ネットワークミラーモード
「ミラードモードネットワーク」は、ホスト側のネットワーク機能を使うためのもの。現在は、WSLのLinuxカーネルにあるネットワークスタックが使われており、仮想ネットワークインターフェースと仮想的なネットワーク(仮想スイッチ)を介して、Win32側のNATを使って、LAN側のアクセスをしているがIPv6の利用などに制限がある。
ミラーモードネットワークは、NATを使わずにWin32側のネットワーク機能を使ってWSLのネットワーク接続をするもの。これによりIPv6やマルチキャストの利用や物理LAN側アクセスが可能になる。ただし、この機能は、Windows Insider ProgramのWindows 11プレビュービルドのうち、Canary Channel版およびWindows 11 Ver.22H2のRelease Preview Channel版(ビルド22621.2359)でしか動作しない。
このミラーモードに合わせて、WSL内でミラーモードで動作しているかどうかを確認するコマンド「/usr/bin/wslinfo」が用意された。具体的には、
/usr/bin/wslinfo --networking-mode
とすると、モードに応じて「nat」または「mirrored」を返す。
そのほかの機能
「DNSトンネリング」は、WSLでDNS名前解決の方法を変更するものだ。現在のWSLでは、Win32側をDNSサーバーとして仮想ネットワークを介してWin32側にDNSパケットを送信しているが、その解決がうまくできないことがある。DNSトンネリングは、仮想ネットワークを介さずに仮想マシンの機能を使って直接DNSリクエストをWin32側に送る。これにより、WSL側での名前解決が正しくできる可能性が高くなる。なお、この機能は、Canary/Release Preview Channel版でしか動作しない。
「Hyper-Vファイアウォール」は、WSLからのネットワークアクセスに対して、Hyper-V用のファイアウォールルールを適用することを可能にするものだ。これまでは、Windowsファイアウォールの全体設定ルールのみが適用されていた。この設定を有効にすると、仮想マシン内で動作するWSLに対して、Hyper-Vファイアウォールルールを定義し、フィルタリングすることが可能になる。このことでWSL独自のフィルタリングが実現される。ただし、この機能もCanary/Release Preview Channel版でしか動作しない。
「自動プロキシ」は、Win32側のプロキシ情報を使ってLinux側のプロキシ設定をするもの。プロキシ設定は、原則インターネットアクセスをするプログラム固有の設定項目だが、システム側から設定情報を提供する仕組みがある。
WindowsもLinuxもそれぞれプロキシの自動検出(Web Proxy Auto-Discovery、WPAD)や自動設定(Prox Auto-Config、PAC)の機能がある。ただしLinuxでは、WPADはディストリビューションごとに実装や設定が異なる。デスクトップ環境の起動時に処理されることもあって、必ずしもWSLでは利用しやすいものとは限らない。WSL V2.0の自動プロキシは、WSLディストリビューションに、Win32側で得たプロキシ情報を渡し、LinuxのWPADを代用するものだ。
バージョン番号がV1.3.7からV2.0.0に上がったことから、今回のWSLのバージョンアップは大きなものであることがうかがえる。ただ、原稿執筆時点では、すでにアップデートが4回行われ、最新のバージョンはWSL V2.0.4まで進んでいる。変更が大きな分、問題も出やすいのであろう。次回は具体的に拡張機能を動かして評価してみることにする。
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