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日本市場ではセキュリティ領域とDatadogを“使い倒す”ためのパートナー強化に注力

オブザーバビリティ市場の淘汰が進む中、Datadogが成長を続ける理由

2023年12月26日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 2023年9月にはCiscoがSplunkの買収を発表、11月には投資ファンドのFrancisco PartnersとTPGがNew Relicの買収完了を発表した。オブザーバビリティ市場における淘汰が進みつつある中、Datadogの今期第3四半期における売上は約20億1000万ドル、前年度比31%増と、独立ベンダーとして順調に成長を続ける。

 就任から約4年を経たDatadog Japanのカントリーマネージャー 国本明善氏に、Datadogの成長を支える強みと、日本市場の今後の展開について聞いた。

Datadog Japan カントリーマネージャー 国本明善氏

DatadogのCEOが年次イベントで“ビジョン”を語らないわけ

 Datadogは、2010年にニューヨークにて創業。現在、グローバルで従業員数は5000名以上となり、ユーザー企業数も2万7000社を超えた。最初はインフラ監視からビジネスを開始し、クラウドの流行に合わせて成長を重ねた。転機となったのは2017年にAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)を、2018年にログ管理をサービスラインナップに加えたことだ。オブザーバビリティにおけるインフラ、アプリ、ログの3本柱が揃った。

 この三本柱により、それまでの成長ドライバーであった、ゲームやeコマースといったクラウドネイティブな企業から、大規模なエンタープライズユーザーへとDatadogの利用は広がっていく。

Datadogのイノベーションの歩み

 Datadogが独立ベンダーとして成長を続けている理由として国本氏は、ユーザードリブンなこと、イノベーションを重視していることを挙げる。

 「エンタープライズにも徐々に広げていく中で、ユーザーの声を製品開発に反映してきたのがDatadogの歴史」と国本氏。同社は2023年も多くの新製品・機能を展開したが、長期的なロードマップに沿って製品開発を検討するという方針はとっていない。イノベーションの速いクラウドの世界に合わせられるよう、ユーザーの声を聞き、今必要なものは何か、常にアンテナを張って製品開発をしているという。

 「DASHという年次イベントを開催しているが、普通の企業のCEOならこういった場でビジョンを語ることが多い。でもDatadogではそれを一切やらない。今ある製品と今回発表する製品はこれ、と製品の話しかしない。だからメディアからはあまり評判は良くない」と国本氏は苦笑しながら語る。

 もうひとつ、Datadogが重視しているのがイノベーションだ。同社では、売上の30%以上を常にR&Dに充てている。「イノベーションが止まった瞬間に死んでしまうことを、身を持って感じているからだ。ユーザーに価値を提供して、正当な対価をもらって、それを基に投資をするという堅実な哲学が強み。Datadogを創立した2人が、いまだにCEO、CTOを務め、年間300ぐらいの新機能はCEOのオリヴィエが承認した上で展開される」と国本氏。

 それらのユーザードリブンなイノベーションの例が、2023年8月の年次イベント「DASH」で発表された、生成AIスタックへのオブザーバビリティの拡張だ。Datadogは、大規模言語モデル(LLM)アプリケーションの開発やデプロイ、運用をモニタリングする「AI Stack Observability」、LLMアプリ自体の問題をリアルタイムで検出する「LLM Observability」を発表した。

生成AIスタックをエンドツーエンドで可視化する

 「ChatGPTが登場して、業種や業界、規模を問わずに生成AIの活用が検討されているが、実際にシステムを扱う側からするととんでもない話」と国本氏。これまで、レガシー製品をシフトレフトして、モダンなテクノロジーを採用してきた中で、さらに生成AI独特のITスタックを含めてビジビリティを上げなければいけなくなった企業のニーズに、いち早く対応したという。

 「年次イベントでCEOがビジョンを語らず、分かり辛い会社とたまに言われるが、今あるユーザーのニーズをきちんと捕まえて、製品開発をして、早く世に出す。ブームが起きてもすぐに対応できるようなアジャイルな体制を、5000名規模になっても維持しているというところが非常に強い」と国本氏は強調する。

ユーザードリブンなイノベーションを支える、企業のペースで製品を追加できるプラットフォーム

 Datadogのユーザードリブンなイノベーションを、製品面で支えているのがプラットフォームだ。

 Datadogは、インフラ監視、APM、ログ管理の三本柱に加えて、ユーザーエクスペリエンスの監視、セキュリティ、ソフトウェアデリバリーなど出来ることは多岐にわたるが、これらの多様な製品を支えるコモンサービスを揃える「シェアードプラットフォームサービス」、AIエンジンである「Watchdog AI」が、プラットフォームとして無償で提供される点が、他ベンダーと比べ特徴的だという。

 このプラットフォームは、創業者の2人が、最初に構築したものであり、ユーザー企業がどの製品を利用し始めても、プラットフォームに統合されているため、この順番で導入しなければいけない、この製品を利用するにはこれも導入する必要があるといった心配が一切ない。Datadogのユーザーは、市場の変化に合わせて、適材適所で、必要な製品を自身のペースで選択して導入できる。

Datadogのプラットフォーム

 「統合的にオブザーバビリティを高めるために、プラットフォームの導入を勧めるベンダーもあるが、Datadogのプラットフォームは無償で、インフラの監視1台からスタートしてもコモンサービスが付いてくる。自身のペースで製品を追加して、いろいろな部門に展開しても、同様のユーザーエクスペリエンスで、新しく学習する必要なく利用できる。まずは小さく始めて、ユーザーの中で広げてもらうという戦略」と国本氏は説明する。

 買収戦略も、同一プラットフォームの利点が阻害されないよう、多くのユーザーを抱える大会社は買収せず、取り込みたいテクノロジーの企業を買収して100%プラットフォームに統合する方針をとっている。

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