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2023年冬に向け送金プラットフォーム開発中

SaaSがバックオフィスと金融をつなぐ マネーフォワードのFintech戦略

2023年11月10日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 マネーフォワードは、言わずと知れたクラウド会計を代表するSaaSベンダーだが、近年はバックオフィス向けのSaaSだけではなく、新規事業開発やM&Aにより、事業領域を拡大している。

 特に同社が注力するのがFintechの領域だ。SaaSに金融サービスを組み込み、培ってきたSaaSの顧客基盤に向け推進する。マネーフォワードの執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニーCSOである山田一也氏に話を聞いた。(聞き手:ASCII編集部 大谷イビサ)

マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニーCSO 山田一也氏

インボイス制度がきっかけとなった“SaaS×Fintech”

 マネーフォワードは、2013年よりバックオフィス向けSaaSを提供、はじめは個人事業主や中小企業向けに展開していたが、今では全体の2割が中堅・エンタープライズになるほどに広がりをみせる。

 現在、同社の追い風となっているのが、2023年10月から開始されたインボイス制度によるデジタル化の流れだ。山田氏は、「インボイス制度では、請求書の発行側は控えを保存、受け取り側も適格かどうかを工数をかけてチェックしなければならず、紙ベースが前提だとコストがかかかる。これを機にインボイスの受け取りをDXしようとする企業が増えた。そして、インボイス(適格請求書)がデジタル化されると、会計でもデータを活用でき、クラウド会計のニーズにもつながっている」と語る。

インボイス制度を機に、クラウド導入の意向が高まる

 インボイスを契機とするデジタル化を活かせるのはベンダー側もだ。マネーフォワードは、Fintechのトレンドの一つである、非金融事業者がサービスに金融機能を組み込む「Embedded Finance」に取り組んでおり、“SaaS×Fintech”という形でSaaSユーザーに対して金融サービスを提供し、新たな価値を生み出そうとしている。山田氏は、「債権・債務(入金・出金)のデータが蓄積されることで、その先の金融サービスまでをシームレスに提供できるようになる。インボイス制度はSaaS×Fintechに注力する大きなきっかけとなった」という。

SaaS×Fintech ― 決済・資金調達サービスをSaaSから

 このSaaS×Fintechにおいて頭角を現しているのが、「マネーフォワード クラウド」のデータを活用する「Money Forward Pay for Business」である。キャッシュレス化により、バックオフィス業務の効率化を促進するFintechサービスだ。

 同サービスの決済手段の第一弾として発行する、プリペイド式のビジネスカード「マネーフォワード ビジネスカード」は、2021年9月のサービス開始より40万枚を突破(2023年10月時点)するなど、順調に利用が伸びている。事前に入金をした同カードを従業員に配り、経費を支払う際などで使用してもらう。さらにマネーフォワード クラウドと連携することで、リアルタイムで取引データを取得でき、月次決算や経費処理を簡略化できる。2022年に開始した後払い機能も、マネーフォワード クラウドと連携して、最短10秒で与信を判定している。

クラウド会計と連携して与信を判定する後払い機能も追加

 実際に、飲食店事業を展開する39ダイニングは、マネーフォワード クラウド会計とマネーフォワード ビジネスカードのリアルタイム連携で、購買管理や仕訳入力を効率化、領収書管理や経費精算が不要になり、ボタン一つで仕訳が可能になったという。

 また、ダイハツ販売会社グループである埼玉ダイハツをはじめとした数社では、マネーフォワード クラウド経費とマネーフォワード ビジネスカードの連携でペーパレス化を実現し、従業員と経理部門の効率化を実現した。SaaSとFintechとの連携がバックオフィスの業務効率化につながる好例と言える。

39ダイニングの事例

ダイハツ販売会社グループの事例

 決済分野だけではなく資金調達の分野でもSaaS×Fintechを展開する。マネーフォワードと三菱UFJ銀行の合弁会社であるBiz Forwardと連携し、マネーフォワード クラウドに蓄積していたデータを基にした与信審査を実現した。SaaSにファクタリング機能を組み込むことで、審査における手間を省き、迅速な資金調達を支援している。

 

 今後は、送金プラットフォームをSaaSに組み込む予定であり、2023年冬のサービス提供を目標に開発を進めている。現在、振り込みの実務は、支払い用のデータを作成して、インターネットバンキングにアップロードして、承認するといった手間が発生していた。インボイス制度によって支払い予定のデータが蓄積され、給与計算サービスなども展開しているため、マネーフォワードのSaaSの中で振り込みまで完結できるような土壌が揃っているとのことだ。

送金プラットフォームを今冬提供に向け開発中

バックオフィスも金融もSaaSで一気通貫に繋げる

 山田氏は、「金融関連の業務も、バックオフィスの業務と切っても切り離せない。SaaSで業務効率化をして、蓄積したデータを金融に活かし、バックオフィスと金融をなめらかに繋げる一連の流れをデザインしていかないと、日本の生産性は上がらず、資金効率も上がらず、経済成長もままならない」と語る。

 一方で、SBIビジネス・ソリューションズが、SBIグループのノウハウを活かしてバックオフィス向けのSaaSを提供するなど、金融機関による逆のパターンも増えてきた。業務サービスにおける業界の垣根がなくなり、意識を割くことなく利便性が高まるのは、ユーザーにとって理想の流れと言えるだろう。

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