ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第754回
インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ
2024年01月15日 12時00分更新
Pentiumの置き換えにあたる
Core Mobile Processor Series 1
次がCore Mobile Processor Series 1である。要するにCeleronの置き換えであるIntel Processorの上位にあたる(つまりPentiumの置き換え)、ということだろうか?
15W枠のノート向けで、Minimum Assured Power(要するにcTDP Min)も12Wと高めなので、従来のY SKUには利用できない。Core Ultraも20Wと言っているので、Y SKU向けは今年末(?)登場予定のLunar Lake待ちになるのだろうか?
Core Mobile Processor Series 1のSKU一覧は下の画像で、Intel Processorと異なりこちらはCore 7/5/3(iは付かない)がラインナップされる。
Core Mobile Processor Series 1のラインナップ。ビデオカードは利用できない。SSDもPCIe Gen3接続となるので少し性能的には不満があるが、それが欲しければCore Ultraに移行しろということだろう
ただ最上位のCore 7 150UでもPコア×2+Eコア×8ということからわかるように、第13世代CoreプロセッサーのU SKUのものの動作周波数を若干向上させたような構成になっている。プラットフォーム構成も第13世代CoreのU SKUと同じだ。価格は未公表だが、おそらくかつてのPentiumよりは上がっており、Core i3~i5グレードの値付けになっているものと思われる。
CPUクーラーが付属する
Kなしのデスクトップ向けRaptor Lake Refresh
3つ目がKなしのデスクトップ向けRaptor Lake Refreshである。まずTBPが46/60/65Wがこの7製品、内蔵GPUを無効化したF SKUが4製品、それとTBP 35Wが7製品の合計28製品がラインナップされている。とりあえずCore i5/i7/i9に関しては、すでに出荷済みであるK付きモデルの下位に位置する格好である。
TBP 35Wが7製品。i9-14900TでもPL2が106Wで、このあたりは第13世代から変化がない。同じプラットフォームのままスムーズに移行できそうだ。もっとも移行してメリットがどこまであるのかは疑問だが
全製品ともTBP、つまりPL1が65W以下になっていることで空冷クーラーで十分冷やせるという判断らしいが、Core i9-14900やCore i7-14700のPL2は219Wとけっこうなもので、もちろん瞬間的な数字なので熱的には大丈夫といえば大丈夫なのだろうが、わりと早いタイミングで熱容量的に飽和しそうであり、実効性能に影響しそうな感じがする(水冷クーラーなどを別に用意すれば済む話ではあるが)。
それよりも気になるのが、TBPが46/60/65Wの7製品と35Wの7製品の一番下にさりげなく(?)追加されたIntel Processor 300/300Tである。Intel Processor 300の構成を見ると、Pentium Gold G7400の後継といったあたりになる。
動作周波数を200MHzほど引き上げて、価格は77~87ドルが82ドルということで、価格はほぼ据え置き、性能微増といったあたり。Core i3-14100が134ドルなので、性能差と価格差のギャップは妥当といったところだろう。
それはいいのだが、実質Celeronが廃止され、Pentium相当がローエンドになることが改めて確認された格好になる。またPentium Gold G7400Tは77ドルなのに対し、Intel Processor 300Tは82ドルというあたりは、この82ドルをCPUの最低価格として定めた、という強い意思を感じさせる。
そもそもなぜインテルはPentium/Celeronのブランドを排したか? といえば、この2つが格安CPUブランドとして定着してしまい、いかに性能や機能を向上させてもCeleronブランドを冠する限り50ドルなどそういう価格でしか売れないことが問題になっているためだ。
実際Alder LakeベースのCeleron G6900は50~60ドルという価格になっている。その一方でプロセスの微細化にともない、生産コストは確実に上昇している。
Celeron G6900はEコアを持たない構成(6 Pコア+0 Eコア+GPU)で、ダイサイズは163mm2ほど。となると300mmウェハー1枚でとれるチップの数は最大でも380個ほどとなる。
一方でウェハー生産コストは、Intel 7はおおむねTSMCのN7と同等のプロセスだが、TSMCの7nm世代(おそらくはN6のものと思われる)は2023年で1枚1万235ドル、2024年で9725ドルという推定があり、丸めて1万とするとつまりチップ1個あたりのウェハー原価は26.3ドルほどになる。
実際にはインテルの製造コストはTSMCより高価とされており、またパッケージングやテスト、出荷などのコストも加味すると50ドルというのはほぼ原価に近いか、運が悪いと原価割れする価格である。要するにインテルはもう50ドルでCPUを売りたくないのだ。
今回最低価格を82ドルまで引き上げたというのは、せめてこの程度のマージンがないとビジネスを続けてくのが難しい(というか、無理)というインテルの主張でもある。果たしてこれにAMDも追従するのか、それともローエンド向け製品を引き続き50ドル台で投入し続けるのか(Athlon 3000Gは49ドルで製品投入され、一応現在もまだ購入できる)、このローエンドの動向が興味ある部分である。

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