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グローバル3000人のCDO調査、データ活用における日本企業の強み/弱みも分析

“先駆的CDO(データ最高責任者)”は何をもたらすか? IBMが調査結果発表

2023年07月31日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは2023年7月27日、CDO(データ最高責任者)を対象にしたグローバルおよび日本の調査結果「グローバル経営層スタディ:CDOスタディ(日本語版)」を発表した。「データセキュリティに責任を負う」CDOはグローバルの52%に対して日本は26%と大きな差が出たほか、「組織のデータは安全に保護されている」と考えるCDOもグローバルの61%に対して日本は56%だった。

 こうした調査結果について、日本IBM IBMコンサルティング事業本部の松瀬圭介氏は「日本のCDOは、企業の成長や経営計画に沿った形でデータを活用かることには重点を置いているが、セキュリティやデータ保護、プライバシーといった守りの部分は重視していないことが浮き彫りになった」と指摘した。

 さらに、いくつかの取り組みを実施しているデータ価値創造型のCDOを“先駆的なCDO”と定義。その特徴や、平均的CDOとのビジネス成果の違いなども分析している。

「IBM Chief Data Officer Study」調査結果の概要

日本IBM IBMコンサルティング事業本部 データ&テクノロジー事業部長 シニア・パートナーの松瀬圭介氏、同事業部 アソシエイト・パートナーの鈴木至氏

“先駆的な”データ価値創造型CDOの特徴は4つ

 同調査は、IBMのソートリーダーシップシンクタンクである「IBM Institute for Business Value(IBV)」が、日本を含む世界30か国以上、29業種、3000人のCDOを対象に、データドリブンな経営について聞いたもの。日本では180人のCDOが調査対象になった。IBMでは、2003年から6万人以上の上級管理職を対象に「グローバル経営層プログラム」調査を実施し、洞察を蓄積してきたるが、CDOを対象にした調査は今回が初めてだという。

 松瀬氏はまず、CDOの定義として「データの品質やガバナンス、戦略、管理に責任を負う経営幹部を指す」としながらも、「役職が登場して20年を経過したが、明確な定義がないのが実態」と指摘。さらに、今回の調査では「企業が目指す方向性やビジネスモデルによって、データを価値創造に導く道はひとつではないこともわかった」と語った。

 IBMでは今回の調査結果から、CDOの中でもとくに“先駆的な”データ価値創造型CDOが存在することを指摘している。

 IBMでは“先駆的な”データ価値創造型CDOの特徴として、「データから価値創造に至る道筋を明確化する」「データ投資によってビジネスの成長ペースを加速する」「データをビジネスモデルのイノベーションの中核として位置付ける」「エコシステムパートナーとの連携を最大化する」の4点を挙げている。グローバルではCDO全体の8%が、日本では11%がデータ価値創造型CDOに該当するという。

 「先駆的なCDOの取り組みを考察しなおし、先進事例として手掛かりにすることは可能だ。日本IBMでは、世界の知見を集めて、日本のCDOに対する情報提供やコンサルティングを通じて、企業成長に貢献したい」(松瀬氏)

今回の調査でわかった“先駆的な”データ価値創造型CDOの特徴と、他の平均的(日本/グローバル)CDOとの差

 データ価値創造型CDOと、グローバルおよび日本の平均的CDOとの差は大きい。たとえば「データROIの向上にCDOが責任を持っている」ケースは、データ価値創造型CDOでは71%に及ぶのに対し、グローバル平均では49%、日本平均は33%だった。さらに松瀬氏は、CDOという役職の捉え方も違うと語る。

 「役立つデータを見極めたり、データを管理したりすることがCDOの役割や目的ではなく、データを見極めができるリテラシーを持つ人材やケーパビリティを備えることがCDOのミッションである。データを見極めるのは現場の人たちの役割。先駆的(データ価値創造型)CDOはそう捉えている」(松瀬氏)

 なお今回の調査では、日本のCDOが考える「データ管理上の喫緊の課題」として、「データの信頼性欠如」(41%)、「当局による法規制」(40%)、「データのサイロ化やデータの未統合」(38%)、「経営層の支援が不十分」(37%)といった項目に集中していることもわかっている。

「組織が抱える最も差し迫ったデータ管理上の課題」(グローバル/日本の平均、データ価値創造型CDOの回答)

データ活用がビジネス価値創造、DX、イノベーションに結びついているか

 ひとつめの「データから価値創造に至る道筋を明確化する」を実践しているCDOを、IBMでは「データバリュークリエイター」と呼び、データを活用して企業の成長に向けたロードマップを示す役割を担っていると説明する。

 日本IBM IBMコンサルティング事業本部の鈴木至氏は、「先駆的なCDOは、データから最大の価値を生み出すには経営層から現場の社員に至るまで、企業全体のデータリテラシーが不可欠だと認識している」と述べた。実際に、先駆的なCDOでは「研修を拡充して人材を育成している」ケースが85%に達し、「労働力分析の導入」も83%、「従業員のリスキリング」も77%が取り組んでいるという。

 ちなみに、日本のCDOは社外にデータ人材を求める傾向が強い。調査では、日本のCDOの76%が「社外の有能な人材を獲得するための活動を行っている」としている。これは先駆的CDOの70%、世界平均の51%を超える結果だ。

 昨今ではCDOの人気が平均2年以下と短く、流動性が高まっている点に注目が集まっている。これについては「CDOの役割には『土台を作る第一段階』と『戦略に落としていく第二段階』がある。そのためひとつの会社で腰を据えて取り組むCDOだけでなく、データ活用の土台を作り上げたら次の会社に移り、そこでまた土台を作るといったCDOもいる。CDOがどこまで責務を果たすのかによって、任期は異なる」(鈴木氏)と指摘した。

先駆的なCDOが取り組む組織のデータリテラシー向上施策(青色が先駆的CDO、紫色が日本平均)

 また、データ価値を脅威から守るため、データ倫理や組織の透明性、サイバーセキュリティに重点を置いているのも先駆的なCDOの特徴だという。鈴木氏は「先駆的なCDOは、安心安全にデータを活用できる環境づくりに取り組んでいる。日本のCDOは、データ倫理や組織の透明性に関して施策を打っていく必要がある。生成AIを活用する上でも重要であり、キャッチアップしていかなくてはいけない項目だ」と指摘した。

データ価値を脅威から守るための取り組みにも注力している

 2つめの「データ投資によってビジネスの成長ペースを加速する」では、世の中の変動や嗜好の変化にあわせて経営を変えることができる、アジャリティなデータ活用を行っているCDOを“先駆的”と位置付ける。

 この特徴により、自社のデータ管理戦略をDXに明確に連携させている、意思決定の自動化にAIを利用しているなど、他の平均的CDOよりも有効にデータ活用できているという。調査では、「自社のデータ管理戦略をDXに連携させている」ケースが先駆的CDOでは60%と、日本のCDOの46%を大きく上回った。同様に、「意思決定の自動化にAIを活用している」先駆的CDOは64%に達するが、日本のCDOでは46%に留まっている。

 「政府機関、通信、金融の組織はAIへの投資に力を入れる傾向があり、AI活用がビジネス成長の原動力になるとの期待もある。こうした背景が、データ価値創造型CDOの優位性を高めている。これまではDXのD(デジタル)に注力する企業が多かったが、今後はAI技術を活用してX(変革)に挑戦していく、そのアクションが必要だ」(鈴木氏)

先駆的なデータ価値創造型CDOは、AIの有効活用も進んでいる

 3つめの「データをビジネスモデルのイノベーションの中核として位置づける」では、データへの投資を通じて新たな価値創出の源泉を追求し、イノベーションを促進している先駆的CDOが87%と高い割合に上ることがわかった(日本のCDO平均は61%)。

 「データ基盤やAIに多くの投資をしている日本のCDOは多いが、それがイノベーションや新たなビジネスモデルの創出に結びついていないのが実態だ。一方で先駆的なCDOは、AIや機械学習、高度な予測分析、ハイブリッドクラウド、IoT、プロセスマイニング、データファブリックアーキテクチャーといった新たなテクノロジーを最大限に活用しており、ビジネスプロセスに連携させている」(鈴木氏)

 ちなみに、日本企業においてデータ/AI投資が成果につながっていない点については、「データのサイロ化」や「単にデータを集めただけのデータレイク(=“データの沼地”)」が原因であり、分散型アーキテクチャやデータファブリックといった技術を組み合わせて「データを開放する」動きが必要だとコメントしている。

データをビジネスイノベーションに結びつけるため、革新的なテクノロジーを最大限活用している

 4つめの「エコシステムパートナーとの連携を最大化する」は、同業他社や他業態の企業が持つデータも取り込んで活用できる、幅広いエコシステムの実現を指している。

 先駆的なCDOは、複雑なエコシステムのなかでも安心安全なデータ連携を模索し、パートナーシップの実効性を阻害する要因も分析しているほか、顧客企業とその保有データに対して積極的に関わる傾向を強めているという。

 調査では、エコシステムパートナーとのデータ連携上の課題として「データプライバシーと倫理へのアプローチ」を挙げるCDOが57%に達した。そのほかにも「基準の共通化」が53%、「透明性と可視性」が52%、「データ定義の不統一」が49%などとなっている。

 「エコシステムパートナーとの連携において大切なのは、自社のデータ基準や規定を確実に守ること。足元を固めたうえで、パートナーが保有するデータと積極的に関わらなくてはいけない。この部分は先駆的CDOにとっても大きなチャレンジだが、多くの先駆的CDOは現状に甘んじていない」「日本のCDOは、自社のデータプライバシーや倫理ポリシーの情報を積極的に企業に伝えることができている。成長するポテンシャルがあると捉えることができる」(鈴木氏)

パートナー他社とのデータ連携に取り組むCDOは増える傾向にある

日本のCDOがこれから取り組むべき課題、AI活用アプローチも紹介

 鈴木氏は、日本のCDOが取り組むべき課題について「課題」「テクノロジー」「人材」という3つの側面から説明した。

 「戦略」では、ユーザーがデータリテラシーを高めつつ、データを活用したビジネス戦略を立案すること、「テクノロジー」では、データファブリックをはじめとしたデータ活用環境を整備することが大切だという。「人材」については、データを活用するうえでのデータリテラシーとデータサイエンスが求められるほか、「ビジネスとデータを結びつける人材」の位置付けも重要だと語った。そのほか、サイロを打破するデータ利活用環境の提供、ビジネス変革に応じたデータ管理/運用を行うためのガバナンス整備の必要性を強調した。

 加えて、生成AIが広がるなかで、データ活用の推進と同時にリスクコントロールが重要になっていることにも触れ、プロセスやルールの定義、ガバナンス、AI Center of Excellence(AI CoE)のアプローチが必要であることことも示した。

日本のCDOに対する提言

AI活用促進で推奨されるアプローチも示している

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