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大谷イビサのIT業界物見遊山 第53回

「ペンペン草しか生えない」と予想した10年前の答え合わせ

国産クラウド13年目の風景は荒野じゃなかった

2023年11月17日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 先週、サイボウズデイズ2023に参加して、驚いたのは100を超える出展パートナーとそこを訪れる人の多さだ。コロナ禍明け久しぶりのリアルイベントであることを差し引いても、幕張メッセのビジネスイベントでこの賑わいは驚異的。国産クラウド13年目の風景は荒野じゃなかった。

黒山の人だかりとなるサイボウズデイズの展示会場

外資系クラウドの台頭で危ぶまれた国産クラウド

 10年前、国産クラウドは将来が危ぶまれていたと思う。クラウドサービスとしてはニフティやインターネットイニシアティブ、NTTコミュニケーションズなど国産クラウドが先行していたものの、2011年にAWSの東京リージョンが開設され、潮目は大きく変わった。圧倒的な規模とリソース、サービスの開発力、グローバルの実績を持つハイパースケーラーは、勃興しつつあったクラウド市場を塗り替えていく。ちなみに、国内事業者は当時どう感じていたのか? 2014年に挙げた「“黒船”AWS上陸から数年、国産クラウドは反撃できるか?」という座談会レポートがあったので、興味ある方はぜひ読んでもらいたい。

 クラウドに懐疑的だった大手企業も、オンプレミスからクラウドへの移行を推進したが、中心となったのは外資系の事業者だ。AWSやAzureに加え、Google CloudやOracleなども参入し、事業者間の競争は激化したが、果たして国産のクラウド事業者は蚊帳の外だったと言わざるを得ない。今や国まで「クラウド・バイ・デフォルト」を標榜するようになったが、政府のガバメントクラウドの事業者として、国内の事業者は入ってこなかった。土俵にすら上げてもらえなかったのである。

 こうした状況だけをかいつまむと「このままでは国産クラウドは生き残れない」という10年前の予想は一部あっていたと思う。実際、パブリッククラウドの先駆者だったNTTコミュニケーションズの「Cloudn」は2020年末に終了し、ニフクラ(旧ニフティクラウド)は運営会社も変わり、レンタルサーバーに関しては2024年3月にサービスを終了する。

 一方で、生き残り策を模索した結果として、大きく成長した事業者もある。たとえば、国産クラウドをリードしてきたIIJやさくらインターネットは、直近で過去最高益をたたき出している。圧倒的なリソースを持つグローバルクラウドとどう対峙すべきか? 前者はシステム開発や新規サービスなどのチャレンジ、後者はクラウドサービスへの継続的な投資が大きな強みになったと思う。

 MicrosoftやSalesforceになぎ払われると思っていたSaaS領域でも国産クラウドの成長が著しい。もちろん、外資系のサービスは強いが、特に法令や商習慣などローカルルールへの依存が大きいバックオフィス領域は、国内クラウドが大きな存在感を誇っている。会計システムのfreeeやマネーフォワード、名刺管理のSansan、電子契約の弁護士ドットコム、ビジネスチャットのChatwork、経費精算のラクスなど、いわば「お兄さんスタートアップ」にあたるプレイヤーが市場をリードし、大手のすき間を狙うようなユニークなサービスを手がける新興プレイヤーが次を狙う状態。国産SaaSはまだまだ目を離せない状況だ。

強みはエコシステムとファン

 こうした国産クラウドの勢いを肌で感じたのが、先週参加した「サイボウズデイズ」である。

 近年、サイボウズデイズは会場を都内のホテルから幕張メッセに移しており、巨大な会場を活かした大がかりなセット、趣向を凝らした演出で、独自の世界観を実現している。コロナ禍においても、オフライン開催を続けてきたという経緯もあり、サイボウズ製品ユーザーにとっては貴重な交流場所にもなっている。こうして紡ぎ続けてきたkintoneのエコシステムとファンの熱気が、今年は爆発した間すらある。

 今年出展したパートナーは100社を超え、ついにパンフレットに納まらなくなった。ビッグサイトの大型展示会よろしく、巨大なマップを拡げて、自ら開拓しなければならなくなったわけだ。とはいえ、同日の基調講演でサイボウズのパートナーは435社と発表されているので、これでも出展したパートナーは全体の1/4に過ぎない。サイボウズのエコシステムには本当に驚かされる。

展示会場のマップ

 そして、初日の8日、広大なパートナースペースを数多くの参加者が埋め尽くした。コロナ禍で閑古鳥が鳴いていた数年前には想像できないような、すさまじい数の来場者。しかも、今年はほぼタレントなしにも関わらず、多くの参加者が幕張まで足を運んだのだ。パートナーからは「用意していたノベルティやパンフレットが半日でなくなった」「ずっと来客対応していたので、休む暇がなかった」など喜びの悲鳴が聞こえた。

 kintoneのサービス提供開始は2011年の11月7日。AWSの東京リージョン開設からざっくり半年後にスタートしていることになる。そこから12年を経て、今や導入社数は3万1000社を突破し、グローバルではガートナーのマジッククアドラントに名前を連ねるまでになった。10年前、この成長を想像した人はあまりいなかったのではないだろうか? 白状すれば、私もこうなると思っていなかった。

 通路を埋め尽くす人の波を見て、これが「国産クラウド13年目の風景なのか」と改めて感慨にふけった。われわれがここから学べることは、将来に対する危機感や課題意識を抱きつつも、つねに前向きであるべきということだ。頭を悩ませ、生存競争を続けてきた結果、たくましく成長した国産クラウドはほかにもいくつもある。外資系クラウドとの共創により、高い価値を生み出すサービスも増えた。個人的には次の十年も十分期待できると思っている。

大谷イビサ

ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

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