前へ 1 2 3 次へ

8年近くの知見、ソリューションをソラコムの二人が語り尽くす

見える化、監視の次は? ソラコムが考える製造業IoTのメリットと課題

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 IoTプラットフォームを手がけるソラコムが長らくフォーカスしている業界として製造業がある。工場でのIoT化はどうやって実現するのか? モノづくりの現場でなぜIoTが必要なのか? IoTがもたらすメリットと課題とは? 製造業での経験を持つソラコム ソリューションアーキテクトの井出尭夫氏とソラコム エバンジェリストの松下享平氏に話を聞いた(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

求められるのは一貫して「可視化」 でもPLCはデータ活用前提ではない

大谷:まずは製造業IoTというジャンルで、ソラコムが手がけてきたソリューションについて聞かせてください。

松下:ずばり可視化です。われわれもIoTに7~8年くらい取り組んできましたが、製造業における「今見えていない情報を見てみたい」という可視化のリクエストは、継続的にあります。

たとえば、生産ラインが止まってしまった場合、止まってしまった事実は確認できていて、なぜ止まったのかを知りたいということがあります。でも、データ自体はPLC(Programmable Logic Controller)で取得できるので、これをクラウドに送信すれば可視化は可能です。PLC内にログとして残っていても、リアルタイムでチェックできず、活用されていないという状態です。

大谷:製造業にあまり馴染みがないのですが、PLCとはなんでしょうか?

井出:製造現場の機械は、PLCというコントローラーで操作します。PLCは基本コンピューターなので、プログラムに従って機械を動かします。機械との間はさまざまな形式で接続されており、制御信号と応答信号が行き来しています。

松下:もしPLCがない場合は、人間が手動でボタン操作するイメージになります。プレス機なら、人がボタンをポチッと押して、上げたり、下げたりします。

井出:でも、PLCがあれば、この作業をプログラムに従って操作してくれます。センサーで高さを検知して、「これくらいの高さからプレスする」という指示も可能です。従来、人間が目視でやっていたことが、PLCならプログラムで自動化できます。

機械の横にある制御盤にはだいたいこのPLCが収納されています。だから、機械からの信号はすべてPLCに送られてくるわけで、データが欲しければPLCから取得すればよいという話になるわけです。

PLCについて説明するソラコム ソリューションアーキテクトの井出尭夫氏

松下:工場におけるFA(Factory Automation)で生産設備を自動化するための装置としては、十中八九このPLCの話になります。だからこそ、製造業の業務効率化や作業品質向上を考えるとき、PLCからのデータ取得と活用が論点になります。

大谷:このPLCは、データ活用をする前提で利用されているものなんですか?

松下:私の見解では、データ活用が前提ではないと思います。元々、機器を高速かつ精密に操作するコントローラー(制御装置)として作られたものなので、データを長期保持するためにストレージを持っているとか、データ出力を前提としているわけではないんです。そういった機能は後付けするものになります。

PLCのデータ取得を妨げる課題感とセンサーの必要性

大谷:なるほど。工場の見える化にはPLCとの連携が不可欠。でも、PLCはデータ活用を前提している訳ではないので、後付けが必要。どうやって後付けするのでしょうか?

井出:ちょっと角度を変えて、IoTがどのようにPLCのデータを取得しているか説明しますね。

ボックスに収められているPLCを操作するために、通常はボタンやタッチパネルを使います。すなわち、PLCには外部から操作できるインターフェイスやプロトコルがあります。PLCからデータを取得するのは、このインターフェイスやプロトコルを利用します。

具体的にはIoTゲートウェイという装置がPLCにコマンドを発して、返り値を得ることでデータを取得し、クラウド側に送ります。だから、デバイスゲートウェイはある意味プロトコル変換器と言えるかもしれません。

FA仕様のGUGENの小型ゲートウェイ(右)。SORACOMのeSIMが搭載されており、PLCに取り付けするだけですぐにリモート監視をスタートできる

大谷:これはIoTという概念といっしょに生まれた装置なのですか?

井出:もともと製造現場の見える化に関しては、SCADA(スキャダ)という仕組みがあるのですが、これらはオンプレミス向けのものが多いのです。これがクラウドまで延伸したのが、製造業におけるIoTの1つの形です。

大谷:であれば、PLCのデータを取得し、SORACOMでクラウドに送信できる装置を設置すれば、クラウドで分析できるのですね。

井出:ただ、PLCには悩ましいところがあります。たとえば、何百度の高温となる熱処理炉とかも、このPLCで制御するんです。PLCはデータをとるための装置ではなく、あくまで制御するための装置なので。

でも、これがネットワークにつながることで、外部からの不正利用のリスクが高まります。極論すれば人命に関わるわけです。そのため時には、現場からは「PLCと得体の知れない装置を同居させるのはまかりならん」といった意見も出ます。

こういう場合は、PLCからデータを得るのではなく、直接センサーでデータをとります。例えば、LTEを搭載したセンサーを外付けすれば、PLCの構成やネットワークに影響なくデータを取得できます。

松下:そういう意味では、このAmazon Monitron(以下、Monitron)も外付け型センサーの類です。加速度センサーとバッテリー、BLEが搭載されているので、機械に取り付ければ、振動データを取得。デバイスゲートウェイを介して、データを送信して、AWS上で可視化できます。

ソラコム エバンジェリストの松下享平氏とAmazon Monitron

大谷:これは故障予知や障害検知が目的なんですかね。

松下:ポンプやベルトコンベヤーを動かすモーター等、 回転機構を持つ機械の場合、劣化すると振動が大きくなります。軸受けが摩耗ですり減ったりすると、すき間が大きくなるからです。そのため、振動音や間隔が大きくなったら、機械や部品交換になるのですが、これまでは人間が音を確認したり、触診するみたいなアナログな検査だったんです。

大谷:機械の不調を心の目で見るみたいな(笑)。

松下:そうですね。確かに機械から稼働状況のデジタルデータが直接得られたら一番いいんでしょうけど、先ほど話したようなPLCにつなげたくないとか、そもそもインターフェイスがないといった場合には、センサーを直接装着して、データを収集するというソリューションになります。

前へ 1 2 3 次へ

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています

過去記事アーカイブ

2024年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2023年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2022年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2021年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月