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“超省エネ”データセンター「Green Nexcenter」、クラウド型セキュリティ+アクセス回線融合「docomobusiness RINK」

NTT Com、直接液冷コロケーションとセキュリティ統合NaaSの2サービスを発表

2023年10月05日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2023年10月4日、直接液冷方式のサーバーに対応した“超省エネデータセンターサービス”の「Green Nexcenter」と、ゼロトラストセキュリティ対応のクラウド型統合ネットワークサービス(NaaS:Network as a Service)である「docomo business RINK」を発表した。

 同日開催された記者発表会では、同社執行役員の金井俊夫氏がそれぞれのサービスの詳細を説明したほか、新サービスの提供に至った市場背景や顧客ニーズなどを紹介した。

直接液冷方式コロケーションサービス「Green Nexcenter」の概要

クラウド型セキュリティ+ネットワークサービス「docomo business RINK」の概要

記者発表会に出席した、NTTコミュニケーションズ 執行役員 プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部長の金井俊夫氏

Green Nexcenter:省エネ性能に優れた液冷方式コロケーションサービス

 Green Nexcenterは、直接液冷方式に対応する国内初(同社調べ)のデータセンターサービス(コロケーションサービス)。直接液冷方式は、データセンター内の冷却設備からラック内の液冷対応サーバーに冷却液(水)を供給し、CPU/GPUチップ上の冷却プレートを直接冷却して排熱をサーバー外に回収する仕組みだ。従来の空冷方式よりも冷却効率が高く、冷却にかかる消費電力も削減できる。

直接液冷方式(Direct Liquid Cooling)の概要。液冷対応サーバーに冷却水を供給できる設備とラックを備えたコロケーションサービスを提供する

 金井氏は、液冷方式のコロケーションサービスを提供する大きな背景として、顧客企業において生成AIなどの目的で高発熱なGPUサーバーの導入ニーズが高まっていることを挙げた。実際に2022年度の後半から今年度の上期にかけて、液冷対応データセンターに対する顧客企業の問い合わせが急増しているという。

 従来の空冷方式で対応できる1ラックあたりの消費電力(≒発熱量)は、最大15kW程度が目安だという。しかし、大規模生成AI向けのGPUサーバー「NVIDIA DGX H100」を2台設置すると、その最大消費電力は20.4kWとなる。つまり、空冷方式ではすでに冷却能力が間に合わなくなっているのだ。

 「そのため現状の空冷方式データセンターでは、本来は1ラックに収まる2台のGPUサーバーを1ラックに1台ずつ格納し、2ラック、3ラックぶんのスペースを使って無理やり冷却するようなことが行われている。まったく非効率だし、サステナビリティの観点からも課題がある」(金井氏)

 ここで、1ラックあたり最大80kWの発熱量まで対応する直接液冷方式を採用することにより、高発熱GPUサーバーも1ラックに収められる。

1ラックの消費電力が15kWを超えると、従来の空冷方式では冷却能力が不足し、サーバーの安定稼働が困難になる

 直接液冷方式では、特に発熱の大きなCPU/GPUなどをダイレクトに冷却するため、サーバールーム全体の空気を冷却する空冷方式よりも消費電力を抑えることができる。今回のGreen NexcenterではpPUE=1.15を実現し、これまでのNexcenterサービス(空冷方式)比で消費電力を約30%削減できるという。

 ちなみに同社の実証実験施設「Nexcenter Lab TOKYO」では、直接液冷方式だけでなく「液浸冷却方式」「水冷リアドア方式」の検証も行っている。ただし現状では、液浸冷却方式は「冷却性能に優れるもののオペレーションが大変」、リアドア方式は「冷却性能がやや低く、騒音が非常に大きい」といった課題があるという。従来のデータセンターオペレーションと変わらず、液冷方式対応サーバーが主要メーカーから提供され始めたこともあって、今回は液冷方式の商用サービス化に至ったと説明した。

 Green Nexcenterサービスは、まず2024年の第4四半期に既設の「横浜第1データセンター」の一部設備を液冷方式対応にリノベーションするかたちで提供を開始する。また、2025年内に新設する「京阪奈データセンター(仮称)」では液冷方式対応を標準装備とし、以降の新設データセンターについてもGreen Nexcenter化を推進するとしている。

 さらに金井氏は、将来的には、NTTグループ全体で取り組む低消費電力なネットワーク「IOWN APN(オールフォトニクスネットワーク)」の技術も組み合わせ、Green Nexcenter間をIOWN APNでつなぐ“超低消費電力ICT基盤”を実現していきたいと語った。

将来的な構想として、Green Nexcenter間をIOWN APNでつなぐ“超低消費電力ICT基盤”も紹介した

docomo business RINK:ネットワーク+セキュリティをクラウドサービス化

 もうひとつ発表されたdocomo business RINKは、ネットワークサービスとクラウド型セキュリティサービスを一体型で提供する。「RINK」というサービス名は“Resilient Integrated NetworK(回復性を持つ統合ネットワーク)”という意味で名付けられたという。

 金井氏はまず、リモートワークの定着、オフィス内でのWeb会議の利用増加、セキュリティ対策の煩雑化とコスト増大、迅速な拠点展開に対応できるネットワーク敷設の迅速化といった、企業ネットワークを取り巻く顧客ニーズの変化に触れた。

 こうした企業ニーズに対応するべく、NTT Comとして「クラウド型セキュリティ」「オープン/クローズド接続」「モバイルアクセス/固定アクセス」の3つを融合させ、それら全体をソフトウェアで管理(Software-Defined化)する新しいサービスとしてRINKを開発したという。

「クラウド型セキュリティ」「オープン/クローズド接続」「モバイルアクセス/固定アクセス」の3つを融合させたNaaS、docomo business RINKを開発

 金井氏はRINKの特徴として、大きく3つのキーワードを挙げて紹介した。

 まずは「スピーディかつセキュアなICT環境の実現」だ。RINKでは、5G SIM内蔵の専用レンタルルーターを利用して、モバイルアクセスと固定アクセスの両方に対応する。モバイルアクセス回線は工事不要ですぐに使える(最短10営業日で開通)ほか、固定アクセスの高速バックアップ回線としても利用が可能だ。また、Webサイトから回線の申込、変更、廃止がすぐにできる点も大きな特徴としている。

専用ルーターは5Gモバイルアクセス/固定アクセスに両対応。また回線の申込/変更/廃止はWebから即座にできる

 2つめの特徴は「ハイブリッドワークをどこでもセキュアに快適に」である。その中でも金井氏は「Web会議の快適化」を強調して説明した。

 現在はオフィスからWeb会議に参加するユーザーも増えており、それがVPN回線帯域を圧迫すればオフィスネットワーク全体の快適さが失われることになる。RINKでは、ローカルブレイクアウト機能を使って、Web会議の通信だけを直接インターネットにアクセスさせることができる。さらに、利用するインターネット帯域をWebポータルからオンデマンドに拡張(3倍に増速)させることも可能だという。

 「たとえば、Web会議の利用者が多い日は帯域を3倍に拡張する、『今日は全社のWeb会議がある』という日は通信を(ローカルブレイクアウトで)分離する、そしてWeb会議が終わったら元に戻す――そういった使い方ができる。これらの操作はすべてWebポータルから(セルフサービス型で)でき、数分程度で適用される」(金井氏)

 RINKの利用料金については「現在検討中」だが、このローカルブレイクアウトと帯域拡張のオプションについては「1日中使ってもワンコイン、500円程度の価格帯で提供したいと考えている」(金井氏)と述べた。

Webポータルからの操作で、一時的なネットワークの帯域拡張や特定通信の分離(ローカルブレイクアウト)が可能

 3つめの特徴は「リーズナブルにセキュアなICT基盤を実現」だ。RINKはクラウド型セキュリティとネットワークを統合してサービス提供する。金井氏は、企業自身がセキュリティ機器(SD-WANゲートウェイなど)とライセンスを個別に導入、運用する必要がないほか、テンプレートの提供により個別の設計やインテグレーションも必要ないため「非常にリーズナブルに利用できる」(金井氏)と説明している。

セキュリティ機器の導入や運用が必要なく、またテンプレートの提供で設計も不要のため、リーズナブルな価格で利用できるとしている

 なお現時点では、RINKが提供するセキュリティ機能は「企業の利用頻度が高いセキュリティ機能」(発表より)とだけ触れられており、機能群の詳細については明らかになっていない。

 docomo business RINKは11月30日から提供を開始する。提供開始時の固定アクセス回線メニューはベストエフォート型だが、来年6月をめどに帯域保証型のサービスも追加する。販売ターゲットとしては、大企業から中堅企業を中心に中小企業層への展開も目指すとしており、販売目標は「5年間の累計で1000億円」(金井氏)と述べた。

 また今後の展開として金井氏は、IoT/OT環境におけるセキュリティリスクの高まりを背景として、IoT/OTデバイスを接続するネットワークにも適用先を拡大し、それらに合わせたセキュリティ機能の拡張を検討していくと語った。

 なお今回発表されたGreen Nexcenterやdocomo business RINKについては、10月12日と13日に開催される「docomo business Forum’23」において、実機やデモ環境が展示される予定だ。

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