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文化庁の見解と方針公表を受け、昨年8月に続く説明会を開催

生成AIと著作権、これから留意すべきことは? 日本弁理士会が論点整理

2024年02月02日 08時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本弁理士会は2024年1月31日、「生成系AIと著作権の論点整理」と題する記者説明会を開催した。昨年8月にも同様の説明会を開催したが、その後の変化を踏まえ、生成AIがクリエイターの創作活動や権利にどんな影響を与えるのか、利用者はどんな点に留意すべきかといった点についてあらためて説明した。

 日本弁理士会著作権委員会 委員長の高橋雅和氏は、「著作物性判断や類似性判断はもともと難しいものだったが、生成AIの登場によってさらに複雑になっている。創作記録がないと判断できないため、なにを目的に、どのAIを使い、どのように創作するかといった『戦略』や、創作の『過程』を記録することが大切になる」と説明。「文化庁による素案(後述)を基にすると、生成AIによる著作物は創作過程がわからないかぎり、著作権が発生するかどうかが判断できない。また、生成AIによる創作物が、自身がまったく認識していなかった著作物の著作権を侵害してしまう場合がある」などと指摘した。

日本弁理士会では、“生成AI時代”に適応した弁理士業務の検討と、具体的な取り組みを進めている

日本弁理士会 著作権委員会 委員長の高橋雅和氏、日本弁理士会 会長の鈴木一永氏

自身の創作物を生成AIに学習させないよう「拒否」できるか?

 文化庁 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会では、2024年1月15日に「AIと著作権に関する考え方について(素案)」を開示。現在はパブリックコメントを募集している段階にある。

 高橋氏は「『素案』ではあるが、文化庁の見解や方向性がある程度明らかになった」としたうえで、次のような見解を述べた。

 「生成AIの学習(トレーニング)段階において、創作物を学習されることを拒否する意思表示は、基本的には認められない方向性だ。ただし、学習阻害技術の活用は否定されていないため、(クリエイターは)これを活用することができる。すでにイラストの学習阻害技術として『Glaze』や『Mist』がある」「しかしその一方で、すでに『学習阻害技術を解除する技術』も出てきており、イタチごっこのようになるだろう。言い換えれば、効果的な学習阻害技術という新たな技術ニーズがあるとも言える」

 また、創作者や企業が「創作物を学習に用いないでほしい」と考える場合、生成AI開発企業に対して「別の形で提供したり、販売したりすることを前提に『学習しないでほしい』と言うことができるだろう」と述べる。「AI開発企業はより良い生成AIを開発したいと考えており、新聞社などから正規にデータを入手(購入など)する方法などが想定される。法的な結論は出ていないが、これを禁止する規制はない。当事者間では有効な契約が成り立つとの見方ができる」。

文化庁の素案では、生成AIに対する「学習拒否」の意思表示は認められない方向性。著作権法 第30条の4(「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」)では、その一つとして「情報解析」目的での著作物利用が認められている

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