このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

山本 敦の「新選! オーディオレポート」 第12回

ドルビーアトモスやサステナ対応が加速! ドイツで見たオーディオのトレンドと最新製品

2023年09月29日 19時30分更新

文● 山本 敦 編集●飯島恵里子/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アーバニスタの光充電に対応するワイヤレススピーカー「Malibu」

AIよりもサステナに関心
光充電に対応するアーバニスタのワイヤレススピーカー

 2023年のIFAではジェネレーティブAI(生成AI)に関わる展示がもっと見られると思っていたのですが、実際に会場を埋め尽くしたテーマは「サステナビリティ」でした。

 ヨーロッパの企業、コンシューマーは元からエコフレンドリーな生活様式への憧れと理想を強く持っています。さらに、昨今は新型コロナウイルス感染症によるパンデミックや、ロシアによるウクライナ侵攻のあおりを受けてエネルギー価格が高騰しています。だからこそ、家庭の生活費を継続的に圧縮・節約ができる「サステナブル機能」を持つ家電に必然的な注目が集まっているのだと筆者は受けとめました。

 オーディオ製品に「サステナ化」の波は押し寄せています。例えばスウェーデンのオーディオブランドであるUrbanista(アーバニスタ)には太陽の光やLEDシーリングライトなどの人工照明の光を受けて、内蔵するバッテリーを充電するソーラーセルシートを組み込んだ製品があります。新製品のワイヤレススピーカー「Malibu」も発表。9月末にヨーロッパで販売します。

 Malibuは天板にUrbanistaと同じスウェーデンの企業、Exegerが開発した「Powerfoyle」という技術を活かしたセルシートを組み込んでいます。スピーカーの電源をオフにした状態でもチャージができるので、時間はかかりますが「放っておけば充電してくれるスピーカー」なのです。価格は149ユーロ(約21000円)とお手頃なうえ、サイズを超える力強い音が鳴らせるスピーカーです。元はゼンハイザーのハイエンドオーディオを設計していた名エンジニアのアクセル・グレル氏が音づくりを指揮した製品だと聞いて、筆者はその音の良さに合点がいきました。

 曇り空の日の屋外光(約5万0000ルクス)を目安として、充電ゼロの状態から満充電までにかかる時間は約60時間と長めです。でも、使わない時間に置いておくだけで充電してくれるわけだし、USB充電を併用するにせよ光充電の分は「節約」に結び付いていると解釈できます。使い続けるほどにサステナブルなオーディオであることを実感するはずです。

光充電に対応するアーバニスタのワイヤレスヘッドホン「LOS ANGELES」。こちらの製品は日本でも販売されています

 Urbanistaでは既にワイヤレスヘッドホンや、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンにもPowerfoyleのセルシートを組み込んだ商品を販売しています。そしてIFAにはUrbanistaのほかにもソーラー充電を併用して、バッテリーの減りを緩やかにできるサステナブルなオーディオを出展するメーカーがいくつもありました。

 過去には、JBLもソーラー充電機能を搭載するワイヤレスヘッドホンの開発にチャレンジしたこともあります。もしかすると来年以降のIFA会場は「充電の要らないワイヤレスオーディオ」であふれているかもしれません。

 

筆者紹介――山本 敦
 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン