リアルタイム翻訳も可能

 NPUを活用した新機能「Live Captions」を使えば、あらゆる音声をリアルタイムで英語字幕に変換することができる。

 この機能は、40以上の言語に対応しており、オンラインでもオフラインでも利用可能。ライブ音声だけでなく、録音された音声にも対応している。

 ただし、英語から他言語への翻訳がリアルタイムで可能かどうかは不明だ。

 新機能「Windows Studio Effects」を使えば、ビデオ会議やライブ配信などでユーザーの見た目や音声を簡単に改善することができる。

 暗い環境での照明を自動調整できる「Portrait light」、画面を読みながら視線を合わせることをサポートする「Eye contact teleprompter」、ユーザーが常にフォーカスされた状態を維持する「Voice focus」「Portrait blur」といった機能も用意されている。

 もちろんAIアシスタント機能「Copilot」も搭載されている。起動はキーボードの「Copilotキー」を1回タップするだけだ。

 シンプルながら強力にパーソナライズされたデザインに進化しており、OpenAIのGPT-4oなどの最新モデルにアクセスすることでより自然な会話が可能になる。

サードパーティーアプリとも連携

 Copilot+ PCは、様々なサードパーティー製アプリケーションとも連携し、AIを活用した機能を提供している。

Adobe Photoshop

 アドビとのパートナーシップにより、「Photoshop」「Lightroom」「Express」などの主要アプリがCopilot+ PCに最適化されて提供される。

DaVinci Resolve Studio

 動画編集アプリ「DaVinci Resolve Studio」ではNPUを活用した「Magic Mask」機能により、人物やオブジェクトに簡単にビジュアルエフェクトを適用できるようになった。

CapCut

 同じく動画編集アプリ「CapCut」では、NPUを利用した「Auto Cutout」機能を使うことで、ワンタッチで動画の背景を切り抜くことができる。

Cephable

 アクセシビリティー向上アプリ「Cephable」では、NPU対応の新しいカメラパイプラインにより、頭の動きや表情などのインプットがより高速かつ的確に認識されるようになる。

LiquidText

 ドキュメント管理アプリ「LiquidText」では、NPU上で完全にオンデバイスで動作するAI機能を利用することで、データをプライベートに保ちながら文書に素早くスマートな注釈を付けられるようになる。

djay Pro

 DJアプリ「djay Pro」では、オーディオ分離機能「NeuralMix」がNPU対応となり、楽曲からボーカルのみを抜き出すといった高品質なステムの分離が可能になっている。

Surfaceからは2モデルが登場

Surface Pro and Surface Laptop

 Copilot+ PCは、マイクロソフトのSurfaceシリーズをはじめ、Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、Samsungなどの大手OEMメーカーから6月18日より発売される。価格は999米ドル(およそ15万6300円)からで、同等のスペックの従来モデルと比べて最大200ドル(およそ3万1300円)安くなっている。

 「Surface Laptop」は、狭額ベゼル、ブリリアントなタッチスクリーンディスプレイ、AI強化カメラ、プレミアムオーディオ、触覚フィードバック対応タッチパッドを備えた、パワフルでモダンなデザインのラップトップ。13.8インチと15インチの2つのディスプレイサイズと4つのカラーバリエーションから選択可能。

 15インチではローカルビデオ再生で最大22時間、13.8インチでは最大20時間のバッテリー駆動を実現している。

 「Surface Pro」は、速度とバッテリー寿命が向上し、新しいAI体験を可能にする、フレキシブルな2-in-1ラップトップ。オプションでOLED HDRディスプレイと、Windows Studio Effectsに最適な超広角カメラを搭載できる。

 着脱両用で設計された初の2-in-1キーボード「Surface Pro Flex Keyboard」や、静かで触覚フィードバック対応のタッチパッドも備えている。

PCの要件を再定義か

 マイクロソフトは、Intel、AMD、NVIDIA、Qualcommなどの主要パートナー企業と緊密に連携し、クラウドとデバイスが協調して動作する、より豊かで没入感のあるAI体験の実現を目指している。

 将来的には、これらのパートナーシップを通じて、より高度なAIチップとの組み合わせや、NVIDIAのGeForce RTXやAMDのRadeonなどの強力なビデオカードとの連携など、さらに多様なCopilot+ PC体験が提供されていくことだろう。

 今回発表されたCopilot+ PCは、ハードウェア、ソフトウェア、ユーザーインターフェースのすべてにおいてAIを取り入れることで、PCの概念そのものを変えようとしている。

 検索、作文、お絵描き(画像生成)、計算など、PC上のすべての作業がユーザーとAIとの協働作業になるのだ。当然テキストだけではなく音声や動画によるナビゲーションも視野に入っているだろう。

 今回ハードウェアとして発表したことはAI時代におけるPCの要件を再定義する意図もあるだろう。

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