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独自の視点と実行力で新しいものづくりに挑み続ける、富士高周波工業株式会社

〜堺市を拠点に独自ポジションを築き、国内外から注目を集めるイノベーティブな企業たち〜

特集
堺市・中百舌鳥の社会課題解決型イノベーション

提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市

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常に新規事業の開拓を続ける

 富士高周波工業の主なクライアントは大手メーカーで、開発案件の約8割を占めている。そのうち自動車関係が半分を占め、日本の全自動車メーカーから受注実績があるという。とはいえ、レーザ焼入れを始めた最初の2年間は全く業績が上がらず苦戦した時代もあった。

「社員時代と同じように働けばいいと思っていたのですが、やはり新規で事業を始めるなら普通の3倍は働かないといけない。成功している会社のトップはそれが当たり前ですし、経営者なのである程度時間が自由になるので、そこでバランスを取ればいいと考えるようになりました。何よりも事業を成功させたいという思いがありましたし、ものづくりが好きだから続けられたというのはあります」

 レーザ焼入れの事業を徐々に成長させていった後藤氏は、そこに留まらず次の新規事業を開拓し続けている。新しい技術を探して勉強会や展示会に参加し、海外で技術関連の国際学会に出席することもあるという。

「様々な情報をもとに築いた技術で開発案件を受け、2〜3年で先行利益を上げて次の新しい技術に投資するというスタイルを15年間続けており、日本でほとんどプレイヤーや競争相手がおらず、その上で社会的課題を解決できるという視点で常に新しい技術を探し続けています。具体的にはレーザ焼入れの次にレーザクラッディングを導入し、現在は第4段階ではその技術を応用して、世界で数台しかない製造専用3Dプリンタを導入した新規事業開拓を行っているところです」

工場内には国内に数台しかないという製造業用機器を導入している

 後藤氏は現在、3Dプリンタによる新規事業を含めて5つの事業を同時に進めている。一つは島根県出雲市に同社初の地方営業所を出すことで、2024年6月からはインドネシアでレーザ焼入れ事業を始めることも計画している。さらにものづくりに関連するECサイトや設備事業をスタートさせる予定だが、各事業の社長は若手を採用して一緒に事業を行っていく。

「世間は若い人材が不足しているといいますが、事業をやりたいという若手は一定数いて、募集すればけっこう見つかります。例えば出雲市で事業所を任せようとしている人物は将来社長をやりたいという思いがあり、家族と住んでいた広島県からトレーニングするために単身で堺市にやってきて、すでに営業活動を始めています」

ブルーオーシャンの製造業は世界で勝てる確率も高い

 日本の製造業は今や世界から遅れを取り、大手メーカーが苦戦を強いられているというニュースをたびたび目にする。そうしたことから製造業を敬遠する声もあるが、後藤氏は日本の製造業こそスタートアップとして世界で勝てる要素があると話す。

「当社が手掛ける焼入れの技術は、世界に対して負けないメイドインジャパンというブランドがあり、ある程度実績があれば世界に進出しても勝てる要素は十分にあります。そこでスタートアップが出てこないのは、ITとは異なり事業を立ち上げるのに設備資金として1億から2億はかかるからで、当社もレーザ焼入れ事業を始める時に、最初の補助金を堺市に出してもらうことでスタートできたという経緯があります。ですが製造業はブルーオーシャンで、急には儲からないけれど、技術を真面目に積み重ねれば成長する確率は上がりますし、世界で勝てるスタートアップを立ち上げるなら製造業だと私自身は思っています」

 製造業に対する思い込みを変える発想とアイデアを次々に実現する後藤氏に、さらに将来に向けた目標を聞いたところ、高齢者が働き続けられる工場を作りたい、というまたもや驚きのアイデアが飛び出した。

「私の祖母が90歳を超えても働き続けていたように、ものづくりの現場は長い間積み重ねられてきた経験を活かせます。技術を持つ中高年世代を採用して、工場の中にはマッサージ器や憩いの場があって、好きな時間だけ働くというようにすれば、人材不足の問題も解決できるかもしれませんし、いずれにしても工場を誰もが働きやすい環境にすることが大事だと私は思っています。そうすることで若い人や国内外から幅広い人材が集まるようになりますし、ものづくりの良さを知ってもらう機会にもなるのではないでしょうか」

 独自の視点と発想で、堺市を拠点に今後も新しいものづくりに挑戦し続けていくという後藤氏が、どのような技術に着目し、どのような事業を開拓していくのか、引き続き注目していきたい。

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