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印南敦史の「ベストセラーを読む」 第22回

「少しでも自由になるお金を」年金もらって“ホームレス”に

2024年01月25日 07時00分更新

文● 印南敦史 編集●ASCII

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ホームレスには年金をもらっている人もいる

 代々木公園でカレーを二杯食べる→十四時から都庁下で食料の配給→夜八時頃キリスト教系団体がパンを配りに来る→夜九時頃「スープの会」がスープを配りに来る。(74〜75ページより)

 このようにさまざまな団体が食料を配りに訪れたり、炊き出しを行ったりしているのである。そして時間を持て余したホームレスの多くは、各所を移動して食べものを確保する。本書では、墨田区・白鬚橋の炊き出しに始まり、都庁下、池袋、上野公園などを巡回する「一日七食炊き出しツアー」のことも描写されている。

 「世間の人たちはホームレスのことを悲惨だと捉えているでしょう。もちろんそういう人もいるんですよ。だけども、今となってはそういう人のほうが少ない。昔はそういう人ばっかりだったけど、辛い人は生活保護に行けるようになった(二〇〇八年の年越し派遣村を機に)んだから。今でもホームレスやっている人っていうのは、僕らみたいに年金をもらっている人が多いんですよ。
 上野公園で暮らして十八年というホームレスの「コヒ」が公園内のベンチに座り、スーパーで買ったキムチをツマミに焼酎を飲みながら話す。(152ページより)

 この点については、わかりやすく解説されている。

 保険料の納付月数が短く受給額が少ない場合(3万円/月で貯蓄がないなど)、多くは生活保護を受けることになる。だが、厚生年金にも加入していて、月に14万円程度を受給できる人だとしたら、生活保護は受けられないし、そもそも部屋を借りられる。では、7万円〜9万円/月の人が生活保護を受けるとどうなるだろう?

 月に十二万七九二〇円(台東区在住65歳単身者の場合)の生活保護費のうち、少なくとも家賃(住宅扶助)として五万三七〇〇円が差し引かれ、生活扶助は七万四二二〇円となる。そこから「共益費・管理費・光熱費」もかかってくるため、自由に使える金がホームレス時よりも減ってしまうという現象が起きてくる。
 「だったら路上でもいいから少しでも自由になる金を使えたほうが俺はいい」
 そう考える人がホームレスになっているのだ。実際にホームレス生活をしていると分かるが、路上で暮らしながら月七万〜九万円の収入があれば相当リッチな生活ができる。だって、私は三千五百円/月でもなんとかなっているのだから。(153ページより)

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