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第13回衛星放送協会オリジナル番組アワード 番組部門ドキュメンタリー最優秀賞「発掘ロストワールド 恐竜の聖地ゴビ砂漠」

家族で楽しみながら知的好奇心をくすぐるドキュメンタリーを超えたエンターテインメント作品

2023年06月30日 17時30分更新

文● 原田健

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 6月12日に「第13回衛星放送協会オリジナル番組アワード」の最優秀賞が発表され、番組部門ドキュメンタリーでは「発掘ロストワールド 恐竜の聖地ゴビ砂漠」(NHK BS4K/BSプレミアム)が受賞した。

 同番組は、世界的な恐竜学者であり“ハヤブサの目”の異名を持つ化石ハンター、北海道大学・小林快次教授が、恐竜の聖地・ゴビ砂漠の秘境で発掘調査に勤しむ姿に密着したもの。2022年9月、小林教授はモンゴル科学アカデミーと共同で大規模な調査チームを率い、これまでほとんど手付かずだったゴビ砂漠の“空白地帯”で発掘に挑み、歴史的な発見をする姿を追う。

 「ダイナソー小林」と呼ばれ子供たちにも大人気の恐竜学者・小林教授は、25年にわたって世界で発掘調査を行い、従来の定説を覆す発見を次々と成し遂げてきた第一人者。そんな教授の3年ぶりとなる発掘調査に同行したドキュメンタリーなのだが、よくある“ザ・ドキュメンタリー”のように社会への問いかけをはらんだ強いメッセージ性のあるお堅いものとは違い、同番組は家族で楽しみながら知的好奇心をくすぐる内容になっているのが特徴。

 「なぜ恐竜は大繁栄したのか?」という大きな謎の解明のためには、大繁栄期の前の「研究の空白期」にどのような恐竜が生きていて、その後の繁栄にどうつながったのかを知る必要があり、発掘場所は「研究の空白期」にあたる9000万年前から8000万年前の地層が露出している数少ない場所であるということ、発掘調査には、探索する「プロスペクト」、掘り出す「発掘」、持ち帰るための準備をする「ジャケット」の3つの段階があること、化石研究について、発掘した化石からどのような情報が得られるかなど、チュートリアル的な要素も丁寧に盛り込むことで、「今はどんなことを目指して、どのような方法で、どのような期待感を持ちながら、どんなことに細心の注意を払って作業しているのか」を分かりやすく解説し、視聴者も調査チームの一員になったような気持ちにさせてくれる。それ故、教授が大発見するシーンでは、自分事のように興奮してしまう。

 また、門外漢でも興味を持って視聴できる親切な演出に加え、移動中の様子や車両のトラブル、食事シーン、寝床であるテントの中の様子などもしっかりと取り上げることで、調査だけでなく“調査する人”にもフォーカスしており、小林教授の研究に懸ける情熱を鮮明に映し出している。

 発掘調査のいろはを学びながら、歴史的大発見に興奮しつつ、情熱を燃やして研究に人生を捧げている小林教授の生きざまを感じることができるというさまざまな要素によって、家族で楽しみながら知的好奇心を満たすことができ、見た後に充実感を感じられるエンターテインメント作品に昇華している。教授の活動を通して垣間見える生きざま、情熱、信念を受け取ってほしい。

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