社会起業家への支援が地域発イノベーション創出と活性化のカギになる
中百舌鳥イノベーションシンポジウム 〜地域で生む取組がつなぐ社会的インパクト〜
提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市
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社会的インパクトを創出するために必要なこととは
イベントのタイトルでもある「地域で生む取組がつなぐ社会的インパクト」をテーマにしたパネルディスカッションは、大阪産業局スタートアップ支援事業部コーディネーターの野崎麻衣氏がモデレーターを務め、株式会社ATOMica代表取締役Co-CEOの嶋田瑞生氏、大阪公立大学副学長の松井利之氏、そして基調講演に登壇した中村氏の4名が参加して行われた。
嶋田氏は2019年に宮崎県宮崎市で共同創業者としてスタートアップを立ち上げ、コワーキングスペース事業やイベント・プログラムの企画、運営、学生向けインターンシップのコーディネートからスタートアップの地域進出のサポートなど様々な事業を展開している。地域と密着して人と仕事と場所をつなぐ拠点は全国で約30まで広がり、堺市の茶室でも交流会の運営や話題のChatGPTを学ぶプログラムなどを実施している。
「我々はグッドサプライズを通じたWISH(想い・願い・相談)を集め、それをきっかけにKNOT(出会い、繋がり)を各地域に生み出し、人をつなげるというカルチャーを届けるため、デザインの力、運営の力、企画の力、テクノロジーの力の4つを組み合わせて事業展開している」と嶋田氏は話す。
松井氏は大阪公立大学で高度人材育成を担当しており、「多様な地域課題解決に貢献できる都市シンクタンク機能を持つ大学として、持続可能な社会を創生するための研究力を持ち、実社会で活躍できる人材の育成を目指している」と話す。
幅広い学問領域を要する高度研究型大学として中百舌鳥エリアでのイノベーション創出を目指すコンソーシアムとも連携し、自治体や行政、地域企業と共に「イノベーションアカデミー構想」を推進している。また、高度人材育成推進センターでは学生向けのアントレプレナー教育などを15年ほど行っている。中には、海外大学と連携し、地域の社会課題を現地の学生と共に考えるプログラムや、リカレント教育によるリスキリングプログラムなども実施している。
様々なスタートアップ支援に関わってきた野崎氏は、高校生等を対象としたアントレプレナーシップ教育や、シード期のスタートアップに特化したアクセラレーションプログラムの運営などを行っている。その経験をもとに様々な話題でパネルディスカッションは進められていった。
これまでにどのような活動で、社会的インパクトをもたらそうとしてきたかという質問に対しては、松井氏は海外でのプログラムを例に「英語力をつけるのもさることながら、価値観の違う中で自分の強みを生かしながら現地の学生と共にどう解決に導くか、現場経験を積むことが大事だと考えている」と話す。
数々の交流会で地域インパクトを創出してきた嶋田氏からは、「コミュ力がなくても交流会はできる」という意外な意見が出された。「何かを狙って会を運営するより出会いの機会だけを提供する方が上手く人の輪が広がることがある」と言い、実際に新しい事業創出につながった地域での事例を紹介した。
また、中村氏からは、「ソーシャルビジネスはスタートアップも支援者も投資経験が少ないという構造的な課題があり、解消するには両者の間を翻訳する役割を担っている」といった話が紹介された。
1時間におよぶディスカッションは、さらに様々な話題で盛り上がり、最後に社会的インパクトのある事業を育んでいくために大切なことは何か、という質問にそれぞれが回答した。
中村氏は「社会起業家としての活動は難しく、継続するには目標を欲張らず1つに絞って大事に支援していく姿勢を明確にするのがいい」とアドバイスする。嶋田氏は「自分が得意なことだけで支えきろうとせず、専門家とも連携してベストの道を一緒に探していきたい」と今後の活動への思いを語った。
松井氏は「自分が何者で何が提供できて、周りにどんな人がいるのか把握した上で、持っているものは全部使うという考え方をすることで、損失があっても踏みとどまれるのではないか」と話す。また、「インパクト事業にチャレンジする人が増えてくれば、おのずと社会の手も伸びてくる。必ず成功する事例は世の中にないので、いろんなケースから学ぶことが必要である」としながら、「最後はやはりこの地域で何かしたいと思える愛情をどう育むかではないか」と意見を述べた。
野崎氏は、「ソーシャルインパクトは一時期のIPOを目指す方向から変化しており、今後はインパクト投資が実際に資本市場で成功する実績を作るアセットアロケーションが重要になるかもしれない」とコメントし、パネルディスカッションを締め括った。その後も会場は参加者との交流で大いに盛り上がり、茶室に新たな縁が生まれる機会へとつなげられていた。
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