生成AI活用の実情、すぐれた成果を上げる「トップCEO」の特徴、CIOやCDOなど技術幹部への期待など
「AIが企業価値と変革力を増幅」IBMがグローバルCEO調査レポート公表
2023年08月14日 07時00分更新
生成AIに対するCEOの意識と取り組みの実情は
生成AIに関する追加調査では、CEOの75%が「AIの良し悪しが競争優位性を決める」、69%が「生成AIのメリットは全社に広く及ぶ」と回答している。すでに50%は「生成AIを商品やサービスに組み込んでいる」、また43%が「生成AIを戦略的な意思決定に利用している」という。
CEOは生成AIの活用に対して、さまざまな潜在的利益を期待している。具体的回答としては「売上あるいは収益の改善」が57%、「コンテンツの品質向上」が53%、「組織能力の拡大」が51%、「顧客獲得コストの削減」が49%、「競争上の優位性」が48%など。また生成AIによって、意思決定における「適応性」「実行可能性」「スピード」「インサイト」の改善が期待できると考えるCEOはおよそ4分の3に上った。
その一方で、「生成AIの導入に十分な専門知識が社内にある」という回答は29%にとどまり、生成AIへの対応のために「生成AIに関する人員を新たに追加した」という回答は46%に達した。また、生成AI活用に向けた懸念点としては、「データリネージュ/プロビナンス」「データセキュリティ」「独自データの不足」などが上位に挙がる。
「日本の企業においては『生成AIを使ってみる』フェーズは終わり、拡張した検索機能を追加することで、データの鮮度や品質に関する課題解消を進めている段階にある。だが、データガバナンスやデータアーキテクチャー、権限設定などに関しては遅れている印象がある」(村田氏)
こうした懸念はあるものの、多くのCEOが「今後1年以内に、ほとんどのユースケースで生成AIの活用を計画している」という。
なお、生成AIの導入を背景として「人員を追加採用した」CEOは46%、反対に「人員を削減/再配置した」は43%だった。「人員に与えうる影響評価」を実行できているCEOは28%にとどまり、「試行錯誤、暗中模索」の段階だと分析されている。
「生成AIが普及することで、反復が多い業務においては雇用への影響が出るだろう。IBMでは、顧客接点を持たない業務において、今後5年間で30%の生産性改善が可能になると予測している。ただし、Aiのガバナンスに関する新たな業務も発生するため、ここでは雇用が生まれ、新たなスキルが求められることになる」(村田氏)
「IBM watsonx」をはじめとする生成AIへのアプローチを紹介
同発表会では、日本IBMによる生成AIへのアプローチについても紹介した。
日本IBM IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー パートナーの田村昌也氏は、「CEOスタディでは、世界中のCEOが積極的にAIの活用を推進し、広範な分野で活用したいと考える一方で、期待と現実の間にギャップがあることがわかった」と指摘した。たとえば、生成AIによる広範な利益を期待しているCEOは69%にも及ぶが、責任を持って活用できる準備ができているのは30%にとどまる、といったギャップだ。
「AIを業務のなかで本格的に採用する際には、信頼性の担保、データの活用、既存業務プロセスやIT連携といった課題にぶつかる。PoCまではスピード感を持って取り組むことができても、本格導入になると様々な課題が生まれ、スピードが落ちてしまうケースも多い。個人レベルの生産性向上を超えて、企業競争力につなげるには、直面する課題はかなり多い」(田村氏)
IBMでは2014年から「IBM Watson」を事業化しており、今年(2023年)7月からは生成AIプラットフォーム「IBM watsonx(ワトソンエックス)」の一般提供も開始している。
すでに銀行の社内申請業務やコールセンターの応答、製造業の技術文書作成などでの活用例があるほか、IBM社内でも人事部門などを中心に利用を進めているという。またIBMでは全世界29万人の社員が参加する「watsonxチャレンジ」を開催しており、7つのユースケースを設定して、生成AIを学ぶ活動も行っている。今年6月には、日本IBM社内に生成AIの専門組織「Center of Excellence(CoE)for Generative AI」を設置。生成AIの企業導入における課題解決を支援している。
「日本IBMが生成AIの導入を支援している金融業や製造業では、これまでのAI活用の経験が生きたり、他のITシステムとの連携が重要な鍵になることを理解したりといった動きが見られる。また生成AIの導入では、組織、人材、プロセスなどの課題を解決することが大切である。日本IBMでは、マルチ基盤モデルと信頼できるAIの提供によって、生成AIが活用される社会の実現を支援していく」(田村氏)