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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第743回

RISC-Vの仕様策定からSiFiveの創業までAsanovic教授の足跡をたどる RISC-Vプロセッサー遍歴

2023年10月30日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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RISC-V Foundationの立ち上げ

 いくらAsanović教授が優れた命令セットを策定したと言っても、そのままではUC Berkeley以外では誰も使ってくれない。業界を巻き込んで広範に利用してもらうためには、そうした働きかけをする場所が必要である。

 といってもまずは“RISC-Vとはなにか?”を知ってもらう必要がある。まず2013年7月にRISC-Vのウェブサイトが立ち上げられた「らしい」。らしい、というのは2013年7月にブログのエントリーがあったらしい形跡はあるのだが、すでに消えているためだ。2014年3月付のRISC-Vのページを見ると、2013年7月26日にドラフトのウェブサイトが立ち上げられたとしている。8月13日にはISA Specification 1.999が公開。2013年8月のHotChips 25ではポスター展示もされている。

講演はなく、このスライドを大きくプリントしたものを展示する形での展示のみ。まだこの時点ではRISC-Vという言葉が全然普及していなかったから、まずは第一歩という形だ

 2014年に入るとしばらくは先に書いた「RISC-V環境の充実」に注力することになるが、そうした中で水面下でRISC-V Foundation結成に向けてメンバー集めをしていた気配がある。というのは2014年の時点ではRISC-V関連のプロジェクトを進めるにあたり、かなり軍関係からの資金援助を受けている。

 公開されているだけで、DoE Isis Project、DARPA PERFECT program、DARPA POEM programの3つからの資金援助があったほか、C-FAR(STARnet Center for Future Architectures)やLBNL(Lawrence Berkeley National Laboratory)といった組織からの資金も入っている。

 加えて業界スポンサーとしてGoogle、Huawei、Intel、LG、Microsoft、NEC、Nokia、NVIDIA、Oracle、Samsungといった企業からの資金も入っており、こうしたスポンサー企業のいくらかはそのままRISC-V Foundation設立にあたりファウンダーメンバーになった。実はこの当初の軍関係からの資金援助、というのが今になって火種になっているのだが、その話はまたいずれ。

 2015年に入ると、こうした活動の結果としてRISC-V Foundationが8月5日に結成される。もっともこの時点での説明はこんな感じで、体裁もなにもない。なにせトップページにRISC-V Foundationの名前が出てきたのは2016年2月16日のことである。

 要するにいろいろと作業が間に合っていなかったのだと思う。ただそういう体裁はともかく、2015年にRISC-V Foundationが設立されたことで、明確にRISC-Vの普及に向けてのトラクションがかった格好だ。

SiFiveの立ち上げ

 このRISC-V Foundationの立ち上げとほぼ並行して行なっていたのが、RISC-Vコアの商用販売を目的としたSiFiveである。創業メンバーはAsanović教授のほかにYunsup Lee博士とAndrew Waterman博士の2人だが、要するにLee博士とWaterman博士はAsanović教授の元で研究をしていたUC Berkeleyの学生であり、Raven-1以降のチップの開発などにも携わってきていた。

 したがってRISC-V Foundationの立ち上げにも関係しており、実際Lee博士はついこの前まではRISC-V FoundationのTechnical Steering Committeeの議長を務めていたし、Waterman博士はPrivileged Architecture Task Groupの議長を現在も務めている。こうした活動と並行して、SiFiveを立ち上げたわけだ。

 Asanović教授一人ではないとはいえ、よくこれだけの活動を2015年までの間にこなせたな、とは思う。こうした超人的な活動の成果として、2015年にはRISC-Vを広めるための器が形成され、2016年からはその成果が次第に出始めることになる。

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