重なる領域でも異なる立ち位置
富士通は、2024年2月、コンサルティングサービス「Fujitsu Wayfinders」を新たに開始した。ビジネスコンサルティングとテクノロジーコンサルティングの両軸から展開。富士通が中期経営計画で推進している事業モデル変革の「最後のピース」にFujitsu Wayfindersを位置づけるとともに、Fujitsu Uvanceの先導役になるとも語る。さらに、富士通では、コンサルティングスキルを持つ人材を、現在の2000人から、2025年度までに1万人規模に拡充する計画も明らかにしている。
富士通の時田社長は、「富士通は、ビジネスコンサルティングに加えて、もともとの強みであるテクノロジーによるコンサルティングを組み合わせることで、新たな事業機会の創出を狙う」とする。また、富士通の磯部武司副社長 CFOは、「社内でのリスキリングや外部採用により、短期間で1万人体制にしていく。コンルティングケイパビリティの強化に向けて、投資のアクセルをしっかり踏むことが大切であり、このリソースがしっかりと育てば、Fujitsu Uvanceの売上げ拡大につながる」とする。そして、富士通の大西俊介副社長 COOも、「Fujitsu Wayfindersは、富士通が、本格的に、本気を出してコンサルティングビジネスに取り組む宣言になる」と語る。
気になるのは、RidgelinezとFujitsu Wayfindersの棲み分けは、どうなるのかという点だ。これに対して、Ridgelinezの今井CEOは、「富士通のFujitsu Wayfindersとは完全な棲み分けは難しい」と語る。さらに、「極論すれば、提供するメニューは、最終的には同じようなものになるかもしれない。むしろ、オーバーラップする部分があったほうが、協業がしやすいというメリットが生まる」と語る。
だが、基本的に異なる部分があるとも指摘する。それを「立ち位置」の違いだと、今井CEOは表現する。
ひとつは、富士通が提供するコンサルティングは、これまで経験からも、テクノロジーに重心が置かれたものになるのに対して、Ridgelinezはビジネスコンサルティングに重心を置くという違いだ。
もうひとつは、Ridgelinezではクライアントファーストを打ち出し、富士通をはじめとしたあらゆるベンダーに対して、フラットな関係を持っている。だが、Fujitsu Wayfindersでは、Fujitsu Uvanceで提供するエンジニアリングやアプリケーション、ミドルウェア、OS、ハードウェアを活用することが前提になるという点だ。
まさに立ち位置の違いで、ビジネスの違いが生まれることになる。
こうしてみると、Ridgelinez とFujitsu Wayfindersの関係も、まさに「出島」の関係といえそうだ。
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