業務を変えるkintoneユーザー事例 第199回
急増した社員が次々に辞め、たった1人残ったどん底からV字回復を実現
ジェットコースターのような復活劇の裏にkintoneあり
2023年09月15日 12時00分更新
2つのシンプルなアプリで営業と開発の情報を共有
河本氏は再建にあたり、2つのkintoneアプリを開発した。1つは「要望登録用オンラインツール」で、クライアントの要望を書き込むツールだ。営業担当者は、このツールを介して開発担当者と情報を共有する。
もう1つのアプリは、営業担当者の「To Doリスト」だ。要望登録用オンラインツールに入ったデータを、営業担当者ごとのTo Doリストに自動で転記するため、すべきことの見落としがなくなった。
「kintoneのTo Doアプリは、誰でも明日から作ることができるほど簡単」だと河本氏は言う。状態や優先度、担当、納期などに加え、機能の名称を登録しておくことで、懸案だった過去のタスクの検索を容易にした。
「To Doリストと要望登録用ツールを紐付けたことで、クライアントごとに何が終わって、何が終わっていないかを一覧表示できるようになった」(河本氏)
簡単な2つのアプリで業務の抜本的な改善を進めた河本氏だったが、最初の利用定着には苦労した。
とにかくkintoneに入力してもらわなければはじまらない。そこで最初は、顧客名、締め切り日、担当者、要望内容の4つの要素だけを登録させることにした。「入力がめんどうだと思わせないように、メールをイメージして、実装は最小限の要素にとどめた」(河本氏)
この項目のうち「要望内容」は、メールでいえば本文に相当するので、いろいろなことが書かれたテキストになる。河本氏はこのテキストの中身を分析し、頻繁に出てくる文字を抽出した。そして、よく使われていた内容から、「添付ファイル」「kintone機能名」「状況」の3つをアプリの新たな項目に追加した。
ここまでの開発でいい感触を得た河本氏は、次にkintoneのワークフローを導入しようと考えた。しかしこれは大失敗だったという。「ワークフローで完了のタスクを回してみようとしたが、全く機能しなかったので、きっぱりあきらめた。うまくいかなければすぐに止められるのも、kintoneのいいところだ」(河本氏)。ワークフローで回す代わりに、To Doアプリに「納品希望日」「完了日」を追加して管理することにした。
未経験でも入社1年で顧客とアプリを開発
2つのアプリ導入によって、メンバー同士の仕事が可視化でき、思いやりのある仕事の進め方ができるようになったと河本氏は語る。
講演ではここで、同社で営業や開発を担当している大森氏が、現場の業務改善をビデオメッセージで伝えた。大森氏の前職は自動車ディーラーの営業で、kintoneはまったくの初心者だったが、すぐに慣れたという。大森氏は、kintoneのメリットを次のように語っている。
「簡単な連絡はkintoneのスペースを利用して、メモを書いている。LINEなど他のSNSなどを使わなくてもkintoneでコミュニケーションがとれるので、ツールを使い分ける必要がなくなった」(大森氏)
また、同社はクライアントが全国にあるため、社長の河本氏は出張が多い。大森氏は、kintoneを使うことで出張中の河本氏との連絡や情報共有がしやすくなったと話す。
同社は弁護士事務所の他に、児童養護施設、福祉施設などのシステム開発もしており、大森氏はその担当をしている。簡単なシステムの修正であれば、大森氏自身がkintoneアプリに手を入れているという。「kintoneはカスタムが自由なので、入社1年の私でも使いこなすことができる。今後もお客さまと密にコミュニケーションしながら、アプリの改善を進めたい」(大森氏)
河本氏は、初心者の大森氏でもアプリが開発できている理由は、営業と開発をつなぐ2つのkintoneアプリの導入で、過去のアプリ開発の事例を検索できるようになったことが大きいという。また、kintoneアプリの導入によって、以前はギスギスしていた社内の連絡も、思いやりや気遣いのあるメッセージの交換に変わった。
河本氏は今回の経験から、会社にとってのDXの重要性を実感している。「生産性の向上や業務効率化が図れなければ、経営は苦悩しかない。生産性向上を実現してはじめて、どんな企業文化にするかなどを考えられるようになる」(河本氏)
河本氏は、個人のミッションとして「“人だから、人らしい仕事をする”という風土を創る」を掲げている。kintoneによる会社の再建によって、このミッションの実現へ一歩近づいた。

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