ロードマップ作成からデータ基盤構築、社内定着化までトータルに支援メニューを揃える
中堅企業のデータ利活用をスモールスタートから支援、B-EN-Gが新サービス
2023年10月11日 11時00分更新
ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は2023年10月11日、中堅企業向けの新サービス「DX推進のためのデータ利活用アドバイザリーサービス」(以下、同サービスと略)を発表した。データ利活用をスモールスタートさせたい顧客向けに、パブリッククラウドのデータサービスを活用したデータ基盤構築などのサービスを提供する。
同サービスはすでに2023年6月から提供を開始しており、今回はその第一号顧客であるエレクトロニクス専門商社、東和電気の導入事例を公開した。
ロードマップ策定、データ基盤構築、データ利活用の定着化を支援
同サービスは、中堅企業におけるDX推進に向けたデータ利活用の取り組みを、B-EN-Gがトータルに支援するもの。ロードマップの作成支援から、データ管理基盤(DMP)構築支援、データ利活用の定着化までを、パブリッククラウドの各種サービスも活用しながら支援するメニューを揃えている。
ロードマップ作成支援サービスは、顧客が取り組むべきデータ利活用のテーマ、期待できる効果、コスト、最終ゴール案をまとめ、ロードマップとして提示するもの。およそ3カ月間をかけて実施するもので、5回程度のディスカッションを通じて顧客の事業計画や課題、ニーズなどをヒアリングし、ロードマップにまとめる。想定費用(税抜)は150万円から。
DMP(データマネジメントプラットフォーム)構築支援は、B-EN-Gが持つ構築方法論をベースに、およそ3カ月間でパブリッククラウド上のデータ管理/分析基盤構築を支援するもの。利用するパブリッククラウドはMicrosoft Azure、Amazon Web Services(AWS)など、顧客のニーズに沿ったものを選択する。費用は個別見積もり。
データ利活用促進サービスは、B-EN-Gの専門チームが顧客と伴走しながら、ロードマップ進捗や課題解決をフォローしていくサービス。6カ月単位での契約で、想定費用は月額15万円から。
これら3つを標準サービスメニューとして、顧客ごとに適したアドバイザリーサービスを提案、展開していく方針。B-EN-Gでは「今年度中に3件の受注を目指す」としている。
B-EN-Gでは2021年4月に専門組織「DcXビジネス推進部」を立ち上げ、顧客のデータ活用を支援する活動を展開してきた。顧客企業内外にあるデータの活用によって、これまで製造業の計画精度向上や製品品質のトレンド分析、従業員の安全管理といった分野で成果を上げているという。今回はこの動きを中堅企業層にも拡大する目的で、あらためてサービスのノウハウとメニューを整えた。
DcXビジネス推進部長を務める浅井守氏は、中堅企業の場合、データ利活用にかけられる予算や人的リソースに限りがあり、専任人材やデータ管理基盤も整っていないと指摘。パブリッククラウドを活用しながらデータ利活用をスモールスタートさせ、同時に顧客企業内でのデータのサイロ化も解消して、生産性やビジネス価値の向上を支援していくと語った。
「まずは、小さなテーマでもよいので『こういう分析をしたい』『こんな活用をしたい』と定め、ロードマップをしっかり作って進める。次に、パブリッククラウドを活用してクイックに、リーズナブルにデータ基盤を構築する。そして、成果が出るプロセスをきちんと回せるように利活用の定着化を図る。そういったことを、中堅企業のお客様にしっかり寄り添って支援していく」(浅井氏)
東和電気:まずはレポート作成の自動化からスモールスタート
同サービスの第一号顧客である東和電気は、アジアを中心に10カ国/25拠点でビジネスを展開するエレクトロニクスの専門商社だ。およそ1500社のサプライヤーとの取引があり、B-EN-Gの海外進出企業向けERP「mcframe GA」を導入している。
今回の発表は、東和電気が同サービスを採用してDX基盤の整備に着手したという内容だ。現在はそのステップ1(第一段階)として、経営の意思決定に必要なレポート作成の自動化を進めているという。
従来、東和電気は複数システムのデータを手作業でピックアップし、「Excel」のスプレッドシートに集約して資料を作成していた。このレポート作成を、Azure上に構築したデータ基盤と「PowerBI」を使って自動化した。なお、Azureで構築したデータ基盤のランニングコストは「月額10万円を切る程度」(B-EN-G担当者)だという。
B-EN-Gでコンサルティング・ディレクターを務める勝間大成氏によると、昨年12月から今年3月の期間で、東和電気ではおよそ30のPowerBIレポートを構築したという。なお、このレポート構築作業は顧客側主体で行い、B-EN-Gがそれを側面から支援するかたちをとっている。
「中長期的な観点から、今後お客様が主体になってレポートを作ってもらうために、またコストを抑えるために、そういう形態をとった」「営業部門などから新たなレポートのニーズも上がってきており、顧客の情報システム部門でそのレポートを作成し始めている」(勝間氏)
ロードマップによると、今後のステップ2ではデータ利活用を社内各部門に浸透させるとともに、統計解析や機械学習を活用したデータ分析も進めていく。続くステップ3では、データ分析基盤を高度化し、全社レベルでのデータ共有や活用を進めていく方針だ。
今回の発表では上記のような説明となっているが、勝間氏は、東和電気に対してはより具体的なビジネス成果も示しながらロードマップを説明したことを明かす。
東和電気では、ベテランのセールス社員が持つ暗黙知(取扱商品を組み合わせた顧客提案)の、若手社員への継承が課題となっていた。そこでB-EN-Gからは、ステップ2でそうした提案データベースを構築し、ステップ3ではそのデータベースを使って取引先との情報共有、共創ビジネスモデルの構築を実現していくことを提案したという。
「もっとも、中堅規模のお客様がいきなり『ステップ3』のことばかり取り組んでも、なかなかうまくいかないのが現実。そこでステップ3のことはあえて申し上げず、一から(ステップ1の小さな取り組みから)地道にやっていきましょう、とご提案した」(勝間氏)