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ASCII Power Review 第241回

手ブレ補正も初搭載です

富士フイルムの4020万画素APS-Cコンパクトカメラ「X100Ⅵ」実機レビュー

2024年03月07日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 富士フイルムが「X100Ⅵ」を発表した。クラシカルなデザインに、EVFと光学ファインダーを切り換えられる「アドバンスト・ハイブリッド・ビューファインダー」を搭載したAPS-Cレンズ一体型デジカメ「X100」シリーズの最新モデルだ。

 前モデルに比べて2倍の解像度4020万画素の撮像素子を搭載し、シリーズ初の手ブレ補正も内蔵した。富士フイルムから試用機を借りたので、実際に写真を撮ったレビューをしていく。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

市場想定価格は28万円前後で3月下旬発売の予定。ボディーカラーはブラックとシルバーをラインナップ。

EVF+光学のファインダーに
ダイヤル操作が楽しい

 往年のレンジファインダーのような角型のデザインに、絞りリングやダイヤルのアナログな操作感は古くからのカメラ好きにはたまらない。シャッタースピードダイヤルの小窓に配置されたISO感度ダイヤルもマニア心をくすぐる。

 グリップは小振りだがレンズを含めたボディー自体がコンパクトなので長時間撮り歩いても苦にならない。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

128×74.8×55.3mm。なおレンズ部やファインダー部を除いた最薄部では33.2mmになる。重量はバッテリーとメディア込みで521g。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

絞り、シャッタースピード、露出補正の数値が一目で確認できるのもアナログダイヤルのメリット。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

上面の製品ロゴや刻印にもクラシカルな雰囲気が漂う。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

ISO感度はシャッタースピードダイヤルの外周を引きあげて変更するレトロな機構。

 絞りリングは1/3EV刻みでクリックできる。シャッタースピードダイヤルは1EV刻みだが、コマンドダイヤルを併用することで1/3EVでの設定が可能。シャッタースピードダイヤルを「T」に、ISO感度と露出補正のダイヤルは「C」のポジションにすると通常のデジカメのように前後のコマンドダイヤルだけで操作もできる。とはいえアナログダイヤルの感触を楽しみながら撮影するのが粋というものだろう。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

アナログダイヤルでは設定ができない1秒より長いシャッタースピードや拡張のISO感度、3EV以上の露出補正はコマンドダイヤルでの操作になる。

 シャッターボタンも昔ながらの形状で、半押しは適度なストロークがあり、そこから押し込むと軽いタッチでシャッターが切れて快適だ。またレリーズ穴でちゃんと汎用のケーブルレリーズが使用できるのもさすがの作りである。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

レリーズ穴があってもケーブル使用不可の機種がある昨今、動作してくれるのはうれしい。

 背面はボタン整然と並ぶシンプルな配置。十字キーも兼ねる「フォーカスレバー」は小さいわりに指掛かりがよくスムーズに操作することができる。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

ボタン類は小さめだが、配置に余裕があるので操作はしやすかった。

 背面の162万ドット液晶ディスプレーは上方90度下方45度のチルト式。収納時は背面がフラットになるあたりにはデザインへのこだわりが感じられる。撮影時や再生時はタッチ操作が可能だが、メニュー画面でのタッチ操作には非対応だ。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

液晶ディスプレイ収納時はチルト式には見えないフラットな形状になる。

 ファインダーは前面のレバーを操作することで369万ドットEVFと光学式が切り替えられる。また光学式のときにはファインダー右下の測距点部の拡大画像の表示も可能だ(エレクトロニック・レンジファインダー、略すとERF)。

 精細感や利便性などの面ではEVFのほうが優れているといえるが、光学ファインダーを通して肉眼で覗く景色のほうが自然で、どこか安心した気持ちになるから不思議だ。撮影スタイルやその日の気分によって使い分けながら写真を楽しめるのもハイブリッドファインダーならではである。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

カメラを構えた状態でレバーを右に倒すとEVFと光学式が切り替わり、光学式のときに左に倒すとERFが表示される。ファインダー窓を正面から見るとEVF時はシャッターが閉じ、光学式では開いているのがわかる。

 バッテリーの公称撮影可能枚数はノーマルモードEVFで 約310枚、光学ファインダーなら約450枚とある。実際にEVFと光学ファインダーを切り換えながら撮り歩いてみたが、RAW+JPEGで300カット撮影した時点でバッテリー残量メモリが残り一つだった。

 メディアはSDのシングルスロットでUHS-Ⅱには非対応。とはいえ大量に連写撮影をする性格のカメラではないので特に問題はないだろう。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

バッテリーとメディアは同室。使用しているバッテリーの「NP-W126S」は量販店価格7340円程で購入できる。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

端子類はグリップ側の側面に。上からマイクとUSB-C、HDMIマイクロが並ぶ。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

左側面にはフォーカスモードの切換スイッチを備える。

4020万画素になって精細感向上
シリーズ初の手ブレ補正機構搭載

 撮像素子は前モデル「X100Ⅴ」(2020年発売)の2620万画素から4020万画素と大幅に高解像度化された。おそらく2022年に発売されたミラーレス機「X-H2」や「X-T5」と同じ撮像素子だろう。高解像度化ではレンズ性能が追い付くかという心配もあり、実際「X-H2」と「X-T5」では推奨レンズを公表していた。

 レンズのスペックは初代「X100」(2011年発売)から焦点距離23㎜(35mm換算35mm相当)開放絞りF2と変わらないが、実は前モデル「X100Ⅴ」から将来の高画素化にも対応する新設計のレンズが搭載されている。

 そのおかげもあり、撮影した写真を見ると開放絞りでの光量低下や像の乱れ、最小絞りでの回折現象もほとんど気にならない。ピント部を拡大して見ると4020万画素の解像力を存分に引き出しているのがわかる。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

遠景の定点撮影で絞り値を変えて撮影。いずれも遜色のない画質で、開放F2でも周辺光量低下は少ない。以下F5.6とF16

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

F5.6

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

F16

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

写真の一部を拡大して比較。開放から中心部はシャープで、F5.6まで絞ると周辺まできっちり解像される。最小のF16でも画素数から考えると回折現象の影響はごくわずかといえる。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

何気ない写真だが、後から見ると細部まで精細に解像されていて驚いた。F8・1/170秒・ISO125。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

逆光も試してみたが、光源を直接写し込んでも大きなハレーションはない。F16・1/60秒・ISO125

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

画像をクロップするデジタルテレコンも搭載しているが、35mm換算50mm相当で約2000万画素、70mm相当でも約1000万画素の解像度が確保できる。これも高画素化の恩恵だ。F8・1/240秒・ISO125。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

50mm相当

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

70mm相当

 高感度は常用でISO12800、拡張でISO51200まで設定が可能。ISO6400程度までは解像感低下もわずかで、常用最高のISO12800でも実用的なレベルだ。拡張感度になると解像感低下が目立つが、そんなときはRAWからAIノイズ処理で現像するのが今時の対処法だ。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

絞りF2・シャッタースピード1/300秒・ISO1600。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

絞りF4・シャッタースピード1/10秒・ISO6400。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

絞りF4・シャッタースピード1/15秒・ISO12800。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

絞りF2.8・シャッタースピード1/17秒・ISO25600。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

絞りF4・シャッタースピード1/40秒・ISO51200。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・以下拡張感度ISO25600・ISO51200。

 X100シリーズとして初のボディー内手ブレ補正を搭載した。効果は約6段分で実際に試しみると、しっかり構えれば1/2秒程度までは比較的ブレを防止できた。スナップでとっさに撮影するようなシーンではさすがにブレやすいが、従来モデルと大差ないサイズのボディーで手ブレ補正を実現したのはお見事である。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

1/4秒で撮影。比較的安定してブレが防止できた。F5.6・ISO125。

富士フイルム「X100Ⅵ」実機レビュー

1/2秒で撮影。確率は下がるがしっかり構えたのでギリギリセーフかと。F5.6・ISO800。

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