10月半ば、伊藤園が「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMにAIタレントを起用したというニュースが話題になった。AIタレントの制作を担当したAI modelによると、AIタレントが登場するテレビCMは日本初という。
お~いお茶 カテキン緑茶は、パッケージデザインにも画像生成AIを使用。プラグ社の「商品デザイン用の画像生成AI」サービスのパイロット版が生成した画像を参考に、人間のデザイナーが完成させたものを採用している。
なぜ伊藤園はテレビCMにAIタレントを使ったのか、伊藤園 マーケティング本部 広告宣伝部 緑茶ブランド広告チームの上條裕介氏に話を聞いた。
AIタレントはメッセージを伝える手段のひとつだった
── AIを使うことになった経緯を教えてください。
大前提として、AI(を使うというコンセプト)から始まってパッケージと広告宣伝に分かれたわけではありません。相関性はあとから出てきますが、まずはパッケージの方からでした。
── 画像生成AIを使ったパッケージですね。
カテキン緑茶のリニューアルにあたって、お茶の躍動感とか生命力をどうあらわすかということを考えたんです。言葉で言うと抽象的なんですけれども、それをあらわすときに具体的にどんなイメージになるかと。それに対して、AIならキーワードを入れたとき短時間ですごい種類のパターンを出してくるので、方向性を決めるとき非常に役立つだろうということで使った形です。
── 生成AIの得意分野とされるアイデア出しに使ったわけですね。
社内やデザイナーさんと方向性を決めるときに、抽象的な表現で多くの数をやっていただくにはすごく時間と労力がかかるので、そういったところを手段として活用した形ですね。生成というより活用という形で、あくまでもアイデア出しに使い、最終的にはそこで出てきたものを参考にしてデザイナーが作り直しています。
── アイデアは何パターンくらい出されたんですか?
具体的な数は出せませんが、相当な数が出たとは聞いております。
── テレビCMはまた別の文脈でAIを採用されたんですか?
もちろん、パッケージにAIを使っていることは私も認識していたんですが。CMとしては、カテキン緑茶はあまり認知もありませんし、まずはみなさんに一回手にとって飲んでもらいたいという思いが強くありました。カテキン緑茶はトクホ飲料のため、自分から距離がある飲料と思われがちなので、「将来の明るく健康的な未来のために今日から明日から飲みはじめましょう」ということを15秒のCMでどう伝えるかというところがスタートでした。
── そのメッセージングをするにあたって、1つのツールとしてAIが使えるのではないかということになったと。
CMで伝えるときに、手法として、現在の自分と30年後の自分が明るく生き生きしている姿を表現していくのが一番いいんじゃないか。それをどんなツールでやっていくかと考えたとき、実際のタレントさんとか、アニメーションなど色々な方法があるなか、AIというアイデアが出てきた。AIであれば、現在の自分を描いて、そこから30年後の自分を描くこともできます。そういった目的には、今回はAIという手法がCMにおいても最適じゃないかと考えました。
── それは伊藤園さんからの提案だったんですか?
アドバイスをいただく制作会社さんとか、広告代理店さん、もちろん広告の監督さんとか、いろんな関係者の方々と協議して、そこで出た案としてAIがあったということですね。