このページの本文へ

富士通が国内データセンターに「Oracle Alloy」導入、富士通のクラウドサービスとして提供へ

富士通がソブリンクラウドで米オラクルとの協業を決めた“3つのポイント”

2024年04月19日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 富士通と米オラクルは2024年4月18日、日本市場においてデータ主権要件に対応するソブリンクラウドの提供を目的とした戦略的協業を発表した。

 この協業では、富士通が「Oracle Alloy」を国内データセンターに導入し、「Fujitsu Uvance」のクラウドサービスとして、富士通独自の運用コンサルティングサービス、マネージドサービスなども付加しながら、2025年度より提供を開始する。クラウド基盤の運用は富士通、オラクルの両社で行う。

 同日開催された「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」のキーノートには、富士通 執行役員の古賀一司氏が登壇。日本オラクル 社長の三澤智光氏との対談形式で、自社が提供するクラウドサービスの基盤にAlloyを採用した理由や、今後の展開について語った。

「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」のキーノートで登壇した、富士通 執行役員 SEVP システムプラットフォームビジネスグループ長の古賀一司氏(左)、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏(右)

富士通が「Oracle Alloy」を採用した3つのポイント

 富士通の古賀氏は、Alloyの採用理由として次の3つのポイントを挙げた。

 1つめは「顧客がクラウド移行を躊躇している要因を大きく低減できること」。一般的なパブリッククラウドとは異なり、Alloyならば富士通が運用する国内センターに設置して、富士通のガバナンスが効いたかたちでサービスを運用できる。そのため、ミッションクリティカルなワークロードをパブリッククラウドで運用する際の課題、たとえば「クラウド環境のアップデート(パッチ適用)タイミングがコントロールできない」といった課題を解決できる。

 2つめは「ハイパースケーラーと同等の機能をタイムリーに提供できること」。Alloyを採用することで、オラクルがパブリッククラウドの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」で提供する100以上のサービスを顧客に提供できる。さらに、サービスの強化や追加に関しても、OCIとほぼ同等のタイミングでAlloyに適用されるという。2016年に富士通の国内データセンターでOracle Cloudサービス(旧世代)を提供した際はこれが実現できなかったが、今回は確約が得られたと古賀氏は説明した。

 そして3つめが「データ主権といったソブリニティへの対応」だ。古賀氏によると、富士通ではこれまでさまざまなクラウドベンダーと日本におけるソブリン要件の対応検討を行ってきたという。「しかし、その要件に対応する実装は非常に難しい状況にあった」(古賀氏)。今回のAlloyにおいては、富士通とオラクルが共同で運用を行う形態をとる。これにより、たとえば「運用は日本国籍のスタッフが行わなければならない」といった厳しい要件が求められたとしても、富士通が運用のフロントに立つことで対応が容易になる。

今回の協業を通じて提供開始するクラウドサービスの概要(富士通資料より)

 なお古賀氏は、富士通がAlloyの採用を検討するうえで、特にデータの機密性(ソブリン要件)に関連して「必須とした要件が100以上あった。その要件に対しても(オラクルは)真摯に向き合い、取り組んでいただけた」と明かした。この点について日本オラクルの三澤氏は、EUとは異なり日本ではまだ標準的なソブリン要件が決まっていない状況だが、今回は富士通が求める要件を基準として、従来のAlloyで不足していた部分の追加実装などの対応を行ったと説明した。

 またオラクルは同日、日本市場に対して今後10年間で80億ドル(およそ1.2兆円)以上の投資を行う計画を発表したが、その中では、日本を拠点とする運用人員やサポートエンジニアリングチームの大幅な拡大も行うことを明らかにしている。

まずは国内顧客のクラウド移行を推進、グローバル展開も視野に

 富士通では、今回発表したサービスを、Fujitsu Uvance「Hybrid IT Service」のクラウドサービスとして、2025年度から提供開始する。まずはオンプレミス環境で「Oracle Database」を運用している顧客に対して、富士通が持つミッションクリティカルシステムのノウハウや知見を生かしながら、既存資産を最大限活用したかたちでクラウド移行サービスを提供していきたいと、古賀氏は説明した。

 「まずは日本国内においてサービス提供をしっかりと軌道に乗せていきたい。富士通では現在、数千の顧客に対してオンプレミスのOracle環境をサポートさせていただいているが、そこからのクラウド移行をしっかりとサポートする。また、経済安全保障関連の法案を見据えたサービスの拡充も図っていく。さらに、社会課題の解決やビジネス変革の加速に向けてAIを活用するうえで、データに強いパートナー各社と共に、データ主権要件に対応できる“ソブリンAI”サービスのビジネス化を推進していきたい」(古賀氏)

富士通 古賀氏。今後もテクノロジーパートナーとしての協業を深化させ、将来的には富士通製ArmプロセッサやLLM「Fujitsu Kozuchi」を活用したOCIサービスの共同開発などにも取り組みたいと期待を述べた

 さらに、日本国内で蓄積したノウハウと知見に基づいてこのビジネスをグローバルに展開していきたいと抱負を述べたうえで、米国や欧州でソブリンクラウドを提供しているオラクルのノウハウもぜひ共有いただきたいと語った。

 また富士通では、日本国内でソブリンクラウドを提供したいと考えるクラウド事業者に対して、再販あるいは共同事業を行うことも検討しているという。これは、Alloyの導入には一定規模の投資(最小構成で12ラック、年額100万ドル程度と推測される)が必要となるためで、古賀氏は「大小さまざまな事業者があるが、一緒にソブリンクラウドを提供できるようサポートしていきたい」と述べた。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード