マイクロソフトは、同社の消費者向け製品、Webサイト、およびサービスを使用する際に適用される「Microsoft サービス規約」の最新版を公開。これまで記載のなかったAI関連サービスに関する規約が追加された。新しい規約の発効日は9月30日を予定している。
「お客様のコンテンツ」の定義を拡張
それでは変更内容を見ていこう。
まず「お客様のプライバシー」セクション内の「お客様のコンテンツ」の定義が変更されている。
お客様のコンテンツとは、お客様と他のユーザーとのやり取り、お客様が本サービスを通じてマイクロソフトに送信する投稿、ならびにお客様が本サービスを通じてアップロード、保存、放送、または共有するお客様のファイル、写真、文書、音声、デジタル作品、ライブストリーム、およびビデオを意味します
お客様のコンテンツとは、お客様と他のユーザーとのやりとり、お客様が本サービスを通じてマイクロソフトに送信する投稿、ならびにお客様が本サービスを通じてアップロード、保存、放送、作成、生成、または共有するお客様のファイル、写真、文書、音声、デジタル作品、ライブストリーム、およびビデオ、またはコンテンツを生成するためにお客様が送信する入力を意味します
太字部分が新たに追加された文言だ。つまり、ユーザーがAIサービスを利用して作成・生成したコンテンツおよびプロンプトも「(マイクロソフトではなく)お客様のコンテンツ」とみなすということだ。
ジェイルブレイクの禁止
「倫理規定」セクションにも追加文言がある。
本サービスのアクセス制限または使用制限を回避してはなりません。
本サービスへのアクセス、使用、その利用可否に関する制限を回避してはなりません (AIシステムや容認できないスクレイピングの「ジェイルブレイク」を試みるなど)。
以前からあったサービス自体へのアクセスや使用制限の回避を禁じる項目に「AIシステムや容認できないスクレイピングの"ジェイルブレイク"を試みるなど」と具体的に「ジェイルブレイク」という手法の禁止を強調している。
ここでいうジェイルブレイクとは主にBingチャットなどで様々なテクニックを駆使してシステムの制限、具体的にはアダルト、犯罪、非倫理的な反応などを引き出す手法を指すのだろう。
AIサービスに関する規定はかなり厳しめ
マイクロソフトが提供する個々のサービス固有の規約が書かれた「サービス固有の条件」には、新たなサービスとして「AIサービス」の項目が設けられた。ここに書かれている規約は5点。
お客様は、モデル、アルゴリズム、およびシステムの基盤となるコンポーネントを見つけるために AI サービスを使用することはできません。たとえば、モデルの重み付けを調べて削除しようとしてはなりません。
リバースエンジニアリングとは、プログラムなどを解析することで、その仕組みや設計を理解しようとする手法のこと。一般ユーザーにはあまり関係はないが、競合への技術の流出を防止するのが意図だろう。
お客様は、明示的に許可されている場合を除き、AIサービスからデータを抽出するために、Webスクレイピング、Webハーべスティング、またはWebデータ抽出方法を使用することはできません。
意図された方法以外でAIから情報を抽出することを禁じている。
AIサービスまたはAIサービスのデータを使用して、他のAIサービスを(直接と間接とを問わず)作成、トレーニング、または改善することはできません。
マイクロソフトの製品を他のサービスを作製したり改善することに利用することを禁じている。こちらも主に競合他社を意識した条項だろう。
AIサービス提供の一部として、マイクロソフトは、サービスの不正または有害な使用や出力を監視および防止する目的で、サービスへの入力およびサービスからの出力を処理し、保存します。
ユーザーがAIに対して入力したプロンプトや素材となる画像、そしてAIが生成したテキストや画像などはすべてマイクロソフトによって監視のため保存されるとある。悪用防止を建前としてはいるもののここまではっきり書いてあるのは珍しい。
適用される法令(著作権侵害またはお客様によるAIサービス使用時のコンテンツ出力に関するその他の申し立てを含むがこれらに限定されない)を遵守してお客様によるAIサービスの使用に関する第三者の申し立てに対応する責任は、お客様自身が単独で負うものとします。
ここも重要。ユーザーがAIを使って生成したコンテンツで訴えられてもマイクロソフトは一切関知しないということが書かれている。
規約の最後には「ライセンス条項」として下記の項目がある。
現在マイクロソフトのサービスを利用中で新規約に納得できない人は発効日となる9月30日までに利用を中止する必要がある。