前回予告したように、今回もMeteor Lakeの話であるが、その前に前回の記事に関して注釈をいれたい。
タイトルが「Meteor Lakeは歩留まりが50%でも月産約36万個」となっているので、「Intel 4の歩留まりは50%らしい」と誤解されている読者がおられるようだが、筆者はあくまで「例えば歩留まりが50%だとしても」と書いているだけで、まだ歩留まりがどの程度かは明らかになっていない。もっともインテルにとってこれは最初のEUV(極端紫外線)を利用したプロセスなので、高い歩留まりが実現できるのか? というと「?」ではあるのだが。
あと、インテルはIntel 4でEUVを利用しているとは説明しているが、EUVを「どこでどのように」使っているかに関してはまだ情報を開示していない。Intel 4のジオメトリは2022年のVLSI Symposiumで公開されており、これは連載675回で説明したが、デザインルールで言えばFin(つまりトランジスタ層)とM0~M4のeCU(Enhanced Cupper)を利用した配線層がEUVの適用範囲と考えるのが普通である。
もっともこのトランジスタ層や配線層は、1層を作るのに数回~数十回の露光→エッチングの過程が必要になる。これを全部EUVでやっているのか、それとも従来の液浸+ArFのマルチパターニングも併用しているのか、などに関してはまだ明らかになっていない。
普通に考えたら、これを全部EUVで実行すると猛烈にスループットが悪化する(連載734回で指摘したとおり、Intel 3や20A/18Aの開発もあるため、Intel 4の生産のためにEUVの露光機が山ほど使えるわけではない)ことを考えると、ある工程はEUV、別の工程はArF+液浸のマルチパターニング、という感じに両方を併用している可能性が高い。
したがって、EUVの歩留まりを考える場合、EUVの露光がどの程度の割合なのかも同時に考える必要がある。このあたりの話は今のところ不明なままである。
ついでに書いておけば、William Grimm氏は「アイルランドのFab 34は最初のIntel 4の量産工場であるが、現在はテストチップを流している状態であり、まだ量産には至っていない」と説明していたわけだが、そのFab 34に関してテストチップでの検証が完了し、量産を開始できる状況になったことが8月22日に発表になった。
もっとも一番知りたい「ウェハーの生産量と歩留まりはどの程度?」についてはもちろんなにも発表がない。ただD1以外にFab 34でもウェハーの量産ができるようになったことで、「仮に」Intel 4の歩留まりが低いとしても(低いかどうかはわからない。あくまで最悪の状況を想定しての話である)、それなりの数量のMeteor Lakeが出荷可能になるとは思われる(*1)。
(*1) インテルがi386の量産を開始した当初の歩留まりは1個/2ウェハー(ウェハーを2枚製造して稼働するものが1個程度)だったそうで、ここまで低いと量産云々の話ではないのだが、さすがにここまで低いとは思えない、というか思いたい。
Meteor Lakeで導入した新しい省電力向けのアーキテクチャー
さてHot Chips 2023(今年から名前の付け方が変わった:従来の方式ならHot Chips 35になる予定だった)でインテルは“Intel Energy Efficiency Architecture”なる講演をEfraim Rotem氏(Client SoC Architecture, Design Engineering Group)が行なった。これだけだとなにがターゲットかわからないのだが、下の画像からMeteor Lakeの話が主眼だと理解できる。
Meteor Lakeの細かい構造などは未公開(これらの詳細は先送りにされてしまった)であるが、Meteor Lakeで導入した新しい省電力向けのアーキテクチャーとその実装のアイディアが公開された。
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