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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第101回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 9月16日~9月22日

ソフト企業の89%が「AI活用で差別化」、「インボイス対応済み/予定」大企業は82%、ほか

2023年09月25日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2023年9月16日~9月22日)は、ソフトウェア企業におけるAI活用戦略や開発人材への影響、2023年上半期のマルウェア検出数、大企業におけるインボイス制度対応状況や免税事業者への態度、IT部門におけるトレンドを紹介します。

■[人材][AI]ソフトウェア企業の89%がAIで差別化図る、AIにより品質管理担当は減少か?(ベイン・アンド・カンパニー、9月20日)
・ソフトウェア企業の89%が差別化にAIを活用
・AIの影響を多く受ける職務は「エンジニアリング」「セールス・マーケティング」
・今後2年で人材削減の可能性が最も高いのは「品質管理と検査」

 570人以上の経営幹部を対象にした調査をまとめた「グローバルテクノロジーレポート 2023」より。「AIが期待に沿っている」という回答は75%を占め、「AI活用により成果物の品質を下げることなく短縮できる作業時間」は、平均でおよそ20%としている。ソフトウェア企業の89%が「AIを活用して製品の差別化を図っている」と回答しており、これは他業界より15ポイントも高い。今後2年で開発分野の人材に与える影響を聞いたところ、「今後より多くの人材が必要」なのは「LLMのスキルのあるソフトウェア開発者」と「AI/ML人材」という回答が多く、一方で人材を減らす可能性が高いのは「品質管理と検査」だった。

「今後2年間で、AI導入によってソフトウェア開発関連の職種がどのような影響を受けるか」を尋ねた。左から「LLM実装スキルのあるソフトウェア開発」「AI/ML人材」「リーダーと幹部」「プロジェクトマネジメント」「ユーザー体験とデザイン」「伝統的なソフトウェア開発者」「品質管理と検査」(出典:ベイン・アンド・カンパニー)

■[セキュリティ]2023年上半期のマルウェア検出数は2019年以降最低レベル(キヤノンマーケティングジャパン、9月21日)
・2023年上半期のマルウェア総数は2019年以降で最低
・ファイル形式はJavaScriptが56%、HTMLは15%
・フィッシング詐欺におけるWeb3プロトコル(IPFS)悪用が増加

 2023年1月~6月に発生したサイバーセキュリティの脅威動向やマルウェアなどをまとめた「2023年上半期サイバーセキュリティレポート」より。同期間にESET製品が検出したマルウェア数は、2020年上半期以降最も低い数となった。検出最多は国内・外ともに「JS/Adware.Agent」。Web3で使われる「IPFS(InterPlanetary File System)」(P2Pネットワーク上で分散稼働するプロトコル)を悪用したフィッシング詐欺が増えていることも報告している。

2023年上半期のマルウェア検出数は2022年下半期から減少。2019年下半期比で121%となった(出典:キヤノンマーケティングジャパン)

検出されたマルウェアのトップ10(左:日本、右:世界)。日本/世界ともに「JS/Adware.Agent」が最多だった(出典:キヤノンマーケティングジャパン)

Web 3プロトコルのIPFSを悪用した攻撃が増えている(出典:キヤノンマーケティングジャパン)

■[インボイス]大企業の40%がインボイス制度に対応済み。54%が「課税事業者への移行を依頼」(ウイングアーク1st、9月20日)
・「インボイス制度に対応済み」は40%
・23%が「Peppol(ペポル)」を用いた商取引に対応予定、対応しないは18%
・適格請求書発行事業者の登録申請は55%が「登録申請済み」

 年商100億円以上の企業で請求書関連業務に携わる会社員513人を対象に、インボイス制度と企業間取引電子化への対策について調べた。調査実施は2023年8月下旬。インボイス制度への対応は「対応済み」が40.2%、「対応に向けて具体的に動いている」は42.5%だった。標準仕様の「Peppol(ペポル)」を用いた商取引への対応については、「対応予定」が23.4%。一方で「対応しない予定」は、前回調査(2022年12月)の7.8%から2倍以上となる16.8%だった。適格請求書発行事業者の登録申請は5、5%が「登録申請済み」、31.2%が免税事業者の取引先に課税事業者への移行を「依頼済み」、22.8%が「依頼予定」と回答した。

年商100億円以上の企業における、インボイス制度への対応状況(出典:ウイングアーク1st)

適格請求書発行事業者の登録申請状況(出典:ウイングアーク1st)

取引先の免税事業者が課税事業者への転換をしなかった場合、51.5%が影響があると見ている(出典:ウイングアーク1st)

■[トレンド]すべてのアプリ開発の要求に対応できるIT組織は22%、59%が「ビジネスからの需要対応に苦心」(セールスフォース・ジャパン、9月20日)
・ITリーダーの78%が「近い将来、生成AIが組織で大きな役割を担う」と予想
・59%が「ビジネスからの需要への対応に苦心」
・すべてのアプリケーション開発の要求に「対応できる」は22%にとどまる

 日本企業200社を含む28カ国のITリーダー4000人を対象に、アプリケーション開発、IT部門に影響を与える動向を調べた。調査実施は2023年2月末~4月初。AIについては、日本のITリーダーの78%が「近い将来、生成AIが組織で大きな役割を担う」と予想、一方で63%が「倫理面での懸念」を示した。59%が「ビジネスからのIT需要の対応に苦心」しており、「今後1年半で需要増を予想する」人は73%だった。すべてのアプリケーション開発のリクエストに応じることができるIT部門は22%にとどまる。また「ローコード/ノーコード開発ツールを利用している」企業は58%にのぼった。

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