動画エンコードではプロセッサーグループの壁が高く
続いては動画エンコード系で試してみよう。まずは「HandBrake」で試す。再生時間約3分の4K@60fps動画から、プリセットの「Super HQ 2160p60 4K AV1 Surround」と「Super HQ 1080p30 Surround」の2通りにエンコードする時間を計測した。
最新版(現行執筆時点でv1.7.1)ではAV1のGPUエンコード(NVENCなど)にも対応しているが、あえて今回はCPUベースのエンコードで試す。画質などのパラメーターは各設定デフォルトのものを使用した。
まずAV1エンコードに関しては、コア数最多のThreadripper 7980Xが圧倒するかと思いきや、最速はCore i9-14900Kが持っていった。AV1は圧縮に必要とする計算量が多い割にコアが数多くあっても使い切れない背景があるのだが、CPUリソースが余っているので並列エンコードという方向性で運用すべきだろう。
しかし、H.264のエンコードに関しては、AV1とは対照的にThreadripper 7000シリーズが速く、Core i9-14900Kに対して1分以上の差をつけて終了。つまり実再生時間より短い時間で終了している。Super HQ 1080p30 Surroundは2パスエンコードなので、Threadripperのパワーの強さが分かる。
AV1と違いH.264エンコーダーは並列度が高く、全コアに負荷をかけられるためだ。ただ多くのコアにおいて10%程度の低い負荷しかかかっていないことも多いため、CGレンダリングほどはThreadripperを活用できていないようだ。
ただ今の時代GPUエンコードの方が、ずっと効率的な選択である点は否定できない。そこでGPU利用率の高い「DaVinci Resolve Studio」のパフォーマンスを見てみよう。今回はProRes 422HQを使用した8K動画(約2分)を準備し、ビットレートは最大80Mbpsの8K MP4動画に書き出す時間を計測した。コーデックはAV1およびH.265とし、エンコーダーは“NVIDIA”を明示的に指定している。
HandBrakeではCPUを使っていたため、コーデックによってはコア数勝負になることもあった。だがDaVinci Resolve StudioではGPUが使われるため、今回用意したどのCPUでもエンコード処理そのものに影響が出ることはほぼない。
ではThreadripperはDaVinci Resolve Studioでは無用と言い切るのは早計である。Threadripper 7000シリーズはPCI Express Gen5が合計48レーンまで使えるため、Gen 5のSSDをRAIDアレイにまとめた超高速ストレージ環境が使えるという強みがある。
Ryzen 7000シリーズもGen5対応だが、メインのビデオカード用x16スロットを分割する以外に8レーン以上のGen5対応スロットを持つマザーボードはない。
8Kより上の10Kや12Kといった映像を取り扱うのであれば、足回りの太いThreadripper 7000シリーズが圧倒的に強くなるだろう。
動画つながりで「AfterEffects 2024」の処理時間も試してみよう。約10秒のフルHD動画に映りこんだ不要な物体に対し“ロトブラシ”で領域を設定、これに対し“コンテンツに応じた塗りつぶし”を適用する時間を計測する。
このテストは以前Threadripper 5995WX検証で行ったものと同様のものを実施している。今回も前回の結果と同様に最速はCore i9-14900Kだったが、Threadripper 7970Xが14900Kとほぼ同着、7980Xがわずかに遅いという結果になった。
これもCPU処理の並列度が上がりきらないための結果であるが、Zen 2世代のThreadripper 3970Xや3990Xにたから見ると大幅なパフォーマンス向上を果たしている。
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