入り口の自動ドアからデータに囲まれる!モノづくりまで可能なエンジニアの楽園
未来のトップエンジニアを生み出す施設「D.E BASE」が秋葉原に開設
2023年12月18日 09時30分更新
ウイングアーク1stはエンジニア向け施設「D.E BASE(Data Empowerment BASE」を秋葉原に開所した。データの見える化を前提とした数多くのディスプレイを擁し、高価なモノづくり設備まで用意した施設は、エンジニアの想像力を刺激する。開所イベントに加え、その後行なわれた学生向けのイベントの模様も含めて、お伝えする。
巨大ディスプレイに囲まれたエンジニアのための施設
D.E BASEは秋葉原のビジネスビルの一角に設置されており、ウイングアーク1stとしては国内で9拠点目となる。「世界を変えたいエンジニアのためのラボ」を謳うD.E BASEは、同社の開発拠点となるほか、テックイベントやタイアップした企業・組織との交流会などの会場としても使われる予定。さらにエンジニアが興味を持つ設備を用意し、組織の壁を越えて研究開発できるようにしたいという。
同社が「データの見える化」をビジネスとして展開だけあって、施設全体はディスプレイが多用されている。
まず、エントランスには半透明の有機ELディスプレイを搭載した自動ドアが設置されており、顔認証で開閉できる。パナソニック製のプロトタイプモデルで、フルHDのパネル8枚で構成されており、おそらく世界初とのこと。CTOの島澤甲氏は「入り口からデータに囲まれる体験」と説明する。顔認証もただの顔認証ではなく、笑顔で開く「スマイル認証」を社員有志が実装しており、カメラも自前で取り付けたという
また、室内には複数のLEDパネルを組み合わせた壁面ディスプレイに加え、天井や床にまで大型ディスプレイが設置されている。液晶素子の並びにすき間を作ることで、後ろが透けるシースルーLEDも2台用意され、MotionBoardのダッシュボードが表示されている。
さらに三面のディスプレイを擁したサソリ型のゲーミングチェアであるスコーピオン(正式名称「GeeManticore」)も4台も設置されている。後ろのサーバーに直結されているため、eスポーツなども可能。サーバーは社員自らが自作しており、最大5.8GHzまで対応するCore i9 13900KFやRTX4090、RTX4080、RTX7900などのGPUを搭載している。
開設の狙いはずばりエンジニア不足
モノづくり可能という点もD.E BASEの大きな特徴。切削可能な金属加工機「FUNAC α-D14SiB」マシニングセンタ、金属用3Dプリンター「ProX DMP200」も用意されており、「DIYを超えたモノを作れる」(島澤氏)とのこと。ゴルフ用の弾道計測器である「トラックマン」も設置されており、贅を尽くした大人の遊び場のような雰囲気も漂わせる。
施設は従業員用のオフィスも兼ねており、同社の上位エンジニアであるアーキテクトが常駐するほか、CEOやCTOの部屋も用意されている。もちろん、テレカンスペースや会議室も用意されており、日常的な業務で活用できる。
施設開設の説明会で登壇したウイングアーク1st代表取締役 社長執行役員CEOの田中潤氏は、開設の狙いについてずばり「エンジニア不足」と説明する。「2030年には最大で79万人が不足すると言われている。この課題を解決するために、まずエンジニア自体を増やさなければならない」と田中氏は語る。
その点、D.E BASEでは同社のトップエンジニアであるアーキテクトが常駐し、交流やイベントが行えるようにするという。エンジニアリングの楽しさを広めつつ、大学との共同研究も可能。「エンジニア同士が高めあう環境で、データを価値に変えるエンジニアを育てたい。ここで未来のトップエンジニアを生み出したい」と田中氏は語る。2025年までにエンジニア70名を増員し、主力製品の開発体制を増強するという。
こだわりのあるものづくりには広い視野が必要
そして、午後からは全国から学生を招いたイベントが開催され、田中氏に加え、CTOの島澤甲氏も登壇し、目指すべきエンジニア像やD.E BASEの狙いについて説明した。
島澤氏が学生たちにアピールしたのは「良い『こだわり』のある『ものづくり』には広い視野が必要。技術の本質を知るには体感することが大事」「深さだけではなく、縦にも横にも存在する」というメッセージだ。
通常、ITエンジニアというと、ソフトウェアの開発を指すが、開発を進めるためには、フレームワーク、言語、アルゴリズムなどの技術の知識も有用だ。ただ、ここまではITエンジニアも学ぶ内容。しかし、レイヤーで見て下層にはOSやIaaSがあり、さらにはハードウェア、もっといくとマテリアル(材料)まで行き着く。深掘りしようと思えば、技術はどこまでも掘っていける。
あらゆるものが手元のスマホで、しかもブラウザの上で済む現在、こうした物理レイヤーについて関心を持つエンジニアは相対的には多くないのかも知れない。しかし、これについて島澤氏は、「実はハードから発生するイノベーションを見逃すと、急激に取り残されたりする。たとえば、私は携帯電話のソフトを作っていたが、スマートフォンになって一瞬に淘汰された。われわれはハードをメインにやっているわけではないが、関心を持たないでいいかというとそんなことはない」と警鐘を鳴らす。
ここまでの話は垂直方向だが、水平方向でも技術的な関心軸は存在するという。顧客の話や関心事をヒアリングする技術、そのニーズの先を行くべく、将来を予測したり、トレンドを見抜く技術も、エンジニアには必要になる。さらに魅せたり、伝える技術、そしてお客さまとの関係や信頼を作る技術も重要だ。「『こんなの営業がやりとりする話』でしょと思う人もいるかもしれないけど、アプリケーションだけやっているエンジニアでリスペクトできる人って、あまりいない。でも、水平的な技術を持っているエンジニアは市場でも目立つ。お客さまを定義できるエンジニアはやはりパワフル」と語る。
技術の魅せ方ということで、自宅で運用している猫の餌やり器やミンティア射出機を披露した島澤氏。「技術は楽しい!」とアピールし、技術に全力な皆さんを応援します」とエールを送った。
D.E BASEの元になったのは島澤CTOの秘密基地?
ウイングアーク1stのこだわりCTO、島澤甲氏の自宅にある秘密基地に潜入!ディスプレイと自作デバイスだらけのスーパールームのほか、デモで用いたネコの餌やり器やミンティア射出機も。