丸の内LOVEWalker総編集長・玉置泰紀の「丸の内びとに会ってみた」 第10回
ペニンシュラが何十年も探して見つけた最高の地・丸の内で最高の年末年始を! 「ザ・ペニンシュラ東京」の鮫島さんに会ってみた
丸の内LOVEWalker総編集長の玉置泰紀が、丸の内エリアのキーパーソンに丸の内という地への思い、今そこで実現しようとしていること、それらを通じて得た貴重なエピソードなどを聞いていく本連載。第10回は、ザ・ペニンシュラホテルズの広報マネージャー鮫島由里子氏に、ホテルの長き伝統やこだわり、「ザ・ペニンシュラ東京」がこの丸の内にある理由、そして年末年始イベントの見どころなどについて語ってもらった。
「ザ・ペニンシュラ東京」
一族経営の歴史と”最高”へのこだわり
――そもそも、ホテル業界に進まれたのはなぜ?
鮫島「私の母が旅行やホテルが大好きで、旅行から帰ってくるといつもすごく楽しそうにホテルの話をしていたんです。いつか好きな英語を生かして、さまざまな国へ旅行がしたいとずっと勉強していました。その母が、私が16歳の時に病気で亡くなってしまったことでホテルへの想いが強くなったことや、子どもの頃から人と話すのが好きな私にはホテルの仕事が向いているんじゃないか、と母が勧めてくれていたこともあって、この業界を選びました」
――数ある東京のホテルの中でも、ペニンシュラを選んだのは?
鮫島「就活の時に自分なりに調べたり、さまざまなホテルが知りたくて合同説明会にいくつも参加した中で、歴史と伝統、ホテルの独自性という面で、ペニンシュラが別格だったんです。もちろん、その名前は知っていましたが、こんなホテルがあるんだ! と衝撃を受けまして。知れば知るほど奥深いホテルグループなので、そこに惹かれました」
――ザ・ペニンシュラホテルズの歴史を教えてください
鮫島「まず、ホテルグループの歴史から説明しますと、1928年に『スエズ運河より東側で最高のホテルを目指す』という形で、最初に旗艦店となるザ・ペニンシュラ香港を開業しました。親会社は香港上海ホテルズ社といって、現在ヨーロッパ、アメリカ、アジアの12都市に全12軒のホテルを運営しています。
実は、ペニンシュラという名前ではないのですが、その親会社が初めて香港でホテルを開業したのは1868年なので、もう150年以上の歴史があります」
――1868年といえば日本では明治維新! 老舗で長くビジネスされているのに、やたらと数を増やさないのがいいですね
鮫島「それはファミリーオーナー、一族経営による特徴です。香港のカドゥーリー家という一族なのですが、彼らが本当に良いと思っているものを最高のクオリティでお客様にお届けしたい、という思いでホテルビジネスを行っているので、まず妥協がないんです。本当に目の行き届く範囲内でしかビジネスをしないんですよ。一族経営だから長期的な視野で見ているんですね。
今は多くのホテルが委託で運営されていますし、その良さもきっとあると思いますが、私たちはできるだけ所有を目指しているということが特徴です。そういったことでブランドを守り、ブランド力をより高めていけることが強みだと考えています。『ザ・ペニンシュラ東京』も建物は所有していて、現在は場所だけをお借りしているんです」
――昨今、高級外資系ホテルが続々と日本に進出していますが、ザ・ペニンシュラ東京がオープンしたのは2007年、その流れのスタート期でした。なぜ東京に?
鮫島「プライムロケーションも、カドゥーリー家とザ・ペニンシュラホテルズのこだわりで、最高のおもてなしができる、最高のプロダクトを最高のクオリティでご提供できる、という条件が揃わないと絶対にオープンしないんです。地域社会に根付いて、ホテルの役割をしっかりと全うするためには、やはり立地が非常に重要です。ビジネスや観光の中心地をベースに、いろいろな要素を加味して開業するのですが、東京では丸の内のこの場所がベストでした。
日比谷交差点、皇居外苑と日比谷公園の前に面していて地下鉄の日比谷駅直結、JR有楽町駅からも歩いてすぐですし、東京駅も徒歩圏内。ビジネスや観光の名所でもあり、ショッピング街の銀座も近い。こういった地はなかなかないですよね。実は、東京で立地を探し始めてから何十年もかかっています。ほかにも候補地はあったんですけど、一切妥協せずにやっと見つけた場所です」
世界から選ばれたプライムロケーション
丸の内の魅力は多様性
――ペニンシュラのプライムロケーションに選ばれた丸の内。立地の良さはもちろんですが、街の魅力はどこにあると感じていますか
鮫島「ペニンシュラの哲学には、ホテルが建つ土地の文化を取り入れるというものがあり、ホテルの外観からインテリアまで、その場所の文化や歴史を反映した造りになっています。
ホテル館内には、約1000点以上のアート・デザイン作品が取り入れられていて、その約9割が日本のアーティストの作品です。そういった日本文化を伝えるという意味でも、ここは江戸時代には江戸城があったところですし、今も皇居など歴史を感じられる場所がたくさんありますよね。
もともと、ザ・ペニンシュラ東京にご宿泊いただくお客様は海外からのお客様が多いのですが、コロナが収まってきて、急激な円安の影響もあり、インバウンドはほぼ戻ってきました。今、ホテルにいて感じているのは、コロナ前とはお客様の楽しみ方が変わってきている、ということです。以前はショッピングやグルメを目的とした方が多かったのですが、今は大切な方との日本ならではの特別な体験に、お金と時間をかける方が増えたと感じています。
ホテルの周りには歴史的な建造物だけでなく美術館、劇場なども多いですし、皇居や日比谷公園は緑も豊かで歩いて楽しいエリア。過去から現在がつながっていて、未来までもが明るく見えるような場所ですね」
――丸の内仲通りには、世界に名だたるアーティストの作品も並んでいるし、楽しいですよね
鮫島「私はしばらくここを離れていて、この6月に戻ってきたんですが、こんなに自然が豊かだったかな? とびっくりしました。今は紅葉が美しいですしね。休日に子どもを連れてきた時は、意外にもベビーカーを連れた女性が多くて嬉しくもなりました。これだけのビジネス街でありながら、休日にもこんなにも人が集まる場所はないのではないでしょうか。
2007年に入社した当時は、ビジネス街のイメージが強かったですが、平日は私たちのようにオフィスで働く人のランチや憩いの場でもあるし、カフェやレストランを利用する主婦層の方もいらっしゃいます。文化的、アーティスティック的なものやグルメ、ファッションの街というところもあり、歴史的な要素も見える。丸の内は多様性に満ちあふれていて、人生を豊かにしてくれる場所だと思っています」
ホスピタリティの基本にある
「ペニンシュラ サービス プリンシパル」
――ペニンシュラはホスピタリティの良さも魅力です
鮫島「ペニンシュラには″ページ″と呼ばれるスタッフがいるのも特徴です。正面玄関に立っている白い制服のスタッフで、お客様のお出迎えとお見送り、つまり最初と最後を担当するのが役割なんです。本当に大切なポジションで、世界の全12軒すべてのホテルにいるアイコン的存在のスタッフです」
――そうなんですね
鮫島「もともとはヨーロッパでその昔、お客様に伝言をお渡しするポーター的な役割のスタッフだったと聞いています。ペニンシュラグループ発祥の香港がイギリスの植民地だったこともあり、1928年にザ・ペニンシュラ香港が開業した際に、アジアで初めて採用されました。 実は、私も最初は″ページ″をしていたんですよ!」
――他のホテルには、もうなくなったような昔の伝統が残っている
鮫島「やはり、そういう無形のものをしっかり継承していくのもペニンシュラの特徴です。サービスというところでは、『ペニンシュラ サービス プリンシパル(PSP)』という指針があります。それぞれのスタッフがそれぞれのお客様に合わせたおもてなし、サービスを自分で考えて行動してご提供するというモットーを、とても大切にしているんですね。
ホテルの歴史を作っていくのは″人″です。ペニンシュラのスタッフはPSPを持っている、ホテルのポリシーに合っている人材の集まりだと思っています。ペニンシュラはトレーニングの体制もしっかり整っているので、接客の技術面は後から付いてきます。だから採用時にはパーソナリティの部分をよく見て、自然とPSPができるような方を選んでいます」
アフタヌーンティーやカクテルにも
日本テイストを取り入れる
――ペニンシュラといえば、アフタヌーンティー。ホテルの代名詞にもなっているくらいですが、そのこだわりは?
鮫島「おっしゃる通り、アフタヌーンティーはペニンシュラのアイコンのひとつであるとともに、12軒すべてのホテルでご提供しており、各ホテルでそれぞれの特色が取り入れられています。ザ・ペニンシュラ東京では、旗艦ホテルであるザ・ペニンシュラ香港の伝統を継承して、セイボリー、スイーツとスコーンの基本構成はそのままに、メニュー内容に関しては東京らしいオリジナリティを出しています。
春は桜、夏はライチやピーチなど旬のフルーツ、秋は紅葉、冬はクリスマスやイチゴなど、四季を感じてもらえるようなメニューを考案しています。1か月半から2か月ぐらいを目処にメニューも変わるので、何度お越しくださっても違う形で楽しんでいただけますよ。今年はクリスマス後から24年1月末まで、9月のザ・ペニンシュラロンドンの開業を記念した『ブリティッシュ アフタヌーンティー』をお出ししています」
――スコーンやクローテッドクリームもとてもおいしい
鮫島「ホテル地下1階の『ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ』で作っているスコーンは、牛乳の代わりに生クリームを使うなど、シェフこだわりのレシピでしっとりとした食感が特徴です。またクローテッドクリームは、さっぱりとしながらもコクと風味が感じられ口当たりもよく、どんどん食べ進めたくなる味わいですよ。
アフタヌーンティーは現在、『ザ・ロビー』にて11時30分~20時(LO18時)まで提供しており、ボリュームがあるのでランチやディナーでご利用される方もいらっしゃいますね」
「ブリティッシュ アフタヌーンティー」
期間:12月26日(火)~2024年1月31日(水)
時間:11時30分〜20時(LO 18時)
価格:平日 8000円、土日祝 9000円(オリジナルカクテルまたはモクテル1杯付き)
――東京ならではのこだわりがすばらしいですね。ホテルなら、もちろんバーも気になりますが、シグネチャーカクテルは何でしょうか
鮫島「『東京ジョー』という名前のカクテルです。最上階24階のステーキ&グリル『Peter』に併設する『Peterバー』でご提供している、1949年公開のハリウッド映画『東京ジョー』にちなんだオリジナルです。
この映画は、第2次世界大戦前後に銀座にあったバーが舞台となっており、約60年後にザ・ペニンシュラ東京が建つこととなる日比谷交差点もシーンに登場。主演のハンフリー・ボガートが一番好んだとされるお酒・ドランブイとボンベイサファイア、梅酒にクランベリージュースとレモンジュースをブレンドしたものです。ミクソロジー&バーマネージャーの鎌田真理がペニンシュラの哲学にのっとり、ホテルが建つこの地にちなんで作ったカクテルで、盃のようなグラスで飲む演出が、特に海外の方にご好評いただいています。
また『Peterバー』では、ノンアルコールカクテルのモクテルにも力を入れておりまして、『ザ・ゼロプルーフ』と名付けた鎌田プロデュースのシリーズは、オリジナルと定番を合わせて約15種類。“東京ジョー”のモクテル『ベビー東京ジョー』もありますので、お酒が飲めない方、車でいらした方にもぜひ味わっていただきたいです」
豪華ディナーとライブDJ!
パフォーマンスを楽しむ大人な年越し
――年末年始のスペシャルメニューやイベントはどのような?
鮫島「ホテル直営レストランで特別メニューをご提供いたします。24階のステーキ&グリル『Peter』では、12月31日にニューイヤーズイブディナー、中国料理店『ヘイフンテラス』では、12月31日から24年1月3日までニューイヤー ランチ、ニューイヤー ディナーをお召し上がりいただけます。どちらも1年の締めくくりと始まりにふさわしい、豪華な食材を使った特別なメニュー内容です」
「Peter」ニューイヤーズイブ ディナー
期間:12月31日(日)20時~24時
価格:6品コース 4万8000円、ザ・ペニンシュラ シャンパン ドゥーツ ブリュットNV フリーフロー付き 6万8000円
鮫島「一流のメゾンと提携して作っているペニンシュラオリジナルのシャンパンやワインも、ご一緒に味わっていただきたいです。日本酒やウイスキーもオリジナルですので、ぜひ!」
――日本酒まで独自で作っているとはすごいこだわり!
鮫島「やはり、その土地の文化を取り入れるという哲学に基づいて、日本のお客様はもちろん、海外のお客様にも、日本のすばらしい文化を伝えていきたいという想いがあります。
また『Peter』には専属のパティシエがいるので、クリエイティブなデザートもおいしいんですよ! 今回のディナーでは、新年のお祝いに合わせて富士山をイメージしたデザートをご提供いたします。そして、お食事中にエンターテインメントもご用意しており、年末年始は営業時間が20時~24時までと、新年を迎える瞬間までゆっくりお過ごしいただけます」
――どんな感じのエンターテインメントになりますか?
鮫島「3名の方とコラボレーションし特別な夜を演出します。ひとりはDJ Kentaさん。HIP HOPを軸に、ジャズにソウル、R&Bなど多彩なジャンルをミックスし、『Peter』の雰囲気や客層に合わせて上質で豊かなサウンドを聞かせてくれるのが魅力です。
もうひとりが、女性シンガーのFiJA(フィージャ)さん。R&Bやソウルがベースですが、アメリカ留学時代にゴスペル聖歌隊の経験もおありなので、ゴスペルのエッセンスが加わった独特なスタイルが魅力です。『Peter』のモダンな雰囲気の中で、ムードあふれるひとときをお楽しみいただけると思います。3人目は画家で浮世絵絵師のOZ(オズ)さんで、ライブペインティングを行っていただく予定です。
ペニンシュラの哲学が、ホテルが建つ土地の文化を取り入れるということは再三お話ししましたが、この哲学は私たちが提供するプロダクトやプログラムにも反映されています。現在、アート・プロジェクトの一環で、ザ・ペニンシュラ東京オリジナルの浮世絵3種類を制作中で、今年の大晦日は特別な夜にすべく、OZさんに浮世絵タッチのキャンバス画を描くライブパフォーマンスを行っていただきます」 (※エンターテインメントの内容は変更される場合あり)
――「浮世絵の取り組み」とは?
鮫島「浮世絵という日本の伝統的な文化を国内外のお客様に知っていただきながら、絵師、彫師、摺師らの職人たちを直接支援することが目的のアート・プロジェクトです。
現在、ザ・ペニンシュラ東京の過去と現在が入り交じるような日常風景を描いたオリジナルデザインの浮世絵3種類を、版元『UKIYO-E PROJECT』のOZさんはじめ、彫師、摺師の方にご制作いただいています。去る9月にはホテル内のスペースをスタジオとしてご利用くださり、オリジナルデザイン(3種類のうちのひとつ)をキャンバスにライブペインティングで描いていただきました。
今回の取り組みでは、オリジナルの浮世絵3種類の初摺を限定各100枚で刷っていただいて、来年から順次販売をしていく予定です」
――「ヘイフンテラス」のメニューは?
鮫島「1928年に開業した旗艦店ザ・ペニンシュラ香港の中国料理店『スプリングムーン』の姉妹店であり、伝統的な広東料理でお祝いの席をお迎えいただけます。ランチは6品のコースが3種類、ディナーは6品と8品、2種類のコースです」
「ヘイフンテラス」ニューイヤー ランチ
期間:12月31日(日)~2024年1月3日(水)11時30分~15時
価格:6品コース 1万3800円~
「ヘイフンテラス」ニューイヤー ディナー
期間:12月31日(日)~2024年1月3日(水)18時~22時
価格:6品コース2万9800円~
――元旦は初日の出を見られるイベントもあり?
鮫島「ご宿泊のお客様向けには、初日の出イベントを開催します。眺めの良い最上階24階の宴会場『ザ・スカイルーム』にて、早朝6時~7時30分に振る舞い酒をご用意しますので、ザ・ペニンシュラ東京でぜひ、特別な年末年始をお過ごしください」
※掲載のメニューやドリンクの写真はすべてイメージ
※掲載のメニューやドリンクの価格はすべて消費税・サービス料15%込み
※掲載時点で予約が取れない場合もあります。あらかじめご了承ください
多様性にあふれ、過去と現在、そして未来をつないでいく丸の内。この街に海外の一流ホテルが続々と進出する現在の流れは、一切妥協しないペニンシュラ・スタンダードを貫いたザ・ペニンシュラホテルズが、丸の内をプライムロケーションとして選び、2007年のザ・ペニンシュラ東京の開業が試金石となっていることは間違いない。ペニンシュラと丸の内をこよなく愛する鮫島氏が語った、その土地の文化をリスペクトして地域社会に根付き、ゲストそれぞれに寄り添うおもてなし。その真髄を、この年末年始にぜひ堪能してみてはいかがだろう。
鮫島由里子(さめじま・ゆりこ)●1985年生まれ、愛知県出身。ザ・ペニンシュラホテルズ 日本地区 ブランドパートナーシップ&コミュニケーション マネージャー。2008年ザ・ペニンシュラ東京に入社。2011年まで宿泊部に所属し、ゲストサービスやフロントデスクにて経験を積む。その後、広報部へ異動しプレスリリースの作成やメディアの取材対応、外国人エグゼクティブのインタビュー通訳などを行う。2019年に一度退職、2023年6月より現職。
聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)●1961年生まれ、大阪府出身。株式会社角川アスキー総合研究所・戦略推進室、丸の内LOVEWalker総編集長。国際大学GLOCOM客員研究員、一般社団法人メタ観光推進機構理事、京都市埋蔵文化財研究所理事、大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会会長代行。産経新聞~福武書店~角川4誌編集長。
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