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業務を変えるkintoneユーザー事例 第187回

導入がゴールではない! 経験してわかった現場との継続的な対話の重要性

関西電力の早く・安く・高品質なkintone業務改革 次は「総伝道師化計画」へ

2023年07月13日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 「kintone hive 2023 osaka」3組目は、関西電力ソリューション本部システムグループの藤井伸弥氏、中野一高氏の2名が登壇。「kintoneで、『はやく・安く・高品質』な業務改革―システムと業務のスキマ、埋めて魅せます―」と題して、同社のkintoneの導入ストーリーを披露した。講演は、中野氏がレポーター風に藤井氏に質問し、藤井氏がそれに答えていく形で進行した。

関西電力ソリューション本部システムグループ 藤井伸弥氏

関西電力ソリューション本部システムグループ 中野一高氏

繁忙期のシステム更新でコールセンターから悲鳴

 藤井氏と中野氏が所属するソリューション本部は、関西電力の主力事業である電気やガスを顧客に提供することをミッションとしている。この事業の情報システムを管理するのがシステムグループである。

 最初に藤井氏は、関西電力がなぜkintoneを導入したのか、その経緯を説明した。

 話は2018年4月に遡る。この年、同社は長年使ってきた自社開発の基幹システムを刷新し、新たにパッケージシステムを導入した。その結果、ユーザーインターフェイスが大きく変わったことで、顧客からの電話受付をしているコンタクトセンターの業務に大きな影響が出てしまった。

 同社のコンタクトセンターは、毎年3月~4月の引っ越しシーズンにもっとも忙しい時期を迎える。そのタイミングで新しいシステムが導入されため、慣れない画面の操作に手間取り、受付処理に時間がかかるようになってしまった。その結果、顧客を電話口で長時間待たせることになり、大問題となった。

自社開発のシステムでコンタクトセンターが大混乱に

 現場では苦労しながら繁忙期をなんとか乗り切ったものの、システムグループには、「次の繁忙期(2019年の3月~4月)までに、受付システムを改善してほしい」という切実な要望が寄せられた。

 早速、システムグループでは対策に乗り出す。しかし、基幹システムを修正するとなると、多額の費用と人手が必要である。なんとか基幹システムには手を加えずに、コンタクトセンターのフロント業務を改善する方法はないか。検討の過程で見つけたのが、ノーコード/ローコード開発ツールであるkintoneだった。

 だが、当初社内には、kintoneの導入について反対意見も多かったという。「システム部内からは『ノーコード開発はスキルが属人化してしまい、開発者が異動したらその後の保守運用ができなくなるのではないか』という声が挙がった」と藤井氏は振り返る。

 システムグループは、その懸念を払拭するため、兼任メンバーであるが「デジタルお助け隊」というチームを発足し、組織的にスキル継承や保守運用を行なう方針を立てた。

 こうした運用方法も含めて、藤井氏と中野氏は、上司である部長にkintoneの導入をかけあった。

「これからのシステム開発は、基幹システムと、kintoneのような身軽なクラウドサービスを組み合わせることで、基幹システムでは対応できないような隙間もシステム化することができる。また、kintoneを使うことで、これまで基幹システムでは対応できなかった開発も『早く・安く・高品質』に提供できると説得した」(藤井氏)

 部長はこの提案を受け入れ、導入を快諾。システムグループはkintoneを手に入れることに成功した。

kintoneと基幹システムをRPAで接続

 新設したデジタルお助け隊は、早速、コンタクトセンターに業務の問題をヒアリングする。すると、受付者がシステムに求めることと、基幹システムの仕様にミスマッチがあることがわかった。受付者は、入力項目を簡単にしてほしいが、基幹システムの入力項目は、受付業務のことだけを反映するわけにはいかず、複雑だった。

 そこで、受付者の業務に最適化した専用アプリをkintoneで開発した。そして、受付者がkintoneのアプリに入力したデータは、RPAを経由して基幹システムに入力される仕組みを作った。これにより、受付者が基幹システムを触らなくても受付業務が完了できるようにした。

受付者が基幹システムを触らなくても業務を完了できる仕組みを構築

 この組み合わせであれば、他の連携システムを使う必要がなく、柔軟なシステム開発ができる。「kintoneで項目の制御ができるし、CSVに項目を選んで出力することもできる。kintoneとRPAの組み合わせは相性がいい」と藤井氏は語る。

 実際に作った受付アプリの操作画面は、非常にシンプルだ。項目の選択肢を変えると、対応する次の項目が出てくる画面設計にしたことで、不要な項目を表示しないためすっきりしている。扱う項目の数も100から30へと大きく削減できた。入力内容に不備があり、エラーが出たときも、エラーの内容に応じてメッセージを出すことで、修正すべき箇所がすぐにわかるようにした。

 こうした工夫を施したアプリの導入で、コンタクトセンターの受付処理の時間は15分から5分へ、3分の1に削減することに成功した。

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