「HPE GreenLake for Block Storage/for File Storage」はエンドユーザーの声にどう応えているか
“データ中心”の新しいストレージ体験を目指すHPE GreenLake新製品
2023年07月03日 08時00分更新
「パブリッククラウドの利用体験によって、アプリケーション開発者やデータ管理者の“ストレージに対する期待値”が変わってきています。『HPE GreenLake for Block Storage/for File Storage』提供の背景には、そうした変化があります」
日本ヒューレット・パッカード(HPE)が2023年5月に発表した「HPE GreenLake for Block Storage」「同 for File Storage」は、“as-a-Serviceカンパニー”としてHPEが拡大するGreenLakeポートフォリオに追加されたオンプレミスストレージ製品だ。「HPE Primera」や「HPE 3PAR」などの従来製品が備える高度なストレージ機能セットや「100%のデータ可用性保証」を継承しつつ、データの爆発的な増大と多様なユースケースに対応する柔軟なスケーラビリティ、“as-a-Service”としてのアジャイルかつ手軽なユーザー体験を実現する。
なぜこうした新たなコンセプトの製品が必要とされているのか、また将来的にHPE GreenLakeやストレージはどこを目指すのか。今回は、HPEでストレージas-a-Serviceのプロダクト管理を担うクリス・シン氏に話を聞いた。
パブリッククラウド利用体験が変えた「エンドユーザーの期待値」
まずは、なぜGreenLake for Block Storage/for File Storageのようなコンセプトの製品が必要だったのかを尋ねた。シン氏は、現在のエンタープライズストレージ市場全体の傾向として、「『(ハードウェア強化で)○○%高速化した』といったことよりも、『ソフトウェア機能の強化』や『ユーザー体験向上』への注目度が高まっています」と説明する。
その背景にあるのが、冒頭コメントにもある「パブリッククラウドの利用体験」だ。現在のアプリケーション開発者やデータ管理者(エンドユーザー)は、パブリッククラウドが提供する優れたユーザー体験を経験しており、同様の体験をオンプレミスのストレージ環境にも求めるようになっている。
「パブリッククラウド以前は、ストレージリソースが必要ならばまずチケットを発行してIT部門に依頼し、準備ができるまで数週間待たなければなりませんでした。しかしパブリッククラウドでは、セルフプロビジョニングで必要なリソースを用意し、すぐに利用をスタートできます」
さらにIT管理者側でも、エンタープライズストレージが備える高いパフォーマンスや可用性、管理性は引き続き必要とする一方で、スケーラビリティやアジリティ、シンプルさといったパブリッククラウドのメリットも取り入れたいと感じている。
そうしたニーズに応えるべくHPEが投入したのが、GreenLake for Block Storage/for File Storageというわけだ。
「われわれはこのストレージで、パブリッククラウドと同等のユーザー体験を提供したいと考えています。しかも、パブリッククラウドよりもコントロールが効き、(容量単価も)より安価なかたちで提供していきます」
アーキテクチャを刷新し「データ中心のユーザー体験」目指す
GreenLake for Block Storage/for File Storageのアーキテクチャは、共通のハードウェアモジュールである「HPE Alletra Storage MP」上にストレージOS(ブロックストレージ用、またはファイルストレージ用)を搭載し、コントロールプレーンはハイブリッドクラウド環境の一元管理を行うクラウドサービス「HPE Data Services Cloud Console(DSCC)」で提供する形をとっている。
Alletra Storage MPの特徴は、高い柔軟性とスケーラビリティだ。コントローラーノードとJBOF(Just a Bunch of Flash)ノードが完全に独立しており、必要とする性能や容量に合わせてノード数を決め、柔軟に構成できる。スタンドアロン構成のシステム(最小構成:ブロックストレージは2U、ファイルストレージは6U)から、複数のコントローラーノード間を100G NVMeスイッチで接続した大規模マルチノードシステムまで、段階的なスケールアウトが可能だ。JBOFと分離しているため、将来的なコントローラーノードのグレードアップも容易である。
「同じハードウェアモジュールを使って、ブロックストレージでもファイルストレージでも、またハイパフォーマンスでも大容量でも、小規模でも大規模でも柔軟に構成できて、ユーザーのニーズを満たせる。さらに、サプライチェーンの停滞で調達しづらくなるリスクも軽減されるので、チャネルパートナーやSIパートナーにもメリットが大きいでしょう」
なお、ファイルストレージのOSにはVAST Data社のソフトウェアをOEM採用している。VAST DataのOSを採用した理由は、Alletra Storage MPが実現する高いスケーラビリティに追随できる、パフォーマンス劣化のない高いスケーラビリティを持ったファイルストレージOSだからだとシン氏は説明する。
一方で、コントロールプレーンを提供するDSCCでは、さまざまなユースケースと利用者の役割に合わせたサービス群を提供する。たとえばアプリケーション開発者がブロックボリュームを使いたいと思えば、DSCCの「Block Storage」コンソールを開けばセルフプロビジョニングができる。またITインフラ管理者向けには「HPE Data Ops Manager」コンソールが用意されており、全体の使用容量やパフォーマンスの変動を確認してストレージシステムの拡張計画に役立てられる。
「たとえばブロックボリュームをセルフプロビジョニングする際に、ユーザーは『どのノードにデータを保存するか』といったことを意識する必要がありません。ユーザーの指定したSLAや(データベース、VMなどの)ワークロードの種類に応じて、AIベースの『インテントベースプロビジョニング』機能が最適なデータ配置や設定を行ってくれます」
さらに、DSCCを通じてデータ保護サービス(クラウドバックアップ、クラウドDR)も統合されている。DSCCはハイブリッドクラウド環境に対応しており、AWSなどパブリッククラウドのデータも含めた一元的なバックアップ/DRが可能だ。シン氏は、DSCCで提供するデータサービスは今後もさらに追加していく方針だと語った。
「DSCCは、データの『ストア(保存)』『マネージ(管理)』『プロテクト(保護)』にかかわるサービスをすべて提供し、ハイブリッド環境におけるユーザー体験をひとつにつなぐ“糊(のり)”のような役割を果たします。これにより、これまでインフラ中心だったユーザー体験を“データ中心のユーザー体験”に変えることを目指しています」
GreenLakeで描く将来像は「ハイブリッドクラウド全体のプラットフォーム」
新しいコンセプトのもとでGreenLake for Block Storage/for File Storageをリリースし、ストレージの“as-a-Service”化を推し進めたHPEだが、これからの将来像をどのように見ているのだろうか。
シン氏は、HPEがGreenLakeで描く将来像は「ストレージ領域に限ったものではありません」と強調する。そのうえで、コンピュートやネットワーク、エッジなども含めた、ハイブリッドクラウド環境全体を管理できるプラットフォームを構築していくことが重要だと述べた。
「ハイブリッド(クラウド)化の動きは今後も続くと考えています。HPE CEOのアントニオ(・ネリ氏)はいつも、『われわれはパブリッククラウドと競合するつもりはない。GreenLakeを通じて共存していく』と語っていますが、その『共存』に必要なのがプラットフォームです。オンプレミスシステムともパブリッククラウドともAPI経由で連携し、ユーザーがそこにアクセスすればハイブリッドクラウド全体を管理できる、そんなプラットフォームです」
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HPEではこれまで数年をかけて、ITインフラのAIOps(HPE Infosight)、フルクラウド運用のストレージ(Alletra)/クラウド管理コンソール(DSCC)、Backup as-a-Service、DR as-a-Serviceなど、ハイブリッドクラウド時代に適合するストレージとデータサービスを着実に準備してきた。
今回のGreenLake for Block Storage/for File Storageは、刷新されたアーキテクチャの上にこうした進化要素がすべて統合され、まったく新しいユーザー体験を目指す製品となる。エンタープライズストレージ市場で長い経験を持つHPEが打ち出した“革新的な一手”は、市場にどんな波紋を投げかけるだろうか。注目したい。
(提供:日本ヒューレット・パッカード)