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SBIビジネス・ソリューションズが島根銀行と共同発表会を開催

無料でも難しかった「請求QUICK」 地方で受け入れられた理由とは?

2023年06月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年6月26日、経理・財務、バックオフィス系のSaaSやサービスを提供するSBIビジネス・ソリューションズは、パートナーである島根銀行と共同発表会を開催。85%を地方企業が占めるという同社の製品の地方浸透に寄与した「ラストワンマイル」の施策について説明した。

登壇したSBIビジネス・ソリューションズ 代表取締役社長 夏川雅貴氏

ユーザー数による従量課金を撤廃した請求QUICK 何人でも無料へ

 SBIビジネス・ソリューションズは、請求書管理システム「請求QUICK」、経費精算管理システム「経費BANK」、ワークフローシステム「承認TIME」、勤怠管理システム「勤怠RECO」など経理・財務、バックオフィス向けクラウドサービスを提供している。これらSaaSのほかにも、アウトソーシングや各種Webサービスを提供しており、SBIグループのノウハウとIT・FinTechでユーザー企業を支援している。

 今回紹介されたクラウド型請求書管理システムの請求QUICKは、請求書の作成や申請、承認、発行から、入金の消し込み、督促、仕訳出力まで一連の経理業務を効率化。このうち、入金の自動消し込みや請求書を資金化するファクタリング、クレジッドカード決済など請求書を起点とするFinTechも搭載しており、決済システムとして利用できるのも大きな強みで、9月には受け取り側の機能も標準搭載する。そして、これらの機能を初期・月額費用無料で利用できるのが大きなメリットとなっている。

請求書の作成から、消し込み、仕訳まで効率化する請求QUICK

 同社がターゲットとする多くの中小企業は、経理の専門部署がないため、営業や社長自らが経理業務をやっているといったリソースの課題や、業務効率化のために追加コストを払えないというコストの課題が存在する。これに加え、今年は10月からスタートするインボイス制度と、年内に宥恕期間が終了する改正電子帳簿保存法への対応が必要となる。

 特にインボイス制度は適格請求書発行時業者の登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額を明記する必要があり、登録しないと仕入税額の控除が受けられない。登壇したSBIビジネス・ソリューションズ 代表取締役社長 夏川雅貴氏は、「中小企業はこうしたインボイス制度の基礎知識や対応に必要な情報も持っていない。また、もともと少人数でバックオフィスを回しているため、インボイス対応が後手に回り、経営が悪化してしまう懸念がある」と指摘する。

 これに対して、請求QUICKは導入ハードルを極限まで下げた料金体系と中小企業にとって使いやすさにこだわり、「コストをかけずに業務効率化と法対応」を提供する。具体的には、初期・月額費用無料という特徴に加え、2023年7月からは5人までというユーザー数制限を撤廃し、何人でも無料となった。「無料の枠を収めようとして、アカウントを共用したり、業務が集中してしまうという声をいただいていた。より一層コストのハードルを下げた」と夏川氏は語る。

 これにより、請求QUICKの料金は請求書の発行枚数やインターネットの明細取得回数で決まる。請求書の発行枚数は、月50枚まで無料で、これを超えると1枚ごとに30円かかる。インターネットバンキングの明細取得は30回まで無料で、これを超えると30回ごとに300円がかかる。

 現在、請求QUICKはサービス開始から1年3ヶ月で申し込み企業は3000社を突破し、現在の新規獲得数は月300社ペースで推移しているという。業界トップ水準の新規獲得ベースだが、「僕らはもっと多くの中小企業に使ってもらえると思っていた」ということで、さらに導入社数を獲得していくという。

 東京以外の企業の利用割合が高いのも大きな特徴だ。サービス開始当初62%だった東京以外の利用割合は現在85%に増加しているという。この地方偏重傾向に大きく寄与しているのが、ラストワンマイルとして機能しているパートナーの地方銀行だという。今回はその代表として、島根銀行が登壇した。

地方の中小企業に届けるラストワンマイルとしての地銀

ラストワンマイルは人と人との信頼関係がものを言う

 大正4年創業の島根銀行は、島根県・鳥取市に20店舗・出張所を抱える第二地方銀行。2020年からビジネスマッチング契約を開始し、自らも経費BANKや請求QUICKを導入。2022年8月に請求QUICKのパートナープログラムに第一号企業として参加し、4月からは請求QUICKのビジネスマッチングを組織的に開始している。「10月からインボイス制度が始まるのに、地元の企業が乗り遅れては困ると言うことで、獲得目標の数字を設定した」(島根銀行 営業推進グループの永江敬氏)とのことだ。

島根銀行 営業推進グループの永江敬氏

 具体的には2月からSBIビジネス・ソリューションズを迎えて、営業店向けの勉強会やテスト申し込みの研修などを開催し、3月からは取引先にインボイス対応のヒアリングとアポイントの取得を開始。全営業店で勉強会を開催し、展開準備が整った時点で、5月から取引先を訪問したという。インボイス制度開始直前の9月末までに400件の獲得を全体目標として進めており、6月22日の時点ですでに254社まで獲得。「今のペースでは8月上旬までには400件の目標を達成したいと考えている」(永江氏)。

 島根銀行の永江敬氏は、請求QUICKを取引先に提案する場面で、業務の効率化や法対応への動きが遅いと感じたという。「中小企業の持っている情報が不足し、リソースやコストも限られている。当初提案しましたが、まだ時間あるんでしょとか、税理士にすべて任せているからなど、いま一つ真剣さが感じられなかった」と永江氏は振り返る。

 一方、SBIビジネス・ソリューションズの夏川氏は、「東京でやっている横文字の会社がやっているサービスなんて知らないし、使えないという声はいただいていた。われわれも直販の考え方で、初期費用も月額費用もかからないサービスなのに、なぜ導入してもえらないのか、わからなかった」と地銀との提携に至る前の状況を振り返る。

 こうしたメーカーとお客さまのギャップを埋めたのが、普段から顧客に近い地方の金融機関だ。夏川氏は、顧客との信頼感を築けている事業者とのパートナーシップがビジネスマッチングの成功の鍵だという。「デジタルなものをデジタルで紹介しても、たぶん普及はしなかった。やはり最後のラストワンマイルは人と人との信頼関係がモノを言うと感じている」とコメントする。

ビジネスマッチング成功のために必要なラストワンマイルの対面営業

 また、永江氏も「地域の課題をわれわれがしっかり受け止める、提携会社との信頼関係をいかに進めていくのが大事。これによって、われわれもきちんと理解できる、いい商品をお客さまにお勧めできる」と応じた。請求QUICKの導入を通じて顧客とのコミュニケーションが増加したこともあり、今後は本業支援のための提案や地域の活性化にもつなげていきたいという。

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